ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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奈良歩き「古都点景」
奈良といえば、鹿と大仏さんが有名だろうか。
なんどか小中学校の遠足で来たことがある。
大学生の頃、観光バスガイドのバイトでも来た。
確か、KN女子高校だったと思う。
(その話は、また別の機会にでも)

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この鹿の糞のにおいが、ああ奈良だと思う。
小学校の校舎脇にあったうさぎ小屋と同じにおいだ。
草食動物だから、そんなに臭くはない。
(というのか、ぼくは気にはならない)

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二月堂からは奈良市内が見渡せる。
ここからの夕陽が美しいらしいがまだ時間的に早い。
観光客のなかには、外国人がけっこう多い。
もちろん、見ただけでは判別できない韓国や台湾の人も多い。
話す言葉やファッションで分かる。
なぜか日本人とちがって派手である。
奈良の都に溶けこんでいないのである。

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ひさしぶりの東大寺はさすがに人が多い。
一箇所柱が四角くくりぬかれているところがある。
この大きさが大仏さんの鼻の穴と同じだという。
ここをくぐり抜けると「無病息災」の御利益があると聞いた。
ずらりと長蛇の列である。
あきらめてその現場に行ってみると、これは無理だ。
子どもか、すらりとした女性でないとくぐれないだろう。
記憶というのは不思議なものである。
くぐったのは小学生の頃だったから、大きな穴だと思ったのだ。
こういった記憶違いはいろんなことに及んでいるだろう。

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晩秋の陽は早くも西に傾きかけている。
帰りの近鉄電車は満員だった。

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奈良歩き「紅葉・黄葉」
興福寺から奈良公園を抜けて、二月堂へと歩く。

今年は急に寒くなったので、紅葉もいまひとつだ。
いちょうの樹も黄色くなるより、黄緑色を呈している。
それでも、ところどころにあざやかな色がひろがっている。

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ここからは東大寺の甍が見える。
観光客は思ったよりは多いがたいしたことはない。
これが京都ならどれだけの混雑であることか、と思う。

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人出の多さと景観の美しさは比例するものではない。
だがなかには、人波で混雑していないと満足できない人たちがいる。
彼らの考えには、そういう相関関係があるようなのだ。
高級ブランド品と価格の関係もそれに近いものがある。

ブランドイメージをあげるためにはどうするのか。
極論すれば、価格を上げればいいのである。
(ただし、そのための広告費用等を惜しんではならない)
品質をよりよいものにするなど、莫迦な(つまり真面目な)やつの考えだ。
そんなところをを評価して客が満足するのではない。

その端的なもののひとつに化粧品がある。
高級品と安価な普及品を比べてみればいい。
ラベルが剥がれていれば、どちらがどちらと判別できない。
香り、成分など、これといいた差異はほとんどないに等しい。
そんなことは、だれもが知っている。

では、消費者(これも曖昧だが)はなにを求めているのか。
高級なものを消費しているという気分である。
そのためには、高級なブランドが必要だ。
高級なブランドにするためには価格を高くしないといけないのだ。
一概に暴利とはいえない、嫌なら買わなければいいのだから。
(品質とは関係のないところで膨大な経費がかかる)
(逆に、それゆえ成り立つ産業もあるわけだ)

なぜか、ひどく横道に逸れてしまった。
旅においては、よくあることである。

奈良歩き「想い出」
そういえば、昔Kさんたちと奈良で飲んだことがある。
彼女はそのころ、西ノ京に住んでいた。
新薬師寺の五重塔の再興で、壁画の修復をやっていたんだったかな。
そこらへんはうろ覚えなのである。

そのとき飲んだ店はあるのかな。
おぼろな記憶を頼りに路地を捜してみる。

あった、あった。
確か場所はここではなかったようだが…。
この名前はよく憶えている。

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ここは奈良でも有名な店らしい。
そのときのことを、思いだした。

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したたかに酔っていた。
いつのまにか眠っていたようだ。
気がつくと、どうも車に乗っているようだった。
眼を覚まして隣を見た。
知らない男が車を運転をしていた。
ぼくは助手席に座っている。
どういうことなんだろう、とっさに考えた。
拉致か。

後を向くとKさんたちがいた。
すこし安心した。
で小さな声で聞いた。

「この人、誰っ?」
Kさんはゆっくりと言った。
「あのねえ、タクシーの運転手さん」
「……」

まだまだ未熟なぼくだった。

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奈良歩き「利き酒」
歩きすすめるうちに、一軒の酒屋さんに行き着いた。
利き酒というか試飲(有料、一杯百円也)できるという。
ついつい、店に入り込みみんなで味わうことにした。

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まずは、牛乳で造るという健康美人酒「乳華」。
これはまろやかで女性好みだ。
なんといっても、その謳い文句に引き寄せられる。
女性はこの手の言葉にことのほか弱い。
だが、美人酒とは、美人が飲むのか、飲むと美人になるのか不分明。
日本語ってどちらともとれるように、わざとこういう名付けをすることが多い。

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続いて「段違い辛口」なる酒。
まあ、ぼくがちいさいころはこの程度が普通だった。
ことさらに辛口などということはなかったのだ。
それが時代をへて、女性に好まれる酒をということで軟弱になった。
というか、辛口は敬遠されることになったのである。
(酒造会社が、勝手にそう思い込んだふしもある)

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しかし、日本ではよくあることだが、これが裏目となる。
男性の酒離れを促すことになった。
(焼酎ブームはその裏返しの意味もあるのでは…)

最後に、ここの酒屋さんの造っている「阿吽」。
うーん、すっきりしているけどこのへんは好みの問題か。
飲むときの状態にもよるんですよね。
例えば、鍋で飲むか、会席料理か、ふつうに晩酌か…。
日本酒の場合、肴との関係抜きには言えないですね。

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ということで、午前中からいい気分(酔ってませんよ)。
だが、これから一日「乳華」を提げて歩く羽目になってしまった。

奈良歩き「庚申さん」
東京からYちゃん(正確には埼玉県在住)がやってくるという。
十二月の蟹ツアーも海外出張(ブラジルだとか)で参加できなくなった。
それなら、この休みに出かけてくるよと話が決まった。
では、奈良を歩いてみようか、ということになった。

近鉄の奈良駅に集合してランチまでにひと歩きだ。

奈良町界隈をぶらりぶらり散策する。
家の軒先に赤いぬいぐるみがぶら下がっている。

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これは、「庚申(こうしん)さん」といってお使いの申を型どったお守り。
魔除けを意味し、家の中に災難が入ってこないようにという意味があるらしい。
災いを人の代わりに受けてくれることから「身代り申」とよばれている。
また、背中に願い事を書いてつるすと、願いが叶うといわれ「願い申」ともいう。

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そういえば、ぼくがちいさい頃に我家にも転がっていたような記憶がある。
奈良だけではなく、関西一円にその信仰がひろまっていたのかもしれない。

「庚申さん」は中国の道教の教えであり、
江戸時代に民間信仰として庶民にひろがった、という。
言い伝えによれば、人の体の中に三尸(さんし)の虫がいる。
庚申の日の夜に人が寝ているあいだに体から抜けだす。
そして、天帝にその人の悪事を告げにいくという。
その報告によりその人の寿命が決まる。
そこで、人々は六十日に一度回ってくる庚申の日は寝ずに「庚申さん」を供養した。
なかなか功利的で関西らしい(?)ではないですか。

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八幡浜紀行⑥
最後にHちゃんが以前行ってよかったという美術館へ。
しまなみ海道の途中、大三島にある「ところミュージアム」。

インターチェンジで降りて、島の反対側まで走る。
瀬戸内海が見渡せて、気持ちのいい場所だ。

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作品より建物のデザインや立地がすばらしい。
海へと向かって下る外部階段を、風がわたってくる。
はるかな島影が濃い群青に映える。

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極端にデフォルメされた作品群がならぶ。

入口の扉は男女の横顔になっている。
開館すると左右に別れ、閉館時には見つめ合う(?)。

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見学者はぼくたちだけなのでゆっくりとできた。
備え付けの紅茶を入れて味わいつつ飲んだ。
(懐かしいインスタント紅茶だ、しかし甘すぎる)

思い思いにテラス周辺を散策する。
なんと、急に雲行きが怪しくなってきた。
あっというまに空は黒雲に覆われ、雨が降ってきた。

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「あんなに晴れていたのに…」
「やっぱり、ね」
「うーん、自然は不思議だ」
(と言うしかないのだ)

みんなはぼくを見て、ひとしきり笑った。
そんなひとときの雨も旅の想い出だ。

遠くの島々に夕陽が沈んでゆく。
ぼくたちはまたいつの日か八幡浜に帰ってくるだろう。

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八幡浜紀行⑤
一夜明ければ、今日もいい天気です。
(ぼくは雨男だとみなが言う、しかし今回はだいじょうぶのようだ)

別府へ帰るOくんをフェリー乗場に見送る。
八幡浜のお土産でもと市内の蒲鉾店に立ち寄る。
ここは有名なお店であるらしい。

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Kさんが元気で、ぼくも若かった頃のことだ。
当時の仕事の関係で八幡浜へは時々来ることがあった。
そんなときにはいつもKさんが言うのだ。

「お願い、蒲鉾買ってきてくれる」
「いいけど」
「○○の××の蒲鉾ね」
「わかったけど、こんなに高いの?」
「そうよ、でもおいしいの」
「ふーん」

それをKさんはお世話になった人に送るのだという。
故郷への思いもいっしょに届けたのだろう。
店構えは変わって、すっかりきれいになっている。

魚であれば、鮪や鯛よりも鰯が好きだ。
なぜって、うまいからである。
だから、鰯はあらゆる敵から狙われる。
練り物なら、じゃこ天がいいな。
都会ではなかなかうまいじゃこ天がない。

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家に帰ったら、これでいっぱいやろう。
Kさんのことなどもすこし思い出しながら…。
(と、酒飲みはもってまわったことをいうのである)

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八幡浜紀行④
秋の陽は早くも海のかなたへと落ちてゆく。
宿は前回と同じ民宿だが、新館は満員なのですこし離れた旧館へ。
今夜はぼくたちのグループだけとのこと、ということは貸切だ。

食事の時間になって食堂へおりていく。
特別料理の刺身がテーブルの上に鎮座まします。
鯛、ひらめ、あわび、さざえなどなど。

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これがじつに新鮮でうまい。
身がぷりぷりしていて実に歯ごたえがあるのだ。
しかし、命を頂いているということを忘れないように。
では、「いただきます」

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食事が済めば、ひとつ部屋に集合。
今夜の酒も提供はOくん。
(いつもいつも、ごちそうさまです)

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今回の旅ででた話題はというと、
Sさんがブログで書いていた、妻なり夫なりをなんと呼ぶのか。
(Hちゃんのように夫を姓にさん付けで、などということは例外だ)
(つまり、鈴木家の妻が夫を鈴木さんと呼ぶのだ)
(関西なら即座に、あんたも鈴木さんやろ、と突っ込まれる)

夫あるいは妻、というのはごく少数派。

女性の場合は、やっぱり夫、ダンナ(といっても梵語のダーナではない)。
つれあい(これは照れる)、宿六(落語か!)、
うちのおっさん(そうです、関西ではけっこう仲間内ではこう言うらしい)、
うちのひと(なんかしっとりした奥さんを想像)、などなど。

男の場合は、かみさん(刑事コロンボの影響?)、女房、奥さん、
おかあさん(子育て時代からの習慣が続いているのと、甘えたい?)。
(しかしときに、私はあんたの母じゃない、と切り返えされる)、
照れ隠しで、「うちのおばはんなあ…」などとも言います。

なかなかふだんは意識することのないことです。
最近は、恋人を相方などという若い人も多いようです。

こんなぼくたちの話、Kさんがいたらもっと盛り上がったのに…。
そんなこと思いつつ、いつしか眠ってしまっていた。

八幡浜紀行③
船室では効き過ぎる暖房のためよく眠れない。
そうこうするうち、いつのまにか高松に着いた。
夜の闇は人を不安にするというが、ぼくは落ち着いた気分になれる。
ヘッドライトが落とす光の先を見つめながら運転した。

高速道路上で夜が明け始めた。
新居浜のMくんの家に行く前に温泉で疲れをいやそう。
着いたところは「新居浜温泉パナス」。
インドネシア語で「暖かい・熱い(暑い)」という意味だとか。
バリ島風の雰囲気がなぜか懐かしい感じがする。

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M家には岡山組の三人もほどなくやってきた。
今回はおじさんの代わりに娘のNさんが参加した。
みんなの笑顔がなによりの供養(?)になるだろう。
さあ、Oくんがフェリーで来て待っているぞ、早く行かなくては。

昼はもちろん讃岐うどん、ぼっかけがうまい。
車の少ない高速道路を八幡浜に向かってひた走る。
すこしずつ近づいてきたが、なぜか好天気なのである。
陽もやわらかにふりそそいでいる。

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八幡浜のスーパーで別府から来たOくんと合流する。
これで今回のメンバー10名が集合した。

お寺でバケツと柄杓を借りて坂を登ってゆく。
ここからは海が望めていい場所だ。
手をあわせるとKさんの笑顔がよみがえる。
「また来たよ、ひさしぶり」
「よく来てくれたわね、いいところでしょ」
そう言ってる声がこころのなかにこだまする。

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お寺さんの奥さんに案内していただいて、本堂にお参りする。
みんなで正座しながら、すこしお話をうかがった。
順番に線香をあげながら見ると、Nさんの目が真っ赤だった。
「じゃあ、また来るから」
安置されている位牌に告げてこの地を離れた。

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読ッキング
読書しているとき、突然なにかが判然と理解できたと思う瞬間がある。
どうにも意味が不分明であったものが、なあんだそうかと分かるのである。
いま現在読んでいる本とは無関係に思えることに、ついて起こる。
神経繊維のなかを、一瞬インパルスが駆け抜けたかのようだ。
脳のなかでは、それこそ並列処理がおこなわれているのだろうか。
となると、多重人格というのもなにか分かるような(?)気がするのである。

「サルとすし職人」 フランス・ドゥ・ヴァール 原書房 ★★★
サルとすし職人の間に共通するものは、あるいは決定的にちがうものはあるのか。
日本にもやってきた氏が、敬意をこめてこの題をつけたとか…。
『フランスのある女性政治家は、権力をお菓子にたとえた。
大好きだけど、食べるのは自分のためにならないというわけだ』
人生にはこのような二律背反が多く存在している。
『スコットランド出身の哲学者で、経済学の父でもあるアダム・スミスは、
共感から得られるものはただひとつ、他人の幸福を見る喜びだと言った』
動物もみていると、人間に共感しているのではと思われます。
飼われている犬だって主人が辛そうな顔をしてると、哀しげに鳴きます。
『動物の文化について知ることが、私たちの自己認識にどう影響するのか。
動物の文化を認めたとき、それが最終的にどんな形で人間の文化の問題になるのか』
このあたり、キリスト教文化圏と仏教文化圏では考えがちがうようです。
人間の尊厳と、ボノボ(ピグミーチンパンジー)の尊厳は両立するのであろうか。
そして、豚や牛や羊、はたまたマウスやショウジョウバエの尊厳や如何。

「月下の狙撃者」 ウイリアム・K・クルーガー 文春文庫 ★★★
シークレット・サービスの特別捜査官ボー・トーセン。
片や、暗殺者デイヴィッド・ソロモン・モーゼズ(ナイトメア)。
この二人が、大統領夫人ケイト・ディクソンの暗殺をめぐって対決する。
ふたりとも貧しく、悲惨な少年時代をすごして成長してきた。
そのバックグラウンドが、お互いを認める心情の底に流れているのか。
その過程で、NOMan(国家活動管理局)とよばれる組織がうかびあがってくる。
この機関はいったいなにをするものなのだろうか。
とストーリーは展開してゆくのだが、人を信じるとは言うは易し、行なうは難し。
そして、合衆国大統領ともなるとそのプレッシャーは計りしれない。
追う者と追われる者の息をもつかせぬ戦いのなかにもロマンス(?)は生まれる。
またアメリカってそういう社会構造になっているのか、と知れるのである。

「虫魚の交わり」 奥本大三郎・荒俣宏 平凡社 ★★★
荒俣氏は、こんなことを言うのである。
『イエバエの群れの中にキンバエが混じってくると、
どこかに死者が出るという俗信がありますよね。
昔、満州(中国東北部)あたりの野戦病院で、
キンバエがたかりだした負傷者は死ぬって話が話があったんですよ。』
しかし、最近の死体は食品添加物の防腐剤が効いてて腐らないという。
キンバエにとってはとんだ災難(?)ということになるだろうか。
奥本氏は目のつけどころがなんとも言えずいいです。
『スコットランドというのは信州みたいなとこ…』
そういえばそんな気がする(行ったことないですが…)。
イングランドとちがって、きっとのどかで田舎なんでしょうね。
ということは、虫もたくさんいるのだろうか。

テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌

八幡浜紀行②
神戸を深夜のフェリーで静かに出発した。
OさんとNくん、それとTもいっしょだ。
フェリーに乗ると若い頃の旅を思い出す。

M島へは、笠岡から(福山からの便もあった)の連絡船で島へ行く。
だけど、朝一番の船にはどうしても間に合わない。
できるだけ早く島に行きたい、そんな気分だった。
時刻表を眺めていると気がついた。
四国まわりのルートもあるんだ。

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神戸の中突堤から深夜のフェリーが出ていた。
関西汽船と加藤汽船とふたつもある。
確か、後便の加藤汽船のほうがすこし安かった記憶がある。

途中、船は小豆島にも立ち寄った。
釣りが目的の客たちはここで降りた。
高松港に着く時刻は、まだ夜明け前だった。
当時、国鉄の始発までは時間があった。
冬の時期は、寒い待合室のベンチで膝をかかえてひたすら待った。

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列車に乗り込めば、暖房が効いていた。
ひと眠りと思うまもなく、高校生が乗り込んでくる。
田舎の学生の朝は早い。

この列車で知ったのだっただろうか。
駅に着いてドアの前で立っているが、いっこうに開かない。
「自分で開けなさい」と後からの声で気がついた。
暖房を逃さないための知恵なのであった。
開けたドアは、もちろん発車のときには自動的に閉まる。

Kさんもこんな列車で学校に通っただろうか。

八幡浜紀行①
旅というものは、旅立つ前にすでにことは始まっている。
未知の地であれ、幾度も訪れた場所であってもそうだ。
なにがしかの縁がそこにあれば、なおさらのことである。

M島のおじさんは遠くを見るようにして、よく言っていた。

「また八幡浜に行きたいのう」
「お墓参りに、行かにゃあいけん」
「Kさんにはずいぶんと世話になったからのう」


Kさんが亡くなったその年の秋にいっしょに訪れた。
仲間たちとの楽しい(?)旅になった。
それも、もう四年前のことだ。

行こう行こうといいながら、とうとう一緒に行けなかった。
ぼくはいつも後悔の影を踏みつつ歩いている。

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若い頃はよくひとり旅をした。
さみしいとか、人恋しいとか思うほどの感性もなかった。
ただ、知らないところを歩いてみたかった。

ふとしたことからM島に行き着いた。
そして、おばさんやおじさんと出会った。
あの頃のおばさんやおじさんの年齢を、ぼくたちはいつしか越えた。

時代はインターネットの普及で連絡を取り合うのもたやすくなっていた。
年賀状の交換だけから、メイルグループをやろうということになった。
そんななかにKさんもいた。
チャレンジ精神旺盛な彼女はパソコンもなんなくこなした。

そんな彼女も病魔には打ち克てなかった。
短い闘病生活だった。
(本人にとっては果てしなく長かったのかもしれないが)
いまは、八幡浜の海が見晴らせる墓地に眠っている。

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早朝のテニスコート
朝の空にテニスボールの音がこだましている。
パコーン、しばらくしてまたパコーン。
ラリーという感じではない。

神戸レガッタアンドアスレチッククラブのテニスコート。
横を会社へ向かいながら、茂みの間から見る。

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ひとりは大柄な黒人男性、40歳代ぐらいだろうか。
脇のかごから、蛍光色に光るボールを軽く打つ。

ネットの向こうには初老の白人男性、こちらも背が高い。
半ズボン姿でラケットを構える。
すこし横に動いて打ち返す。

二人の関係はいかに。

従僕と、ご主人。

コーチと生徒。

それとも、クラブ仲間。


ときおり、笑いあいながらボールを打ち合っている。

読歩
二宮尊徳は薪を背負って歩きながら本を読んだそうである。
(小学校のとき、校庭にその像がありました!)
貧しい生活のなかで、苦労しながらも勉学に励んだ。
その例えとして語られているが、案外そういうことではないかもしれない。
歩きながら本を読むと、体勢感覚が刺激され脳が活性化される。
(どういう意味なのか、小生にも不分明ではあるが)
というようなことを言い出す輩がまた現れるかも知れないなあ。
世のなかには、声に出したり、無意味に反復したり、といろいろありますから…。

「猫のつもりが虎」 丸谷才一 和田誠・絵 マガジンハウス ★★★
冬のアイス・クリームと題された一節。
『戦後二十年近く経って、アラスカにもやうやく豪華なレストランが出来るようになった。
このレストランで最も好評なのはアイス・クリームで、
言ふまでもなくこの寒冷の地には今までそんな食べものはなかったのだ。
それを真冬に食べる。すごい贅沢だといふのでお客が殺到する。
ところが、機械の故障か何かで、アイス・クリームが充分に固まってゐないことがある。
お客は給仕人を呼びつけて怒る。
すると、給仕人は恭しく会釈して、その皿を銀盆に載せ、入口近くに行って襟巻を巻き、
毛皮の外套を着て、帽子をかぶり、手袋をして、再び銀盆を手にし、外に出てゆく。
外は零下何十度の酷寒である。一瞬にしてアイス・クリームは固くなる。
お客は非常に満足してそれを食べる……といふ話だった』

なんだか楽しくなるような、そんな読後感が残る。

「手紙」 東野圭吾 文春文庫 ★★★
男二人の兄弟のつましい生活に、起こる悲劇的な事件。
弟の大学進学の資金をなんとかしようとして兄は強盗に入る。
そこで騒がれ、思わず老婆を殺害してしまう。
そこから、彼ら(おもに弟)の生活は冷たい世間との戦いの様相を帯びてくる。
まあ、よくあるといえば(もちろん、小説の主題として)、そんな話である。
人は知らず知らずのうちに他人を差別して生きている。
罪を犯したものは、その親族を含め、その対価を払わなければならない。
いくら厳しくとも、そのなかで生き抜いてゆかねばならない。
現実感が希薄な感じがして、いまいちついてゆけなかった。
キーワードとしてジョン・レノンの「イマジン」がつかわれているのだが、
どうも、オノ・ヨーコが浮かんできて白けてしまう、そんな感想である。
もう一冊ぐらい読んでみようか、とは思った。

「会社の真実」 佐高信・清水ちなみ 第三書館 ★★★
こちらは、ノンフィクションの話である。
日経ビジネスが出している本にある「良い会社」の条件十項目。
『《専門能力》プロとして通用する能力が開発できる
《評価内容の公開》社内での自分の実績が分かる
《サービス残業》時間外労働には対価が支払われる
《自発性尊重》社員の希望をかなえ納得ずくで仕事をさせる
《休日》大切な休みを社用でつぶさない
《社会活動》市民として積極的な参加を奨励する
《雇用契約》社員を人間として尊重する
《意思疎通》自由闊達な社内コミュニケーション
《企業目的》どんな会社を目ざすのかが明確
《上下関係》』上司への全人格的従属をせずに済む
これがふつうの会社ではなく、良い会社だというところが日本の哀しさか。
外国人記者になんて、とても理解できるはずがないだろうな。

テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌

猫との相性
旅の途中には、いろんな出会いの光景がある。

熊本でも食堂に入り、焼酎(甲)を二杯のむ。
(まったく、よく飲む奴だ、ほかにすることないのかしらん)
向いの席の老人と世間話などを少しする。

ふと窓の外をながめると、
降り続く小雨の中で、
低く飛ぶツバメが一羽翻えった。

瀬高にあるユースホステルには猫が二匹いた。

長い座卓の前で胡坐をかいて本を読んでいると、
どこからともなく、静かにチビがやってくる。
いきなり膝の上によじのぼってきた。
ぼくをちらっと見てから、気持ちよさそうにうずくまる。

どれくらい経っただろうか、
大きく伸びをしてどこへともなく去っていった。

入れ代わりに、ウェンズデイがやってきた。
これまたぼくの膝の上で、
だらりと体を投げ出すように横になる。
こちらは身動きも取れない。

どうやら、猫には好かれるたちのようだ。

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車中の老夫婦
それから、こんなことも記憶に残っています。

小雨模様の桜島から熊本へ向う車中でのことでした。
読書が一段落ついたところで、本を電車の窓辺に置き、
西鹿児島駅の売店で買ったカップ焼酎(乙)の蓋を開け、
外をながめながら飲んでいたときのことです。
(ちょうど、「ワンカップ大関」が出始めた頃ではなかったでしょうか)

隣のボックス席には山歩き姿の老夫婦らしき二人連れがいました。
なんだか引き込まれるような感じがしました。
切れぎれに聞えてくる会話には、品のよさそうな感じをうけました。
なんと楽しそうな、ほほえましい二人なんだろうかと思ったんです。

しばらくなにげない風を装いながら、ちらちらと見ていました。
こころの底では、祝福の言葉を呟いていました。

あれからもう三十年余の時が経過しました。
彼らの年齢に近づいているんです。

宮崎の食堂で
焼酎を飲み始めたのには、あるきっかけがありました。
それは九州を旅していたときのことです。

高千穂峡で泊まった翌日のことでした。
延岡を経て宮崎で乗換え待ちになりました。

昼時のことだったので、駅前にあった食堂にはいりました。
まあ、ありふれた大衆食堂で、天プラ定食を頼みました。

そのとき、横のテーブルにいたおじさんが焼酎と言ったんです。
すると、奥から一升瓶を持ったおねえさんが出てきました。
テーブルにガラスのコップを置くと、どくどくと注いでいきました。

おじさんは口から吸いつくようにして、ぐいっと一口飲みました。
それからおもむろに、ふーと一息ついたものでした。

首を回すと、壁のメニューに焼酎(甲)100円と書いてありました。
さっそくぼくも頼んで、コップになみなみと注いでもらいました。
おっかなびっくりでしたが、なんだか胃の腑にきゅーとくるようでした。

さきほど頼んでいた定食の天プラが肴でした。
もちろん、湯で割ったりしません。
そのまま、生(き)で飲みました。

旨かったです。
結局、二杯飲んでしまいました。

アハ!センテンス破り
茂木健一郎氏の「やわらか脳」という本からのご紹介。

「アハ!センテンス」とは、
「太陽が出たので家が小さくなった」など、
それ単独では意味を成さない文章がある。

ここで、「イヌイット(エスキモー)の家」という「ヒント」を出すと、
一気に「アハ!」と気付きが起こる。
というものです。

実際にワークショップでやってみてできた傑作がこれだそうです。
(現代詩を作っておられる北爪満喜さんの作品)

「息をとめているほど、商品がふえる」

「ヒント」は、「海女さん」。

これが自分で考えてみると、なかなかむずかしい。
どんだけ~、頭が凝り固まっているのかが分かるなあ。

読むべからず
見てはいけない、といわれると見たくなるのが人情である。
食べてはいけない、といわれるとなぜかおいしそうにも思えてくるから不思議だ。
その伝でいくと、見せたいときには見てはいけないと言う。
食べさせたいときには、ことさらに食べてはいけません、という作戦もある。
そんなふうに考えると、本当のところはどうなんだと、なかなかむずかしい。
ではあるのですが、ここに取り上げた本はまず読まないほうが無難でしょう。
(読まれてしまったらネタばれになってしまうかな?ハッハッハ)

「やわらか脳」 茂木健一郎 徳間書店 ★★★★
ウェブ上での日記に手をいれたものだという。
書く行為というのはどんな方法でもいいのではないだろうか。
心情がはっきりと出ているところなどあっておもしろいです。
『一人ひとりの人生など、ちっぽけな存在でしかないが、
その普遍性の中にしか、この世界の普遍は宿らない。』
ちっぽけな存在をどう感じるのか、それが個々人の問題だ。
『死とはモーツァルトがもう聴けなくなることである、
と言ったのはアインシュタインであった。
まだまだ人生は続く、と残り時間を曖昧にしているから、
無限のような気がしているだけのことだ。』
『内田百が、「お腹が空いている」のは一番好きな状態の一つである、
と書いているが、私の場合、「判らない」というのは一番好きな状態の一つである。』

趣味の問題といえばそうだが、ぼくはお酒を飲む前の状態が好きだな。
『八百屋なんて、野菜や果物を持ってきて売っているだけだろう、
と思うようなやつらが社会にのさばって欲しくない。』
そうなのです。八百屋さんと話すと、けっこうおもしろいこと聞けます。
専横的、独断的、経済効率至上主義な人って、どこにでもいるものである。

「分類という思想」 池田清彦 新潮選書 ★★★
『分類することは思想を構築することだ。』
『しかし、ほとんどの人はそうはおもっておらず、
分類はただの道具だと思っているか も知れない。』
そうですね、でどう分類するかには主義主張がなければならない。
たとえそれがファッションのことであっても、である。
『われわれの日常は、のべつまくなしの分類作業だといっても過言ではない。
目の前のものが食えるか食えないか。
この男は敵か味方かそれ以外か。
特定 の異性をセックスの対象と見做すべきか否か。
分類は道具でなく、生きること自体である。』
そこまで意識したことはないですが、そうかもしれない。
分類する、分けるとは概念を増やし思考を深化(あるいは混乱)する作業でしょう。
しかし、この本は(ぼくにとって)ちょっとむずかしいかな。

「口は災い」 リース・ボウエン 講談社文庫 ★★★★
時代は二十世紀初頭、場所はアイルランドの片田舎。
小作人の娘モリー・マーフィーはレイプしようとした地主の息子を
抵抗したはずみで彼は頭を打ち死んでしまう。
殺人犯となったモリーは、アイルランドのその地を飛び出す。
そして警察に追われていたところをかくまってくれたキャスリーンの子供たちを、
肺病の彼女に代わって夫の待つニューヨークに連れていくことになる。
移民船のなかでは、モリーの嘘を嗅ぎ付けて脅してきた男オマリーにつきまとわれる。
しかし船がエリー島に着いた夜、彼は首を切り裂かれて殺されてしまう。
ここで登場するのが若き警部ダニエル・サリヴァン、おまけにどうもハンサムのようだ。
モリーはこの困難な状況をものともせず、犯人探しに立ち向ってゆくのである。
読んでいると、思わずチャールズ・ディケンズの世界とまちがえそうだ。
アガサ賞最優秀長篇賞を受賞したそうだが、なかなか読ませるなあ。
ひさかたぶりに、一気に読みすすめました。
シリーズとなって続いているそうですから、楽しみではあります。
はたして、モリーとダニエルの仲はどうなっていくだろうか。

テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌

ボタンのかけちがい
サラリーマンの朝はあわただしい。
その妻は、さらに忙しいのかもしれない。

おまけに、ネクタイなんぞというものを締めなくてはならない。
(そう思うと、クールビズの期間はよかった)

ワイシャツを着て、さて締めるか。
まあ、長年の習慣で鏡なぞ見ないでもだいじょうぶだ。
きゅ~と首元まで締めると、なんだか胸元がおかしい。
ワイシャツがたくし上げられたようになっている。

どうしたんだろうと、鏡の前まで行って見る。
なんとワイシャツのボタンが段違いにかかっているではないか。
ネクタイを締めるまで気がつかなかった。
やれやれと、もういちどネクタイをはずしシャツのボタンをかけかえる。

こういうことって、人生にもよくあるのかなあ。
自分ではきちんとしてるつもり。
でも、はたから見れば、ちっとも様になっていない。



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島を旅するときが楽しいですね。
遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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