ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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ベッドで読書
寒いときには、本をもって寝床にもぐりこんでしばしの暖を感じるのがこころよい。
やっと人心地がついたと思えたら、おもむろに本のページをひらく。
このときの姿勢だが、これがなかなかぴたりと決まらないのが寒いときの難点である。
ぐずぐずと横を向いたり、あおむけになって本を高くかかげたりする。
そのうち腕がだるくなってきて、また横向きになって本を読む。
寒くなければ、こんなに苦労しないで読めるのになあと思ったりもする。
しかし、暑ければ暑いで寝返りばかりうってなかなかページはすすまなかったりするのだ。
そのうち知らず知らず眠っていたのか、ゴトンと本の落ちる音で目覚めることになる。
やはり読書は電車にかぎる、と思わずにはいられない今日この頃である。

N3983わが家にあるミティラー画

「シャンタラム」(上)(中)(下) グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ
                         田口俊樹訳 新潮文庫 ★★★★★
リン・シャンタラムと名付けられた男の物語は彼の独白からはじまる。
「シャンタラム」とは「平和を愛する人」「神の平和を愛する人」という意味のマラーティ語である。
『私の人生の物語は長く、込み入っている。私はヘロインの中に理想を見失った革命家であり、犯罪の
中に誠実さをなくした哲学者であり、重警備の刑務所の中で魂を消滅させた詩人だ。さらに、ふたつの
監視塔にはさまれた正面の壁を乗り越え、刑務所を脱獄したことで、わが国の最重要指名手配犯にもな
った。そのあとは幸運を道づれに逃げ、インドへ飛んだ。インドではボンベイ・マフィアの一員になり、
銃の密売人として、密輸業者として、偽造者として働いた。その結果、三つの大陸で投獄され、殴られ、
刺され、飢えに苦しめられることになる。戦争にも行き、敵の銃に向かって走り、そして、生き残った。
まわりでは仲間が次々と死んでいったが、その大半が私などよりはるかにすぐれた男たちだった。私は
そんな彼らを埋葬した。多すぎるほど埋葬した。埋葬し終えると、彼らの人生と物語が失われたことを
嘆き、彼らの物語を私自身の物語に加えた。』
オーストラリア人の主人公がボンベイの空港に着き、底抜けに明るいプラバカルというガイドに出会う。
はあらゆる人種、犯罪などがうずまく街ボンベイで彼の新たな人生がはじまるのである。
本の長さを感じさせないおもしろさがあり、また人生を考えなおすしかない思いにもとらわれる。
彼が最初に知りあったカーラのこんなセリフはどう感じるだろうか。
『「この世の中のどこがまちがっているか、それを知るのはいいことよ」ややあって、カーラは言った。
「でも、それと同じくらい大切なことは、どんなにまちがっていても、絶対に変えられないことがある
という事実を知ること。この世の中にあるわるいことはたいてい最初はそんなに悪くなかったことよ。
誰かがそれを変えようとするまでは」』
なんだかどこかの国でおこっている政治的なことのようにも思えるのである。
ボンベイのマフィアを仕切るアブデル・カーデル・ハーンとの会話もいい。
『「きみはキリスト教徒かね?」
「いや、おれは神を信じちゃいません」
「神を信じるなどというのはとうてい誰にもできないことだ」
とカーデルはまた笑みを浮かべながらもきっぱりと言った。
「われわれは神を知っているか、知らないか、そのどちらかしかない」』
生きているいろんなことに出会い、ときになにが真実なんだと反問することがあっただろう。
そんなとき、こんな言葉を聞いたら、おもわず笑いださずにはいられなかっただろう。
『真実というのはわたしたちみんなが好きなふりをしている、いじめっ子みたいなもの』
もちろん、小説というものは読む人にとってまったくちがったものになることがある。
感じることは、ひとぞれぞれでちがってあたりまえである。
ではひとつ読んでみて、自分なりの読後感にひたってみるのもいいではないですか。

「暮らしの世相史」 加藤秀俊 中公新書 ★★★★
加藤先生をはじめて知ったのは、学生の頃読んだデイヴィッド・リースマン「孤独な群衆」でした。
その本もだれかに貸したきりになっていまは手元にはありませんが、懐かしい本です。
訳者として知ったのですが、それからときおり著作も読んでいました。
PHP文庫の『「東京」の社会学』などおもしろかったですね。
自分なりに加藤先生の社会学シリーズと銘うって、「習俗の社会学」「文芸の社会学」も読みました。
いまでも書棚のどこかにあると思いますが、まだまだお元気でいられるのでしょうか。
『いま「キモノ」と一般にかんがえられているのは正確にいえば「晴れ着」、それも明治以降の新発明
品であって、ルドルフスキーが『キモノ・マインド』で解釈したような「キモノ観」はまちがっている。
男女をとわず、「和装」はデザインも機能もけっして非活動的なものではなかった。そのことは福井貞
子がもう一冊の名著『野良着』でみごとに立証しているとおりである。「和服」ということばは通常「
洋服」と対比され、和装がいかに不便であるかが強調されるけれども、ふだん着としての「和装」は筒
袖にモンペ。そのすがたは「洋服」と原理的におなじなのである。都市生活のなかでも婦人の姉さんか
ぶりでタスキがけ、という和装はかならずしも非活動的なものではなかった。戦争がはじまってから「
モンペ」の着用が奨励され、それに不満をしめす婦人たちもいたが、それは大都市の奥様がたであって、
庶民の「ふだん着」はきわめて活動的にできあがっていたのである。柳田国男が、筒袖に股引ないしモ
ンペという風俗に着目して、そもそも「洋服」とはなんぞや、という大胆な疑問を提出していたことな
ども、このさい思いだしてみてもよいだろう。』
キモノというとつい着流し姿を思い浮かべるのであるが、あれで戦はできませんからね(笑)。
『しかし、だいじなのはこうした「アメリカ化」現象を「戦後」のものとしてとらえるのはまちがいで
ある、ということの認識である。わたしはべつだん、ここで万延元年の遣米使節にはじまる日米交渉史
のおさらいをするつもりはない。だが、手もとにあるおおくの現代史の書物をよんでいると、あたかも
「戦前」が反米軍国主義の時代であり、「戦後」がアメリカ文化の輸入による「民主化」の時代であっ
たかのごとき記述が目につく。わたしのみるところでは、こんな歴史認識は全面的な錯誤である。「戦
前」の日本もアメリカ文化の波に洗われ、大衆文化、生活文化のいたるところにアメリカが顔をのぞか
せていたのである。そのことは荷風はじめ、同時代を生きたおおくの日本人は記述してくれているし、
昭和五年うまれのわたしなどは、おそらくその連続性をかすかに記憶のとどめている世代になるのだろ
う。あとにつづく世代の人びとが「戦前」と「戦後」についてのあやまった断絶史観のよって現代を認
識し、解釈することをわたしはおそれる。』
こんなご指摘もよくよく知っておかないと議論がちぐはぐになってしまいそうです。
こう読んでくると、そうでしたと言わざるを得ないことが多々あると気づくのである。

「騎手の一分」 藤田伸二 講談社現代新書 ★★★
競馬の現役ジョッキーが書いた本ということでけっこう売れているらしい。
図書館の予約でも、ずいぶんと長いことまっていたからそうなんだろうと思う。
読んでいて、『フサイチコンコルドで勝った1966年のダービー』というところでおっと思った。
このレースの馬券、たしか馬連3-13で34.2倍ついたのを的中させたの思いだした。
記録をつけているのでわかるのだが、この年もよく負けたというかはずしたものだった。
ちなみにこの一年間では、回収率67%という記録が残っている。
(いくら馬券に投入したのかは野暮であるから書かないことにしておこう)
しかし、彼が乗っていたという記憶はないから騎手については気にしていなかったのだろうか。
まあどんな世界でも、会社でもいろいろと大変なこと、ローカルルールというようなものはあります。
まずはお体に気をつけて頑張ってください、としか言いようがないですな。
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テーマ:最近読んだ本 - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント
元気です
拙著をお読みいただきありがとうございました。ブログ検索をしていてお書きになった記事を拝見しましたのでごアイサツまで。当年八十四歳になりますが、おかげさまで元気にしております。
【2014/03/09 14:26】 URL | 加藤秀俊 #- [ 編集]

お元気そうでなによりです。
これからもいろいろとご教示ください。
クロード・レヴィ=ストロース氏ぐらいは生きてください。
また読ましていただきます。
【2014/03/09 21:04】 URL | ムッシュ #- [ 編集]


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島を旅するときが楽しいですね。
遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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