ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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尾道友愛山荘ものがたり(14)
 <第三話>夏の邂逅 その四

 しばらくして、東京から高校生三人娘がやってきた。
アイちゃん、チッチ、そしてマロ。三人三様、それぞれに少しずつ個性がちがう。
 アイちゃんはつばの広い帽子をかぶって、一見文学少女のようにみえた。
話しかけてみれば、乙女チックな考え方をする女の子だということがすぐにわかる。
でも真剣に現実を生きよう、人生の問題に取り組もうとしているまじめな娘だ。
それでも夢見がちなところもちょっぴりある17才。ぼくを眼を輝かせて見る。
しかしそこは現代っ子、しっかりしている面もかいまみせてくれるのだ。
三人のなかで長女役を演じているのだろうか。
 チッチはなにをしていても楽しくてしかたがない女の子、というふうに感じさせる。
明るい笑顔がとてもかわいいし、動作や仕草にも屈託がない。
漫画の「チッチとサリー」に出てくるチッチに似ているからだという。
そういわれたら、ちいさな眼がよく似ている。甘えん坊な末っ子タイプということか。
色白の腕が頼りなげな若さを象徴的にあらわしている。
 マロは一番おとなっぽい雰囲気を周囲に感じさせているだろう。
目鼻立ちがはっきりしているから、そう思わせるのだろう。美人タイプといえる。
しかし、見かけだけでは人はわからないものだ。なんといっても、まだ17才である。
いつもふたりのうしろで、おとなしく、はにかむような笑顔をみせている。
やっぱり女の子なんだなあ、とも思う。そんなところをみていると、なんとなくいじらしかった。
自分が話題の中心にならぬように、いつも気をつかうこころ根のやさしい少女なんだろうな。

東京からの三人組

 そんなかわいらしい三人組に、病人がプレゼントをするという。
ぼくは、なんだろうと思って見ていた。
彼はあぐらをかいて床にすわると、ポケットから白くさらしたふといタコ糸を取りだした。
こんなときには、旅で憶えた技がきっと役に立つ。
 黙って見ていると、投げだした足の親指に糸を引っかけて、器用になにかを編んでゆく。
やがて、それは草鞋の形をなしてきた。
ネックレスのように首からかける形にできあがった。
汚れを石鹸で洗ってかわかせば、まっ白なかわいいお守りのできあがりだ。
「わあ、わたしも作りたい。教えてください」の声がわきががる。
 ではということで病人が先生になって、みんなが見よう見まねで草鞋づくりをはじめる。
やってみると、これがなかなかに難しい。おまけにこまかい作業なので肩に力がはいって変に凝ってくる。
みんなの額にじわっと汗がにじむ。真剣な眼をして取りくむ姿はうつくしい。
みんなでなにかをやることは楽しいものだ。
ぼくは小学校のとき、工作の時間を思いだしていた。
図画は嫌いだったが、版画や工作は好きだった。自分が作りだしたんだという満足感がある。
ガヤガヤと教えたり教わったり、できはさまざまでも嬉しさおなじだ。
だれかプレゼントできる人がいればもっと楽しいんだろうな、とぼんやり思っていると、
アイちゃんが話しかけてきた。
「ムッシュ、なにを考えているんですか」
不意をつかれて、ぼくはこんなことを答えていた。
「アイちゃんらがおおきくなってお嫁さんに行くとき、お父さんはどんなことを思うのかなあ。
いつまでも、そばにおいていきたいと思うのかなあ。
それとも、元気で幸せになって欲しいと考えるのかな。
なんて、親の気もちについてぼんやり考えてたんや」
「そうですか、なにかちがうことを考えているような顔してましたよ」
「そうかあ、その白いネックレスが結婚を連想させたんやと思う。
それで、ここにアイちゃんらがいたからそんなことを考えたんやろうな。
父親ってどんな気分なんやろう」
「でもムッシュ、その前に自分が結婚しないとだめじゃないですか。
もちろん、好きな人いますよね」
「好きな人なら、たくさんおるでえ。アイちゃんのことも大好きやで」
アイちゃんは、ぼくをじっと見つめて、
「わあ、ひどい。そういうふうに言われると、少女は傷つくんですよね。
それに、あからさまに子供扱いされるとなんだか悲しくなってくるんです。
わたしはこれでも精いっぱい背伸びして、もう大人ですと表現しているのに…。
ムッシュは乙女心がちっともわかってませんね。鈍感でどうしようもないわ」
と、泣きそうな眼で見つめられると、どうしていいかわからない。
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島を旅するときが楽しいですね。
遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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