ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
04 | 2017/05 | 06
S M T W T F S
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

受験電車
そのとき、最近もニュースでよくみるように朝から雪が舞っていた。
もちろん手の指はかじかんでくるし、足先は寒さでジンジンするようなぐあいだった。
受験会場へと向かう電車は満員で、顔はほってってくるのに手だけはやけに冷たかった。
鉛筆が握れなかったら最悪だなと思って、ポケットのなかでひたすら手を動かしていた。
足踏みをするスペースもなく、からだはただただちじこまっていくかのようだ。
窮屈な満員電車のなかで、それでも受験参考書をひろげている学生もちらほらみえた。
すこしでも知識をつめこもうというより、なんとかこころを落ち着けようとするかのようだった。
なにもしないでいると不安が襲いかかってきておしつぶされそうになる車内だった。
頭越しにすこしだけ見える車窓では、ビルや工場がつぎつぎに後方へ飛びすさっていった。

N3974ガーデンライト

「散歩の昆虫記」 奥本大三郎 幻戯書房 ★★★
本を読んでいて楽しいのは、なるほどと思えることである。
『南方では、朝起きてベッドから降りる時、いきなり長靴を履いたりしてはいけない、とよく言われる。
夜のうちにサソリかムカデが中に入り込んでいて、それに刺されるとえらいことになるからである。』
南方ではないがムカデに刺されたことがあるので、その大変さはよくわかる。
加えて、視点・立場のちがいによるものごとの捉え方というか、これも大切だと思う。
『ヒトデの胃は「反転胃」という。
飲みこめないような大きな獲物は外に出した胃袋で包み込んで体外消化をするのである。
人間なら恐怖のあまり失神するであろうが、掴まったカニや貝はどう感じているのであろう。
特に貝の場合、上から覆いかぶされ、強力な吸盤の吸着力で殻をこじあけられてしまうのである。
可哀想な貝よ、という人間が、一椀に数十個のシジミを煮殺した味噌汁を飲んで、
「ああ旨い」と言っているのであるから世話はない。』
知っていると思っていることばでも、その由来・来し方にはそれなりのことがあるようだ。
『金持ちが死ぬと盛大に牛を殺す。
大勢の人を招いて食事をふるまい、歌ったり踊ったりの宴会を何日も続けるのである。
牛は財産の象徴であり、犠牲として神に捧げるための動物であって、日頃殺すことはなく、
祭礼用にとってある。
もっとも牛が財力の象徴であるのは古代ローマ人やアフリカのマサイ族でも同様で、
「牛の頭」を意味するラテン語のカプートcaputが資本主義、
capitalismの語源になったわけである。』
ということで、今日もなんだかほんわりとした気分になれるのであった。

「リガの犬たち」 ヘニング・マンケル 柳沢由実子訳 創元推理文庫 ★★★★
スウェーデンの田舎町イースタを舞台にする、刑事ヴァランダーシリーズの第二作目にあたる。
今回はイースタの近くの海岸に打ち上げられたボートの中に二つの死体が発見されるところから始まる。
潮流からして彼らはロシア人か東欧のどこかから流されてきたと思われる。
彼らはラトヴィア人であるらしく、そこでラトヴィア警察からカルリス・リエパ中佐が派遣されてきた。
日本人ならその地理的位置さえも定かではないバルト三国の一国、ラトヴィアがどんな国かも知れない。
ヴァランダーとともに捜査をすすめていくなかでリエパ中佐はこう言うのである。
『「自分は宗教を信じている」リエパ中佐は言った。
「といっても、特別の神を信じているわけではない。だがそれでも人は信仰をもつことができる。
人の意識の外に存在するなにかを信じることができる。マルキシズムさえその思想の一部に信仰が組み込
まれている。合理的な知識であり、単なるイデオロギーだけではないことになっているマルキシズムでさ
えそうなのだ。』
そして事件はラトヴィアにもどされ、リエパ中佐が帰国した途端彼は殺されてしまう。
ここから、ヴァランダーは事件と複雑にからみあい翻弄されてゆくのであるが…。
しかし、作者ヘニング・マンケルのこんな発言もすなおにうなずけるのである。
『ノーベル文学賞が推理小説家に贈られる日がいつかきっと来る』
いい加減、純文学だとか大衆文学だとかというカテゴリライズから日本も脱することが必要だろう。
小説にはいいなあと思わせる小説、読ませる小説と、つまらない、くだらない小説ぐらいの区分でいい。
そう思う、考える人びとが増えてくるのではないかな、などと思っているのである。

「日本語は天才である」 柳瀬尚樹 新潮社 ★★★
ジェイムズ・ジョイスの「フィネガンズ・ウェイク」を翻訳をしたことで有名な柳瀬氏である。
駄洒落好きのきらいはあるが、随筆は読んでいてなかなかおもしろいものがある。
日本語は漢字・ひらがな・カタカナそして同じ漢字でもその読み方に音と訓があるという独特なもの。
漢語というのは、じつは和製のものがすくなからずあり、中国が逆輸入しているものも多いのだとか。
例として、脱線、自費、時間、自習、自慢、独創、自体、独特、定着、世紀などすべて和製漢語です。
『もう少し立ち入りますと、時間と世紀という語は古い漢語にある。しかしその時間は、ぼくらが時間、
空間と言う場合の意味ではなく、世紀は「百年」という意味ではありません。そして時間も世紀も、
日本語と同じ意味で現代の中国語として使われているのです。
いま登場した空間の場合も、やはりそうです。』
なるほどね、日本と中国はことばに関しても緊密な関係があるので昨今の緊張関係は残念ですね。
読み方もむずかしいですね、こんな例が書かれていました。
『たとえば、一段落はイチダンラクです。ヒトダンラクではない。一目惚れの一目はヒトメですが、
一目置くの一目はイチモクです。一足違いの一足はヒトアシですが、一足飛びの一足はイチソクが
促音便となってイッソクです。』
というように、まだまだ勉強しなくてはいけません。
スポンサーサイト

テーマ:最近読んだ本 - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
→http://moucheokuno.blog26.fc2.com/tb.php/1332-162df503
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

ムッシュ

Author:ムッシュ
島を旅するときが楽しいですね。
遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カレンダー

04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

カテゴリー