ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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尾道友愛山荘ものがたり(33)
 <第七話>色即是空 その三

 線路際の道だから、ときに山陽本線の列車が走り過ぎてゆく。
ゴォーという音ともに風が渦巻いてぼくたちのからだにまとわりつく。
いつまでもレール上を走る列車の音だけが耳の底に残っていた。
 国道を渡って海沿いの道へくると、潮のにおいが強くなる。
瀬戸内のおだやかな陽光が海面に反射してまぶしい。
薄目で見る光景はまたちがった土地に来たような錯覚をもたらす。
 堤防の上をバランスをとって歩きながら、流行のメロディを口ずさんでみる。
だけど、いつだってどこにいたって考えることは同じことでしかない。
陽だまりにいる猫がからだを伸ばしてニャーと鳴いた。目を細めて前足をなめている。
造船所からはハンマーの金属音がときおり風にのってきこえてくる。
 たがいに肩を組んで飛行編隊のように道路をかけた。
右に左に蛇行しながら車にクラクションを鳴らされても気にしない。
どこかへ飛んでいけるのかも、とふと考えたりもしたのだ。
 そんなときなんだか腹の底からにがい気持ちが湧きあがってくる。
舌の先にまでにがさが残っているようで、思わずぺっぺっとつばを吐いた。
コンクリートの地面に唾液はアメーバのようにはりついている。
なにか自分からでてきたものではないような、異性物がそこにいるような気がした。
陽射しにたちまちにして水分を奪われたアメーバたちは干からびた。
ぼくたちも同じように命を終えるのだろう。
宇宙の時間のなかではなにもなかったと同じことだ。
だからどう生きたって同じなんだということにはならないだろう。
だからと、どう生きたってとはまったく関係がない。
どうせと、しょうがないとにも繋がりはないのだ。
 いつのまにか歓楽街の路地に迷いこんでいた。
昼間にみるその場所はなんだか疲れたような表情をしている。
化粧をおとしたおばさんが、友だちのお母さんだったような感じだ。
精一杯にこやかな顔をしてくれるのだが、まともに目をあわすことができない。
生きるに常道なんかないんだ、そう呟いていた友を思いだした。
 やさしそうなお母さんがいいに決まってるけど、それはドラマだけだ。
現実はいつももっと滑稽で、お母さんの作る料理は特別においしくもない。
手早く作られたり、どこかで買ってきたフライものだったりもした。
それが不満というのじゃなくて、それを苦にしているお母さんを見たくなかった。
だから余計においしいとはしゃいで、かえって悲しませもしたかもしれない。

4887海沿いの道

 いつから母は、なんて人前で言うようになったのだろうか。
「おかあちゃん」と言うのが恥ずかしく思った中学生の頃がなつかしい。
ヒトの原型は女性だ、と生物学の本に書かれていたのを読んで妙に納得した。
母は強しとの源はそこに発しているのである。
女のできそこないが男なのだ。いや、女になれなかったものが男になるのである。
世のなかでは反対のことが言われたりするが、男の虚勢でしかない。
 マザコン男などと優柔不断な男の悪口につかわれたりする。
だが、子どもが母親をこころのよりどころとしてなにがいけないのか。
母は生みだすもの、生命の母胎なのだから、そういう感情をいだくのはしかたがない。
それよりも、もっとポジティブに生きればどうなのか。
悪口は悪口をしか呼び寄せないし、悪循環に陥るだけなんだ。
あなたも母になればいいではないか、へなちょこな男のマネをすることはない。
などといってみたところで、世のなかの流れは変わらないのだろう。
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遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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