ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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尾道友愛山荘ものがたり(32)
 <第七話>色即是空 その二

「えっ、結論か。ぼくなりの結論は、こういうことなんや。
若さを讃えたり、古いものを大切にしたり、新しい技術を目指す、往古の技を復活させる。
それぞれが、それぞれに意味をもつのと違うんかな、と思うんや。
それよりも、そうした判断を自分が下しているのかどうか、そんなことが気になるな。
身近な例で云えばやで、どこそこのラーメンがうまいと聞いたら、どっと列をなす。
ベストセラーだと聞けば、ただ闇雲に買い求めるために走りだす。
ただ評判だけで、さも味がいいとか、すばらしいように思いこんでしまっている。
そんなふうになっていないか自問自答せよ、と言いたいわけやな。
評価することも批判することもいいけど、それが自分の中から来たものか、ということ。
流されずに生きていきたいものです、なんて思うわけやな」
「ふーん、そうすると最初の若さを好むということとは、どういう関係になるの」
「憶えていたんかいな。それなら、ひとことコメントしとかなあかんな。
すべてはおおいなる幻想から発しているということや。
はじめに云ったように、新しい、若いが価値があるという混乱からすべてが始まっている。
そやから、いま言うたように、そうじゃないんだよということが分かれば考えも変る」
「そうかな、幻想にしてもその根は深いんじゃないかしら。
若い女の子がいい、という価値観は根が張って強固にみえるわよ」
 三平もメグに同調してこういう始末だ。
「そりゃあ、同じ美人なら、若い方がいいに決まってますよ」

 じつは、それぞれが同じような意味でいっているようで、微妙な違いがあるのだ。
若いとは、一体何歳からを指すのだろうか。まさか、一歳ということはないのだろう。
では、十五歳、十八歳、二十歳、どうなんだ。結論は出まい。
 逆にもう若くはないとは、一体幾つになればそう云えるのだ。
二十五歳を過ぎれば、もう年寄りだというティーンエイジャーがいるかと思えば、
五十過ぎからではないですか、といった意見もちらほらとある。
なんのことはない、結論はそれぞれの頭の中にあるということだ。
 ああ、世代の断絶という言葉が頭のなかで閃いた。
同じ言葉を使いながらも、世代によってその言葉の意味するものは違う。
年配者はときとしてそのことに気づかないままに苛立ちを覚えるのである。
そしてつい、こんな言葉を吐いてしまう。
「いまどきの若い者は、なっとらん」
このフレーズは過去から現在へと受け継がれ、いつの時代にも呟かれるのである。
 世代の断絶とは、世代間における言葉の意味内包の変遷によりもたらされた。
カルチャーギャップと同じ様相をみせているのである。
断絶を埋めるためには相手の文化を理解していなくてはならないのである。
もちろん文化とは生活習慣様式一般を指し示すのであり、文明とは一線を画している。
知るとはものごとの始まりを意味し、入口であってゴールではない。
 世代間の間隙は時代とともに広く深くなってきているようだった。
十年一昔と云われたものが、比べるべくもなくいまでは確実に短くなっている。
以前は同世代と云われた集団がいまでは相互理解不能な世代へと分化している。

「ぼくだって、そうは思うけど、現実問題として同じ人というのはいないんじゃないかな。
仮に、一卵性双生児であっても、微妙に違うものだと思うな。
ということは、さっきの三平くんの意見は現実的ではないということだな」
「そんなこと分かってますよ。でも、若い方がいいでしょ」
「若すぎると、問題やけどな。まあ、世間ではそれが大勢でしょうな」
「そうだけど、いつか年老いてしまうんですね」
「若さって、永遠に続きそうな錯覚をともなうものですよね」
「そう、傲岸不遜な側面をみせているな」
「だからこそ、若さを謳歌しなくちゃ」
「若さは刹那主義的な行動を誘導する。
これはその若さゆえの性質からくるものなんだ」
「どんな性質なんです?」
「不死の感覚というのかな。自分という存在が永遠に続く…」
「そうですよね、死なんて考えたことなかったな」
「そうだろ、なんだか他人の上には起こっても自分は関係ないっていう感覚」
「だから、なんだってできると思うし恐れを知らないんだ」
「こういうふうに論理は繋がっているのではないでしょうか」
「そんな気がしてきましたわ」
「でも、いつか、だれもいなくなる」
「うーん、ミステリみたいだけど、そうなんですよね」
「人間の死亡率は100パーセントだからね」
「冷徹な事実です」
「だからこそ、精いっぱい生きなくては…」

4867尾道大橋
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遠くに眺めるのも好きです。
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