ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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尾道友愛山荘ものがたり(23)
 <第五話>夏の眩暈 その三

 そういえば、そんなことがあった。
不思議なできごとがあって、こちらをすっかり忘れていた。
サンペイはどう考えているのだろう。
「サンペイくん、どこかにいなかった?彼が時間とか決めてるようやからな。
サンペイくんに確かめてみて、台所にいるのとちがうかな」
「そうですか。じゃあ、台所の方に行ってみます。ムッシュさんも行かれますよね」
「うーん、大丈夫。行けると思うよ」
「それじゃあ、またあとで。よろしくお願いします」
「はい、わかりました」
今日はいちにち尾道観光か。
暑いやろうなあ。
まあ、たまにはええけどな。

 食事も終わり掃除もすませると、10人あまりのホステラーが集まった。
さて尾道観光にでかけるか。サンペイが、なにやら注意事項を話している。
ぼくは列の後からついてゆくことにした。しかし、今日は暑くなるぞ。
全員が出発して、文ちゃんと二人で最後尾からぶらりぶらりとついてゆく。
「ムッシュ、今日は暑くなりそうですね。天気はいいけれどね」
「そうやな、からっとはしているけど、この暑さはかなわんな。
ビールでも飲みたくなる、そんな夏の日であった、なんてね」
「でも、サンペイくんが団長では、むずかしいですよ。サンペイって、あんがい堅いですからね」
「そうやな。それに女の子がおったりしたら、余計にええかっこしよるしな」
そんなぼくたちの気配に気づいたのかサンペイから声がかかった。
「最後尾のムッシュと文ちゃん、遅れないようにしてください。
よからぬ相談してるのじゃないでしょうね。集団行動を乱さないように願いますよ」
「ハイハイ、わかりました」
顔を見あわせて、にんまりと微笑んだ。

 千光寺公園から文学の小径を歩いて、ゆっくりと山を下ってゆく。
油蝉がジージーと暑そうな効果音を、ぼくたちの上に降りそそぐ。
夏の空気を震わせて自己の存在を主張していた。
「文ちゃん、岩に沁み入る蝉の声ちゅう芭蕉の世界になってきたな」
「ほんとうに、蝉の鳴き声って暑苦しいですね」
大きな岩が点在する見晴らしのよい場所を歩き、墓地の脇を通り抜けて下る。
歩き続けるうちに、いつしか石畳の坂に変わっている。
細い坂道に沿って土壁に瓦屋根をのせた塀がくねくねと続く。
建て混んだ民家の屋根越しに、天寧寺の塔が見える。
気がつかぬうちにも、かなりな道のり山を下ってきていた。
足もとに組みこまれた階段状の御影石や、家に挟まれた細い道が尾道を構成している。
天寧寺の塔をあとに残してしばらく歩くと、ロープウェイの駅近く艮神社にやってきた。
ここの境内でひと休みすることになった。冷たい水で手や顔を洗ってさっぱりする。
みんなもほっと一息いれ、松の木陰で汗のひくのをまっている。風が海からわたってくる。
各人思い思いに境内をぶらつている間を抜けて、サンペイがやってきた。
「ムッシュ、これからどうします」
「そうやな、せっかくやから寺づたいに浄土寺まで行くか、
それとも西國寺あたりまで足をのばしておしまいにするか、どっちがええかな」
文ちゃんはこう言った。
「それとも時間のない人は、ここらで解散してもいいかな。
どこかでお茶でも飲みたい、そんな人もいるんじゃないのかな」
「そうですね、みんなの意見を聞いてみます」

F0043天寧寺
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遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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