ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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尾道友愛山荘ものがたり(12)
 <第三話>夏の邂逅 その二

 きっと、叫んでもいただろう。
走っていると、叫ばずにはいられないような感情がときとして湧きあがってくる。
俺は生きるぞ、なにがあっても負けるものか、と風にむかって大声で叫ぶのだ。
その大声を突き破って、自転車は走る。
やがて坂に差しかかる。すこし下を向いて、ゆっくりと坂を登ってゆく。
ハンドルを力いっぱい身体に引きつけて、くねくねと蛇行しながら登ってゆく。
ただ全身の感覚をペダルに集中させて進む。
汗が額から眉毛をつたって、地面へとポタポタ落ちる。
考えることは、決して足を着いてたまるかということだけだ。坂の頂上は果てしもなく遠い。
 またあるときには海岸べりで陽光にからだを暖められながら昼寝もしただろう。
疲れからか、いつのまにか眠りこんでしまう。ほんのひとときの睡眠が、また力を甦らせてくれる。
ふと目覚めて空を見あげれば、なつかしい気持ちで友達のことを思ったりする。
人恋しいというのではないのだ。寂しいというのとも全然ちがうんだ。
ぼくはひとりで生きているのではない。なにかしら大きなものにつつまれて、安らかな気分なんだ。
身近にはいないけれど、どこかで彼らもきっとおなじ想いでいる。
そんな確信がこころの底からじんわりと満ちてきて、ぼく全身をひたしてゆくんだ。
 山道を走り、峠を越え、橋を渡り、町をぬけて、自転車を走らせる。
サイクリストは風の音とともに旅をするんだ。

バイシクル

 友愛山荘にもそんな奴がやってきた。
彼は背がひょろりと高くて、鼻の下に髭をはやしていた。
着ている藤色のTシャツは陽にあせていて、半ズボンの下に毛ずねが見えていた。
はじめて見たときは、うさんくさそうな薄汚れた奴という印象だった。
すこし話してみると、そこはおなじ旅仲間であるし、なかなかおもしろい奴と変わってゆく。
山荘に来て体調を崩しそのまま居ついたので、ぼくたちは彼を「病人」と呼ぶことにした。
 今夏のメンバー、ぼく、文ちゃん、サンペイ、病人と四人のヘルパーが揃った。

 ぼくは夏の初めから来て、手始めに予約はがきの返事書きをすることにした。
尾道は瀬戸内沿いに岡山、倉敷、広島とならんで観光地だから人も多い。
きちんと予約はがきを出す人とは、どんな人なんだろう。旅慣れている人は少ないだろうか。
否、案外几帳面で旅行の記録もびっしりと大学ノートに書きこんでたりしてるかもしれない。
でもやはり、初めてだったりあまり旅行をした経験がなく人見知りする人かも。
だからその分、旅行に対しての期待と不安が複雑にからみあって脳裏を駆けめぐっている。
 だから、ぼくはそのスタートがすこしでも楽しくなるような返事を書こう。
経験があるからわかるけど、ただ宿泊OKのスタンプが押してあるだけの返事は淋しい。
いろいろと想像してる旅の楽しさが、急に萎えてゆくような気持ちにさせられる。
一言手書きで元気に来てください、などと書かれた返事はぼくを励ましてくれたものだ。
 どんなことを書けばいいのだろうか。なにかインパクトのあるものはないかと思いめぐらす。
折しも、国鉄では「DISCOVER JAPAN」の大展開がおこなわれていた。アメリカのもじりだ。
これだ「DISCOVER ONOMICHI」でいこう。
 テーマが決まれば書くのは簡単だ。みなさん尾道で自分自身を再発見してください。
若者の旅は自分を発見することではないでしょうか。よい旅を、尾道で会いましょう。
どれだけの反応があったかは知れないけれど、なにかをやることが大切だ。
どこかで、誰かが、ちょっぴりでも感激してくれれば、それで報われる。
ほんの些細なことで、物ごとが急展開することはよくある。
なにかのきっかけとなって、なにかが始まるかもしれない。そんなことを考えながらペンを執った。

 元気な大阪の女子高校生がやってきた。しかも二人、稔子ちゃんと清美ちゃん。
大阪の娘はよくしゃべる。それに小生意気な口をきく。彼女らもその例に漏れない。
高校生活の貴重な夏休みを、こうして友達同士で旅行するのは楽しいだろうな。
がんばれ若者って、ぼくだって若いのだが…。
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遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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