ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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尾道友愛山荘ものがたり(24)
 <第五話>夏の眩暈 その四

 離れて行くサンペイの後ろ姿を見やりながら、文ちゃんに話しかけた。
「最後までお付きあいしますか。それとも、どこかで一杯やりますか」
「最後まで付きあうほうが、いいんじゃないですか」
「そうやな。せっかくのサンペイくんの晴れ姿、最後まで拝ましてもらおかな」
「そのあとで、ビールでも飲みに行きましょう」
「またひとつ、サンペイくんの歴史が刻まれるちゅうことやな」
「悲しい歴史にならなきゃいいですがね」
「いや、人間成長するためには、ときとしてそれも必要なことなんや」
「でもムッシュ、ものには限度というものがありますよ」
「そやな、確かにサンペイくんにはいろいろと災難が降りかかることが多いわな。
しかしやで、こんなに試練が多いということは、逆にそれをバネにして伸びてゆく可能性もあるわけやな。
この状況がうまく機能したら、サンペイくんどこまで成長するかしれへんで。
ということはやで、偉大なる人物になる可能性がおおきい、ということになるな。
まあ悪くしてもやな、いっぱしの実業家、あるいは有名人になるのとちがうやろか。
うーん、そう思ってみると、なんか後光が射してるような気がせんでもないな。
これはいまからゴマすっとかなあかんで、文ちゃん」
「なるほどね、そういう結論もあながちない、とは言えませんね。
でもそのときになって、ぼくたちのことを忘れてしまっている、ということはないですかね。
それに世間では、男は成功すると苦労をともにしたときの女性をポイと捨てる。
そのうえ、若く美しい愛人のもとに走る。そんな話をよく聞くじゃないですか。
でも愛人て、中国語では奥さんのことなんですよね。
ムッシュ、韓国語ではどういう意味か知ってますか」
「ふーん、文ちゃん変なことを知ってるな。韓国語では恋人のことやで。
まあ考えてみたら、愛人という日本語は、はっきりいって情緒がない。
中国語の情人、というほうが凄味があるけどな。あれっ、なんの話をしてたんや」
「サンペイくんが成功して出世するという話ですよ」
「そうやったな。けど、サンペイくんはそんな薄情な奴とはちがうで。
きっとぼくらのことは忘れへん、と思うで。しかし、あいつは気が弱いところがあるからな。
これが、彼のウイークポイントやな。そやから気の強い女とくっついたら、これは問題やで。
その女がやで、ぼくらのことを気に入るかどうか、これが大きな問題になってくるな」
「確かにそうですね。そうなったら、ぼくらを近づけないようにするでしょうね。
そんな女に限って金使いが荒いんですよね。そして、サンペイくんはいいように騙されて捨てられる。
もちろん財産はすっかり彼女のものになってしまう、というストーリーも現実味がありますよ」
「これは問題やで。こうなったら、サンペイくんをいかに救うか、ということに力点が変わってくるな。
一概に成功が人に幸せをもたらす、とは限らんちゅうことやな。
それにサンペイくんは、つつましい、優しいこころの女性が好みらしいな。
しかし現実は、容易にそういった状態を現前してくれへんな。
反対の性格の女性といっしょになる、こういったことも多いと聞くで」
「そうですよね。それに、すこしマゾヒスティックなところがありますからね。
逆に、そういった事態がもたらす陶酔感に酔って道を誤る可能性も考えられますよ。
なにはともあれ、成功してご馳走してほしいですよね」
「まあ、なにはともあれ彼の成功を祈りましょう。
そして、ぼくたちを招待していただいて飲めや歌えの大宴会を盛大に開催してほしいものです」
「いまから、そのご馳走が目に浮かぶようですね」
「でも、なに料理がいいかな。これはよーく考えなあかんで」

F0059西國寺山門

 うーん、と二人腕組みをしていると、いつのまにか後にサンペイがすっくと立っていた。
「なにしょうもないこと言ってるんですか。なんの話をしてるのかと思ったら、人をだしにして。
よくもそんな架空の話を、それも他人の将来のことをぺらぺらと喋れるもんですね。
そういう意味では、おふたりさんにはほんとうに感心しますよ。もう、そろそろ出発しますよ」
二人してサンペイの顔をまじまじと見つめていた。サンペイは、しかたなさそうに言った。
「まあぼくが成功したら、料亭にでもなんにでもお二人をご招待しますよ」
神妙な顔で二人声をそろえて、
「よろしくお願いいたします」
と頭を下げると、たまりかねてサンペイが笑いだした。
「もう、どうなっているんですか、このふたりは。
よくもまあ、そんなくそまじめな顔して。どうしてそんな言葉が出てくるのかなあ。
あーあ、参いるよなあ。頭が痛くなってきちゃったよ」
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遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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