ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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朗読嫌い
小学校の国語の時間、先生が生徒を指名して立って教科書を読ませることがあった。
これがいつも嫌で、あてられないようにという気持ちで眼をあわせぬようちぢこまっていた。
それでもいつかは順番がまわってくるわけで、それはしかたがないことなのだった。
立ちあがった瞬間に、教科書の字がなにか外国の文字のようにみえてあせった。
やっとのことで読みはじめても、自分の声がなんだか他人の声のようにきこえてくる。
なにがなんだかわからぬままに読む順番が終わって、やっとのこと着席してほっと息をはく。
こうなると、急に他のやつはどうしているんだろうと、観察する余裕もうまれてくるというものだ。
ひとり歌うように劇を演じているように読む女子がいて、あっけにとられてながめていた。
すると突然ぼくのほうをみて、ウインクをした気がしてくらくらとめまいに襲われた。

N0759野猿

「クリスマス・キャロル」 ディケンズ 村岡花子訳 新潮文庫 ★★★★
スクルージ・マーレイ商会の吝嗇だったマーレイ氏はいまはもう生きてはいない。
では共同経営者であった一方の老スクルージ氏とはどのような人物なのか。
『ああ、しかし、彼はひきうすをつかんだら放さないようなけちな男であった、あのスクルージは!
絞り取る、捻じり取る、ひっかく、かじりつく。貪欲な、がりがり爺であった。
堅く、鋭いことは火打石のごとく、ただし、どんな鋼鉄を持って行っても、
唯の一度も火を打ちだしたことはないないという代物で、秘密を好み、交際を嫌い、
かきの殻のように孤独な老人であった。
彼の心の中の冷たさが、年老いたその顔つきを凍らせ、尖った鼻を痺れさせ、頬を皺くちゃにし、
歩きかたをぎこちなくさせ、眼を血走らせ、薄い唇を蒼くした。
そして耳ざわりな声で、がむしゃらに怒鳴り立てさせた。』
そんなスクルージの家に、明日はクリスマスという日の夜マーレイの幽霊があらわれる。
彼は、私のような運命から逃れるチャンスと希望があるということを知らせるためだという。
さらに、お前さんのところへ三人の幽霊が来ることになっていると告げられた。
そこからスクルージは三人の幽霊とともに彼の過去や未来へと旅をすることになるのである。
最後に、スクルージはだれひとり看取る人のない自分のなきがらに出会うことになる。
ふたたび現実の世界にもどったスクルージは、どうなってゆくのか。
ディケンズのもつヒューマニズム、話のうまさにひきこまれてゆくこと請け合いである。

「結論はまた来週」 高橋秀実 角川書店 ★★★
フリーペーパー『R25』に連載されていたエッセイを中心にまとめたものとある。
なかで「脳は鍛えられるものだろうか?」という文の、こんなところで笑ってしまった。
判断や計算が早くできればそれで、知能が高いというのはどうも腑に落ちないところがあるという。
『中学受験を取材した際にも、似たような子供たちに出会った。
50%の食塩水○グラムと30%の食塩水○グラムを混ぜると、何%になるか?
という算数の問題に、ある子は私にこう問うた。
「そんな濃い食塩水を何に使うんですか?」』
そんな疑問をいだいてしまう子どもは、知能が低いということになるのだろうか。
こんな若者へのメッセージもある。
『そういえば先日、テレビで映画監督の黒澤明のインタビューを見た。
彼は若い頃、画家を志し二科展などにも入選したらしいのだが、
入選とほぼ同時に画家の夢はあきらめたという。なぜなら本人曰く「できちゃったから」。
こんなに簡単にできちゃうのだから自分には「才能がない」と思ったらしい。
一流の画家たちはいつまでもできずに延々と描き続けている。
「できる」というのはその先の世界が見えていないから、そう思えてしまうわけで、
それは才能がないという証明なのだ。
できないと思っているあなたには才能があります。』

「あいさつは一仕事」 丸谷才一 朝日新聞出版 ★★★
題名の示すように挨拶集なのだが、丸谷氏はかならず原稿を書くというのでこのような運びになった。
ここで紹介されていた吉田秀和氏(まだ読んだことがありません)を祝う会での祝辞のなかで。
『吉田さんのあるエセイのなかにチャーチルが出て来ます。変な取合せですね。
そのなかに、チャーチルの言ひまはしで一世を風靡した「鉄のカーテン」といふ言葉、
あれについての解説がある。
西洋の劇場では、舞台と客席のあひだに布地のカーテンだけがあるのぢやない。
もう一つ鉄の扉が備へつけてあつて、劇が終り、カーテン・コールが果てしなくくり返されるときに、
この鉄の扉がガラガラと降りて来る。そこで熱狂しゐる観客がもう帰るしかなくなる。
この鉄の扉の威嚇的で冷酷な感じをチャーチルは使つたのだ。
それゆゑ「アイアン・カーテン」は「鉄のカーテン」ではなくて「鉄の扉」と訳すべきであつた。』
ほう、そういうことでしたか。
常々、丸谷氏の本で紹介されたものを読むようになっているのですが、今回も収穫ありでした。
まだまだお元気でと思っていたのだが、お亡くなりになられ、まことに残念であります。
10月13日午前7時25分、心不全のため87歳であったとのことです。
こころよりご冥福をお祈りいたし、これまでいろいろと著書によりご教示いただきありがとうございました。
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遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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