ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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はるかなる夏の日 第二夜
電車の窓からぼんやりと通りすぎる街のあかりをながめていた。
まもなく三ノ宮駅というあたりになって、はっとわれにかえる。
改札口をでてあたりを見渡したら、ひとごみのむこうにマイコが見えた。
ちいさなバッグをからだの前にして、きょろきょろしたり下をむいたり。
だんだんと近づくにしたがって、なんだかどきどきしてきた。
なんなんだよこれは、デートじゃないんだぞって自分にいい聞かせた。
気配を感じたのか急にこちらをふりむいた。
なんとなくばつが悪い感じがして、呼びかけもぎこちなくなった。

「ようひさしぶり、元気そうだな」
「そうかな。ごめんね、急に電話して呼びだしたりして」
「いやあ全然、おれもひまだったし、ちょうどよかったよ」
「だったら、よかった」

しばらく沈黙がつづく。
こういうのが苦手なんだよなあ。
ああ、どうしようかな。
なんだか高校生のころにもどったようだ。

「ほんとうは、怒ってるんじゃない?」
「怒ってなんかいないよ」
「やっぱり、怒ってるんじゃないの」
「怒ってないって言ってるだろ」
「やっぱり怒ってるんだ…」
「そうじゃないって、参ったな」
「だって、しゃべりかたが関西弁じゃないし…」
「あっ、すんまへん忘れてましたわ」
「ほらね、そうやってわざとらしく関西弁つかうし。なんだか変な関西弁だし…」
「どないせえっちゅうねん」
「ふつうに、いつものムッシュでいてよ」
「いつもこんな感じなんですけど、どういうこと?」
「なんというか、訳のわからない理屈をこねる、というような感じかな」
「そんなあって、おれって訳わからんやつなんか」
「そうそう、そんなふうだとすこし安心できる」
「はいはいわかりましたよ、気いつけます。で、どこかに行こうか?」
「どこでもいいけど、変なところは嫌よ」
「変なところって、どういうところなんや?」
「ネオンがちかちか点滅したりしてるところとか」
「それって、…」
「パチンコ屋さんはうるさくて、いやだわ」
「あのなあ、てっきり…」
「てっきり、なに?どこだと思ったの?」
「そんなこと言えるか」

すこし調子ももどってきたので、喫茶店に行くことにするか。
駅近くにあるのは薄暗い純喫茶というような店しかなかった。
それもどうかなと思いつつ、おれとしては居酒屋でビールなど飲みたかったのだが。

「コーヒーでも飲むか」
「コーヒーかあ…」
「じゃあ、紅茶かジュースなどいかがでしょうか」
「あのねえ、ウエイターじゃないんだから」
「じゃあ、腹減ってるのか」
「すこしだけど、そうじゃなくてのども乾いているかなって思う」
「ビールでも飲むか」
「そうね、ビールがいいわね」
「じゃあ、居酒屋しか知らないけどそれでいいか」
「いい、いい、居酒屋が」
「だけどマイコ、飲んでだいじょうぶな性質(たち)?」
「まあまあ、ね」
「そのまあまあいうのが怖いねんや」
「どう怖いの」
「女性がまあまあというのは、たいていかなりという意味やがな」
「そんあことないよ、まあまあだよ」
「じゃあ、ビールなら何本ぐらい?」
「二三、うーん、四五本ぐらいはだいじょうかな」
「飲めるやないか」
「でも、だれかみたいにからんだりしないから」
「だれかって、だれのこと」
「ご存知のくせに、まあ」
「おれはからんだりせえへんよ、ちょっと理屈っぽくなるかもしれんけど」
「それそれ、評判悪いわよ」
「どう言われてるんや」
「場の空気を読めないやつ、堅苦しいことこの上なし、あほちゃうか、とかなんとか」
「ほー、言いたい放題やな。まあ、あたらずいえども遠からじ、ハハッ」
「ね、そうでしょ。とにかく行きましょうよ」
「そうやな、レッツゴー。っておれたちふたりしかおれへんけど」
「やったー、デートみたい」
「そういわれたら、そうやけど。おれでいいんでしょうか」
「まあ仕方がないわね。我慢したげる」
「おうおう、おおきに。すんまへんな」

なんだかわざと明るくふるまおうとしているようで、すこし不安も感じた。
だが考えてみれば、だれだってそういうときがあるんじゃないのかとも思う。
たまには、楽しくお酒を飲むのも悪くはないだろう。
なにか話したいことがあれば、聞いてあげるくらいのことはしてやる義理があるかなあ。
核心にふれることが、必ずしも重要ということではないのだ。
話して問題が解決するということではなくて、最後は自分で決断しなくてはならない。
それでも、話しているといつしかそれは自己との対話ともなっているのである。
ことばは、コミュニケーションの手段であるとともに思考の道具でもあるのだ。
声にだすということは、自分に問いかけてもみることにつながっていく。
沈思黙考なんていうが、じつはこころのなかでことばが飛び交っているのではないか。

染まる雲

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遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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