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着るものがない

2010-07-29 | 22:26

ここのところ暑さが続いたが、ひさかたぶりに雨が降っている。
こういうときには車で駅まで送ってくれることが暗黙の了解事項だ。
だが親しき仲(?)にも礼儀ありで、そんな今朝の会話である。

「送って行くの?」
「そうだな、よろしくお願いします」
クローゼットのなかを見ながら、
「でも、着るものがない…」
「……」(しばしの沈黙)

ここで、男がよく犯すまちがいを指摘しておこう。
「服なんていっぱい持ってるじゃないか」と言ってはならない。

これはまったくなにもわかっていないことを自ら白状するようなものである。
つまり、わたしは莫迦でことばをそのとおりにしか理解できない、と。

ちがうのである。
「着るものがない」とはそういうことではないのだ。

これは、つぎのように理解するのがまあ正しいか(なんだか自信がなくなってきた)。
「ここにいろんな服があるけど、いまこのシーンにぴったりの服がないわ」
あるいは、「いまの気分にぴったりの服がないのよね」ということか。

2903シジミチョウ

女性の服飾関係(バッグも含む)にかける熱情を甘くみてはいけない。
衣服は着るためのものという考えは彼女らには通用しない。
実用的な意味(暑さ寒さから身を守る)をこえて、自己表現のツールなのだ。
喜怒哀楽をあらわすためには、それにふさわしい身づくろいが是非とも必要なのだ。
ファッションはもはやパッションをも巻きこんだ身体の外延をなす。
(なんて書くと、またわけのわからないことをと言われそうである)

井上陽水はかつて「傘がない」と歌った。
現代の女性たちは「着る服がない」と今日もつぶやき続けるのだ。
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