ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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尾道友愛山荘ものがたり(22)
 <第五話>夏の眩暈 その二

 昨夜のホールでのことである。
二人連れの女性が所在なげに雑誌を読んでいた。
そこへ、サンペイくんが通りかかる。
「どこから来たの」と、二人連れのかわいい娘のほうに話しかけた。
たまたま、そちらの娘がサンペイくんに近かった。
あるいは、サンペイがそうなるように歩くコースをとったのか、そこまではわからない。
「東京です。昨日は倉敷ユースに泊まりました。
今日は大原美術館と美観地区を見学してきたんですよ。
すごい人で東京の銀座みたいよね。とても暑かったし疲れちゃった」
と友達に同意を求めながら熱心に話しだす。
「あのう、ヘルパーのかたですか。そうですよね」
「どうして、ヘルパーだと思うの」
二人連れはお互いに顔を見合わせ、笑いながらこう言った。
「だって、かっこうが旅行してるみたいじゃないんですもの。まるで…」
と言葉を切って、なにがおかしいのかまた笑った。
「まるで、なんでしょうか。汚いかっこうをしてる、と言いたいのですか」
とサンペイが微笑みつつ、問い質したので彼女はつい本音をもらす。
「そういうわけじゃないんですよ。ただ、リラックスされてるな、と思っただけですから。
別に、そんなことは思っていません」
と、言葉に詰まってしまった。サンペイはやさしくこう言った。
「別に気になんかしてないよ。俺だって自分で汚いかっこうだと思っているもの。
でもね、ちゃんと洗濯はしてるんですよ。清潔感だけが、俺の取り柄だからね」
そう言いながら、すこし笑ってこうつけ加えた。
「そうでもないか。話題を変えましょう、ね」
「明日はどんな予定ですか」
「明日は尾道のお寺とか、『転校生』って映画あったでしょ。
あの映画にでてくる場所なんかを重点的に歩きたいな、なんて思っているんです」
「ふーん、重点的にね。映画はぼくも見たよ。
映画だと近くにあるような場面がけっこう離れてるんだよね。
だから、映画のシーンのようには歩けないよ。個々の場所はだいたいわかるけどね」
「へーえ、そうなんだ。もしかしたら、案内とか、してもらえるんですか。
でも、お忙しそうですよね」
こんなとき、どう答えるかはむずかしい。
いつのまにか周りの連中も息をつめて、話の成りゆきを見守っている。
さあサンペイくんどうするんだろう。
「じゃあ、希望者を募って尾道観光団を結成しましょうか。
寺やお墓も、みんなで歩けば怖くない」
「そんなあ、怖いところなんですか」
「言葉のあやですよ。言葉の、ね。でも、希望者っているのかな。
まあ、俺は君たち二人だけでも案内しますよ」
とサンペイくんがあたりを見回すと、10人ばかりが手をあげた。
そこで勢いをえた彼は、こんなことを言いだした。
「それでは、ここに『尾道観光団』の結団式をおこないたいと思います。
つきましては、最高顧問のムッシュ、ご挨拶をお願いいたします」
誰が最高顧問やねん。
それに、なんの特典があるんや。
と思いつつ、よせばいいのにぼくはその場の雰囲気にあわせて挨拶をしてしまった。
「ただいまご紹介にあずかりました、私がムッシュです。
決して、怪しいものではございません。
『尾道観光団』は、尾道のよき文化を探訪すること、
また団員相互の友情を深めることを目的としております。
だだし、恋愛はそのなかに入っておりませんので、ご注意ください。
ちょっと横道にそれましたが、とにかく、尾道の旧跡等を自分の足で歩き、
かつまた自分の眼で見て、各自の豊かな感性にさらに磨きをかけていただきたい、と思うものであります。
形あるものはいつかは亡びる、とは申します。
しかしながら、そのはかなさを知った上で護ってゆくことも、ひとつの見識だとは考えられます。
夏の短いひと日ではありますが、みなさまがたにおかれましては、
どうか、よき人生の糧を得らますよう祈念いたしまして、
簡単ではございますが、私の挨拶とさせていただきます」
すると、団長のサンペイくんはこう翻訳してくれた。
「ちょっと堅苦しかったですけど、気にしないでください。
明日も暑いでしょうから、日射病には気をつけましょう。
仲よく、楽しく、和気あいあいと尾道観光したいと思います。
時間等は、ミーティングの後で相談して決めたいと思います」
みんなは、ぼくの挨拶などまるでなかったかのように、サンペイに向かって声をそろえて言った。
「サンペイさん、よろしくお願いします」

4882尾道の町
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島を旅するときが楽しいですね。
遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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