ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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尾道友愛山荘ものがたり(26)
 <第六話>夏の時間 その一

 ゆっくりと顔をあげて、もの問いたげな表情でメグはいう。
「でもいろんなことを考えてると、日々の暮らしのなかでも疑問がわいてくるんです。
その疑問をだれかにぶつけたくなりますよね。
そんなとき、聞いてくれる人、応えてくれる人が身近にいるといいんですけど」
「まあ、世のなかそううまくはいかんわな。でも質問に答えるいうのは、むずかしいことなんやで。
莫迦が好きなだけ質問したら、ソクラテスといえども答えられへん、というからな。
そやから、質問することは自由やけど、自由に質問する権利は、質問者のほうにもやで、
逆にどのような質問でも受けるという義務をも発生させる、というのはどうかな。
そんなふうなギブ・アンド・テイクがないと、秩序ものうなってあかんのとちゃうやろか」
「それは、そうですよね」
「それにやで、こどもってすぐに、なぜ、どうして、と聞いてくるやろ。
まあこの質問攻めになんでもてきぱきと答えられる人というのは、そうはおらんで。
まず、じっくりと聴く根気が必要やな。それに、なにを知りたがっているのかという判断が重要や。
質問にまともに答えても納得せん場合が多いからな。言外の意味をくみとる、ということや。
こどもは考えを言葉にする訓練になれてないからな。察するいうことが必要やと思うで。
おとなの場合は質問する人が悪意の人だったりしたら、もう大変やな。
質問することが目的ではなくて、困らせたろうということに焦点を絞ってたりするからな。
まあなんにせよ、おたがい冷静に議論をしたいものやな。それには前提条件がある。
個々人がまず自分の頭で考えて、質問するときは自分なりに整理して質問する。
そんな最低限のルールというか、マナーは守らな議論はできんな」
 と、サンペイくんは。
「それは分かるけど、どうしても誰かに聞いてほしいっていうこともありますよね。
それもいますぐに聞いてほしい。だから、沈黙を守るのがどうしようもなく苦しい。
人って、黙っているのは苦手な生きものじゃないのかな」
「そうそう、たまらなく誰かと話したいと思うときがありますもの。
話し相手がいるって、大切なことですよね。そんな相手が友だちってことになるのかしら」
「それについてはぼくも分かるな。実感として、わかるいうことやけど。
たとえば、ひとりで旅してると、人とのわずらわしい関係を断ち切れてすっきりしてるんやけど、
唐突に、話し相手がほしいなあ、しゃべりたいなあという気分におそわれるときがあるんや。
まさに襲われるという感じで、自分では制御できん感情なんやなあ、これが。
自然のなかで過ごす旅もええけど、人情の機微にふれたりすると、
またなんとも言えん感慨をいだいたり、人生って素晴らしいなあと変に感動したりするんやな」
「そんなときは、生きてるって素敵なことなんだと理屈抜きで思えるんですよね。
それに話してるときばかりではなくて、ふと黙ったときでも、
なんだか落ち着くというのか、こころ安らかなときってあるんですよね。
それは、どんなときかっていうとですね、
友だちとただ並んで座っていたりしてるだけなんですけど、感じるんですよね。
あたたかなこころというのかな、口ではうまく言えないんですけど、伝わってくるんです。
だから、ちっとも淋しくなんかない。生きる気力がわいてくる、というのかな」
「そうやな、何人かで砂浜に並んですわって夕陽をみてるだけやけど、感じるんやな。
なんか不思議な感じで、横向いたらおたがいにちょうど向き合ったりして、
思わず楽しい、うれしい笑いがこみあげてくるようなときが、確かにあったな。
ただ惜しむらくは、これが長続きせん。なんでなんやろうな」
「そんなはかないものだからこそ、すばらしいと思えるのかな」
「『命短し、恋せよ乙女』、かあ。なんか、せつのうなってくるなあ」
 ひとときの空白が寄せてきて、それぞれがそれぞれの思いにひそむ。
ジージーと蝉の鳴き声が降りそそぐなかで、夏の時間はすぎてゆく。

4839夏空

「ああ、人生は不可思議に満ちとるなあ」
「どのくらい不可思議に満ちているのですか、ムッシュ」
「そうやな。女性と同じくらい不可思議であり、かつまた神秘的であり、不可解でもあるな。
サンペイくん、そうは感じませんか」
「女性に関しては、その通りだと思います。
その言動、行動からして分からないことだらけですよ」
「つまりは女性とはそもそもなにか、という根本的疑問をもっているわけやな」
 そこで、メグが鋭く切りこんできた。
「でも疑問をもつというのは、好奇心があることの裏返しじゃないかしら」
 サンペイも開きなおって言う。
「そりゃあ、そうですよ。この世のなかには、男と女しかいないんですから」
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遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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