ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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尾道友愛山荘ものがたり(3)
 <第一話>タムちゃんと尾道 その三

 にぎやかで、なごやかな雰囲気のなかでも、ふと人は考えこんでしまうものだ。
幸せな気分はいつまでも続かない。
人はひとりでは生きられないからといって、いつもいっしょにいるということはできない。
いつかはそれぞれに、それぞれの人生を生きていかなければならない。
それがわかっているから、みんなといるときが楽しいのだろうか。
 考えはおなじところをぐるぐると巡っては果てることがなかった。
メビウスリングを旅するように、おなじところを死ぬまで歩き続けるのだろうか。
ミュラー・リヤーの矢羽根に幻惑されて、めまいを起こしそうだ。
そんなこととは無関係に、時はとどまることなくすぎてゆく。
 商店街のアーケードの下で、さてどちらへ向かったものかと思案顔になる。
まばらな人の流れがこころを落ち着かせてくれる。
いつしか道は海岸沿いへとつながっていた。
 のれんをくぐって薄暗い店内にはいる。
しばらくは異次元に迷いこんだような感覚におそわれる。
ここは「まるも食堂」である。
だが、爺さん婆さんの話し声ですぐに現実にもどされる。
窓際に腰を落ちつければ、やっと一息つける気分になれた。

0026路地

「タムちゃん、ビールでも飲もうか」
「そうだねムッシュ、最高ですね。人はパンのみにて生きるにあらず、ということです」
 すかさずユーゾウ君が、
「それは、ちょっと文脈がちがうのじゃないかな。変やわ」
「ユウちゃん、堅いこといわないの。人はビールゆえに生きるにもあらず、だけどね」
 業を煮やしてサンペイが、
「へ理屈ばかり言っていないで、ビールを飲みましょうよ。
ぬるくなってしまいますよ。とにかく乾杯」
「サンペイ君は、見かけによらず常識人やなあ。
そんなことばかり言うてたら、女の子にもてへんで」
「そうしたらなんですか、変人が女の子にもてる、いうことですか」
「おっ、サンペイ君は鋭いねえ。女性は危険なにおいのする男性に魅力を感じるものだよ。
現代女性は平凡な男には飽き飽きしている、とわたしはみたね」
「でもムッシュ、危険なかおりのする男と変人では、180度方向が反対なんじゃないですか」
「そう考えることも可能です。
しかし、サンペイ君は納得できないだろうけど、そうばかりはならないのが人の世の不思議なのだ」

 とそのとき、店にいた男たちが老いも若きも、いっせいに入り口に注目した。
そこにはまばゆい光を背にシルエットとなった若い女性が立っていた。
顔は見えないが、なぜだか美しい人だと誰もが思った。
つぎの瞬間、その女性はきびすをかえして立ち去ってしまった。
全員唖然とした面持ちでゴクリとつばをのみこんだ。
「いまのは誰だい、おばさん」
「さあ、見かけん人だねえ」
「でも、きれいな人だったなあ。どうして帰ったのかなあ」
「そりゃあわからんけど、恥ずかしかったんじゃろうなあ。
いい男がこげにようけおるからかいのう」
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島を旅するときが楽しいですね。
遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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