ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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尾道友愛山荘ものがたり(13)
 <第三話>夏の邂逅 その三

 朝食後に掃除を終えてひとやすみしながら雑談をしている。そんななかにふたりがいた。
あいかわらず元気そうに年上のお兄さんお姉さんを相手になにかしゃべっている。
そんな光景がほほえましくて思わず笑みがこぼれてしまう。
そんなぼくに、なぜか彼女らはすぐに気がついた。
「ムッシュ、なに見てんの」
 あまりにあどけないので、こんなふうに答えるしかない。
「いや、ふたりは可愛いな、と思うてたんや」
 稔ちゃんは、にやっと笑いながら
「そんなん当たり前やないの。変な目で見てたんとちゃうやろな、あかんで」
「アホぬかせ、ガキのくせしてからに」
「そうやって動揺するところが、非常に怪しい」
 と、清美ちゃんが鋭く突っこんでくる。
「ぼくはなあ、子どもには興味ないんや。もうちょっと大きなったら、考えてもええけどな」
 今度はふたりして抗議をしてくる。
「わたしら女子高生やねんで。世間では、もう立派な大人で充分とおるんや。
それに、尾道に来るまでに岡山で声かけられたしな。ねっ、稔ちゃん」
「そうそう、私らはガキじゃありません。レディーです」
 声をそろえて反撃してきた。参ったなと思いながらも、ついこう答えていた。
「あのなあ、ぼくのいうてるのはそんなこととちゃうねんで。
大人ちゅうのは身体だけとちがって、精神的にもやなあ、
まあそれなりの成長がなかったらあかんのとちゃうか」
「そしたら、わたしらは精神的に成長してないっていうんですか。失礼やわ」
 困ったなあ。ぼくは深呼吸した。
「君らなあ、なんか誤解してるで。
大人は偉くて、こども、うーん高校生はちょっと成長途上にある。
そんなふうに考えるのは、間違いやで。
高校生は高校生で、大人にはないええとこがあるんや。
現に、君らふたりは青春のまっただなかで、輝いてるやないか。ほんまやで、お世辞ちゃうで。
それに、変にくたびれた大人よりどれだけ素晴らしいか、自分らでわかるやろ」
「なんか、さっきと言うことがちがう。変に、とってつけたようやわ。
でも、褒められて悪い気はせえへんな。機嫌直したるわ」
「ほんまほんま、気いつけてもの言わな人生失敗するで。わかった、ムッシュ」
 生意気なガキやなあ、と思いつつもほっとした。
「そやなあ、お詫びの印として氷でもおごってもらおかな」
 と、ふたりしてこっちを媚をふくんだ目つきで見る。ええっ、しかたないなあ。
まあ、なんとかなるやろ。
「ああ、ええで。サンペイらもよんで、いっしょに氷でも食べに行こか」
「わあ、うれしい。先生も文ちゃんも病人もいっしょでええんでしょ」
「全然、かめへんで。みんなでバーとにぎやかに行ったらええやんか」
「やっぱり、ムッシュはええ人や思もうてたもん」
「嘘つけ。都合のええときだけ、ホンマにうまいこというて」
「善は急げ、いうさかいに、早う行こ」
「焦せらんでもええ。急いだら怪我するぞ」
 なんやかんやいうても、やっぱり大阪の娘は可愛いなあ。偏見やなくて、そう思う。
でも、ポンポンいうてる子にかぎって寂しがり屋やったりするから、むずかしいんや。
なんやしらん、ぼくは彼女らのおじさんみたいやな。
 みんなでワイワイと山をくだってゆく。サンペイが荷物を持ってやっている。やさしい奴っちゃなあ。
お兄ちゃん、ちゅうことか。商店街のアーケードまでたどり着いて、ふーっとひといきいれた。
 明るいところから急に暗い店のなかにはいると、一瞬自分を見失う。
ぼくは、どこにいるんだろう。
すぐに気を取りなおすが、そんな気分は淡くいつまでも残っている。
 かき氷は冷たくて、汗をかいたからだに沁みとおってゆくようだ。
海から潮のかおりとともに風が吹いてくる。こんな時間は、あっというまに過ぎ去ってゆく。
時間は、ぼくたちと歩調をあわせることをしない。
 駅で待ちあいの混雑のなか、視点をさまよわせながら時刻表をみる。
発車までの時間はわずかしかない。改札口の前で記念写真を撮る。
じんわりとした暑さを感じる。
明るい日差しのホームで、彼女たちは元気よく手をふって列車に乗った。

尾道駅風景
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島を旅するときが楽しいですね。
遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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