ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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座す男
夜更けてぽつねんと座す男はなにをしているのだろうか。
空をみあげているような姿勢ながら、決して見てはいないということがわかる。
なにか経を唱えているかとみまがう瞬間もあったが、そうでもない。
考えごとをしているのならば、ときに首をひねってみてもいいではないか。
ただただ眠るでもなく座しているのは、はなはだ腑に落ちない。
ふと、なにかを待っているのではないか、という気がしてきたときに。
男はゆっくりとこちらに向きなおり、かすかに微笑むように思えた。
鏡のなかからゆっくりと出でて、わたしのなかを通りすぎてゆく。
月明かりにてらされて黄金にひかる空間だけがそこに残されていた。

7365足跡

「日本人ならこう考える」 養老孟司、渡部昇一 PHP研究所 ★★★★
日本人は日本人論がすきである、とはよく指摘されることである。
だが、ほんんどは単に日本人のどこが優れているとか、あるいはこういうところが遅れているという。
そういうことではなくもっと比較文化論的に考えてみればおもしろいのに、と思うのである。
『ともかく、もともとピューリタンには他律的に抑えようとするところがあるのです。
たとえばオランダの古い街の家々は、道に面した窓が非常に広い。
自分たちの生活が道から見えるようにして、不道徳なことはしていないことを互いに監視し合ったのです。
そうすれば道徳的には高くありえるでしょうが、しかしやはり崩れやすくもあります。
逆にスペインの家は、外から見るとどこに窓があるのかわからないけれど、
中庭があって窓が内側に開いている、
自分の罪を告解(懺悔)することで神の赦しが得られると考えるカトリックと、
そうは考えないプロテスタントの違いが如実に現れます。』(渡部)
なるほど、キリスト教も旧教と新教ではそういうところにちがいがあらわれるのか、と。
『そこは日本との比較でもおもしろいところですね。日本の場合は、家のなかは私的空間です。
だから、昔から日本ではかなりの貧乏人でも、どんなにボロボロでも家を塀で囲いました。
そして外へ出たら「世間様」がうるさかった。だけど、家のなかはまさに「家の自治」です。
だから江戸時代までは仕事も全部、家ごとに割りふったわけです。
「士農工商」も個人ではなく、家単位で割り振られているんです。』(養老)
この個人ではなく家単位でということを理解していないと、とんちんかんな議論になってしまいそうだ。

「ダロウェイ夫人」 ヴァージニア・ウルフ 丹治愛訳 集英社 ★★★
「ヴァージニア・ウルフなんかこわくない」という戯曲があるぐらい有名な作家である。
いまだ読んだことはなかったのだが、なにかで(忘れた)書名をみて読んでみることにした。
読みつつ有名な作家になるほど精神がとぎすまされるほどに病んでもいくのだろうかと。
作中で、セプティマスという青年が戦争で神経を病みついには自殺してしまう。
そうしたニュースをダロウェイは主催するパーティの出席者から聞くのだが…。
『彼女の針がなめらかに絹糸を引っぱり、いったんおもむろに休止し、そして緑の襞を寄せ集めて、
それをそっとベルトの部分に縫いつけるにつれて、静寂が静かな満足感をともなって彼女のうえに
降りかかってきた。夏に日の波もそのように寄せては高まって、平衡をうしない、そしてくだける。
高まっては、くだける。それを見ているうちに、全世界がしだいに荘重さをましてゆく口調で、
「それだけのこと」といい続けているように思われてくる。そしてついには、浜辺で日の光をあびて
横たわる肉体のなかで、心までもが、それだけのこと、と唱和をはじめる。
もはや恐れるな、と心が言う。』

「我が家の問題」 奥田英朗 集英社 ★★★★
本書の帯からその内容がうかがい知れるのだが、そのラインナップは以下の通り。
完璧すぎる妻のおかげで帰宅恐怖症に……「甘い生活?」
やさしい夫は会社のお荷物社員だった……「ハズバンド」
両親が離婚しようとしているらしい……「絵里のエイプリル」
突然、夫がオカルトに目覚めてしまった……「夫とUFO」
結婚して初めてのお盆休みはどう過ごす?……「里帰り」
妻がランニングにはまった本当の理由とは……「妻とマラソン」
家庭には妻と夫、親と子どもというあるときは対立する人たちが暮らしている。
平穏なときにはなにも思わないのだが、いったんことが起こると悩ましい問題が山積することに。
『おれ、最近思うんだけど、子供の人生が親のものじゃないのと同じで、
親の人生も子供のものじゃないんだよな』
それぞれが家庭のなかで近代的自我というかアイデンティティをどう確立してゆくのか。
というような小難しい話ではなく、そうだよなあなどと共感できるお話なのである(笑)。
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