ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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読書仁
暮れになって、大学ノートにつけている読書備忘録をひらいてみる。
今年はいろいろあって(毎年いろいろあるのだが)、読んだ冊数がすくない(約40%減)。
職場もかわり、読む環境(?)が変化したのについていけなかったという面もある。
不思議なことだが、時間がありあまれば読書ができるというものでもないようだ。
初春から夏にかけて、のんびりとした時間をすごしたような気が、いまではするのである。
のんびりしているのだから、なにも本を読むこともないではないか、と考えていたのだろうか。
思えば、とくに本が好きということもなかったし、どちらかというとぼんやりしていることが多かった。
ただぼんやりできる場所が家のなかにはなかったし、図書館はかっこうのところだったのだ。
静かにしていればいいだけだし、ひとりでいても不自然じゃないからなんの問題もなかった。
だが場(Field)の影響か、いつのまにか本を読むようになっていた。

5571講堂

「折りたく柴の記」 新井白石 中央公論新社 ★★★
江戸時代の書物なのだが、訳者はフランス文学の研究で有名な桑原武夫氏である。
新井白石は明暦三年というから西暦でいうと一六五七年、江戸で生まれている。
この年、正月には江戸明暦大火があり、林羅山が亡くなっている。
名は君美(きんみ)といい、通称は勘解由(かげゆ)、白石というのは号である。
江戸時代中期の大儒学者であり、有能な政治家というか官僚というべきかもしれない。
現代における官僚のイメージとはちがって、厳格、謹厳な方であったらしい。
有名な木下順庵門下でその推挙によって、甲府藩主徳川綱吉(後の六代将軍家宣)の侍講となった。
八代将軍吉宗のときその立場を追われ、その後著述に専念したということである。
桑原武夫氏が「日本の百科全書家」と評したほどの大学者でもあったんですね。
そんな白石のこれは自叙伝であるから、彼がどんなことを考えどうしてそういうことをしたのかがわかる。
人間というのはなかなか興味深い生きものである、ということでできそうだ。

「趣味は何ですか?」 高橋秀実 角川書店 ★★★★
あまり親しくない人や、初対面の人にむかって、「あなたは何のために生きているのですか?」
とたずねるのは唐突でもあるし、いささか失礼である。
もし、たずねるとするなら「どのような趣味をおもちですか?」というしかないだろう。
しかし、「趣味は何ですか?」という問いは「趣味がある」ということを前提としている。
じゃあ、「趣味」とはいったいなんだろう、と。
『大体、なぜ「趣味」を持たなければいけないのだろうか?』と筆者は疑問に思う。
この本はそんな疑問をいろんな趣味人にぶつけた以下の十二章からなっている。
官僚は「鉄道」と「坂本龍馬」がお好き、航空無線の傍受、男は「蕎麦」、女は「ヨガ」、
「八十八ヵ所巡り」から「切手」「消印」「手相」まで、「エコ」の醍醐味、楽しい「防災」、
「カメ」になった人々、「ファン」「ゲーム」「ラジコン」心理、ひとりで「ボウリング」、
「武士道」に「階段」、「ウオーキング」「茶道」「ガーデニング」の果て、「登山」の心得
なかなかにおもしろい、と思えるのではあるが。
『「趣味」とは時間潰しである――と考えることにしたのだが、
私の場合、ことさら何もしなくても時間を潰しているような気がする。
例えば朝、目が覚めるとあれとこれをしなければいけないと思う。
どちらを先にするかしばらく思案し、簡単そうなほうから着手しようとするが
簡単に見えるものほど実は難しく、〆切の迫っているほうから始めることにするが、
そこでふと、もうひとつやらなければおけないことを思い出したりする。
「それもあったか」と私は溜め息をつき、背伸びをしたり、あくびをしたり、鼻毛や白髪を抜いたりしているうちに
夜になり、もう取り返しがつかないのであきらめて早寝したりして、結局何もせずに一日が過ぎ去っていく。
 時間はわざわざ潰さなくても、ひとりでに潰れていく。
となると、やはり私には「趣味」は必要ないのではないだろうか。』
だがまさに、人生も暇潰しに似ていなくもない。

「昭和史探索 5」 半藤一利編著 ちくま文庫 ★★★★
昭和十五年から十六年にかけて、いよいよ太平洋戦争に突入していく前夜である。
有名な戦陣訓は、戦争を直接経験していない世代でも知っている。
『「生きて虜囚の辱を受けず、死して罪禍の汚名を残すこと勿れ」これである。
捕虜になるなかれ、それは「郷党家門」を恥ずかしめる恥辱中の恥辱であると、兵士たちは覚悟させられた。
そのために死ななくてもいいのに、無残な死を死んだ兵士がどれほどいたことか。』
有名なことばですね。また日本人的とも考えられる人生観でもあります。
『第二部のある課長は、私に対し、「いまや日米戦争は必至である」といった。
そこで私が、「勝つ見込みはあるのか」と反問すると、「もはや勝ち負けの問題ではない」といった。』
いまの政治家にもこんなことを言いそうな方々がおられるのではないでしょうか。
『日本の指導者はまともな考え、つまり健全な常識を失って、熱病にうかされたように
亡国が決定的な戦争に突入していくことになるのである。
ただ一つ、ドイツの勝利をあてにして、である。』
これを他律主義といってすますことはできない。
『十八歳の、旧制広島高校の一年生であった林勉が書いている。
「その朝の授業は、鬼のあだ名で文科生に最も畏怖された雑賀教授の英語だった。
廊下のマイクが臨時ニュースを伝えると、教授は廊下に飛び出して、頓狂な声で〝万歳〟を叫んだ」
この雑賀忠義教授が、戦後広島の原爆慰霊碑の
「安らかに眠って下さい過ちは繰り返しませぬから」の文句を考案した人なのである。』
なんだか、やるせないような気分にもなるのであります。
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遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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