ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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蛍の光、窓の雪
いまではあまり歌われないようなのだが、われわれの世代では卒業式定番の歌だった。
勉学・進学は貧しい身分から立身出世するための必須のツールである、とされていた。
日本では東大を筆頭に学費も安い国公立の学校がそれなりに高い評価をうけているのである。
貧乏人にも公平な制度といえるかもしれないが、人の能力とは知性のみなのかという疑問は残る。
日本では文武両道などというが、これは日本的な考え方なのだとなにかで読んだ気がする。
支那(チャイナ)にそういう言葉はないし、科挙制度に代表されるように圧倒的に文が上だというのだ。
というより肉体を軽視しているというのか、労働を軽んじる風潮があるということのようだ。
窓から雪が降りつむ光景がみえる夜には、シンとして音もなく世界はただあるだけのようだ。
音が雪の結晶の間隙にすいこまれていくさまを思いうかべると、なぜかそこに宇宙を感じたりもする。

N1729夜に咲く

「骨と歌う女」 キャシー・ライクス 山本やよい訳 講談社文庫 ★★★
最近はミステリの世界でも法人類学者などという職業の方が登場する。
本作も、テンペ・ブレナンという女性の法人類学者が主人公になっている。
この法人類学者は検視官とはちがって医師ではない(医者の免許は必要がない)。
人間の骨の構造と、その変化、人種によるちがいの専門家である。
今日では生物人類学として知られる人間の体とその変種全体を研究対象とするものだ。
したがって、いきおいその立場からの考察がストーリーのポイントになってくるわけだ。
それはそれでけっこうなんだが、どうも謎解きの部分がもうひとつという気がしないでもない。
カナダのモントリオールが舞台なのだが、ブレナンが駐車に困った場面に目がとまった。
『ニューロ(神経学協会と神経病院を合わせてこう呼んでいる)は三〇年代にできたもので、
ワイルダー・ペンフィールドがその生みの親だ。ペンフィールド博士は優秀な科学者であり、
神経外科医だったが、交通整理に関しては先見の明がなかったようだ。』
そこしまえに読んだワイルダー・ペンフィールド、こんなところにでてくるのがなんだか不思議である。

「進化を飛躍させる新しい主役」 小原嘉明 岩波ジュニア新書 ★★★★
ジュニア文庫というからには、高校生や小学年高学年あたりまでが対象だろうかと思われる。
しかし実際に読んでみると、内容は決してやさしくは書かれているが易しいとはいえない。
本書も、モンシロチョウの雄はどうして同種の雌がわかるのかという著者の疑問からはじまる。
『研究は「雄は雌をいかにして配偶者として同定するか」という個別的な問題からスタートしました。
その結果、「雌の翅の紫外線色をふくむ特殊な色」ということがわかりました。
ところが、この特殊な色の一構成色である紫外色は、日向と日陰、長日型と短日型、
それに生殖場所によって異なるという想定外の事実が明らかになりました。』
こうして研究は舞台をヨーロッパや全世界までもひろがってゆくのである。
科学研究というものがどういうふうに実際は行われ、どんな困難や喜びがあるのか。
研究者の実体験にもとづいたこうした本が書かれることは科学者の義務でもあるのかもしれない。
いつかこの本を読んで科学の道へと歩みだす子どもたちがあらわれることだろう。
そういう意味ではちいさな一書ではあるが、おおきな役割を担っているといえるだろう。

「アンダーソン短編集」 シャーウッド・アンダーソン 白岩英樹訳 近代文芸社 ★★★★
以下は「男の物語」という一篇のなかの文章である。
『ぼくは、ある観念がその詩集全体に行きわたっているということを説明したかっただけなのだ。
その観念とはこういうものだ。人が自分たちのまわりに壁をめぐらし、
おそらくすべての人間は永久に壁の内側に立ちつづけることを宿命づけられている―
そしてこぶしを握ったり、つかめるものなら何でも手にして、しきりに壁をたたいているのだ。
何かを打ちやぶりたがっているのはあなたにもわかる。
ただ、巨大な壁が一枚あるだけなのか、個々の小さな壁が数多くあるのかはさっぱりわからない。
ウィルソンは前者のように書くときもあれば、後者のように書くときもあった。
人が自分で壁をめぐらし、その内側に立っている。
壁の向こうにはぬくもり、光、空気、美、つまり生があるんだということをおぼろげに知りつつ―
しかし同時に、彼らのうちに潜む狂気のようなもののせいで、壁はたえまなしに、
より高く、より頑丈になっているのだ。』
人はみずから自分のまわりに壁を築いているというのはどこかで読んだ気がする。
すぐれた文学というものは、そうした洞察がなければ書けないんだということがよくわかる。
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遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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