ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
04 | 2017/05 | 06
S M T W T F S
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

尾道友愛山荘ものがたり(34)
 <第七話>色即是空 その四

 ふたたびユースへともどる山道をのぼってゆく。
背後には海がひろがっているであろうことはわかるのだが、ふりむきたくない気分だった。
ただひたすらに足元をみつめて、なにも考えまい、ただのぼるんだと思った。
みんな寡黙な旅人になって、ときおりうっとか、ふうとか、息を吐く音がきこえてくる。
照りつける陽ざしを背中にうけて、ゆっくりと歩いていくしかない。
なんのためにとか、なにゆえにとか、ええい関係ないだろうと叫びたい。
しかしそんな状態はいつまでも続くはずもなく、あっけなくのぼりきってしまう。
さあのぼりきったぞ、というところでみんなはふたたび笑顔をとりもどす。
城のわきをとおり、裏手の道をころころとくだってゆけば、もう着いたもおなじだ。
この道をなんど往復したであろうか。そう考えると若さってすごいとも思うのだ。
いつのまにか尾道の町は夕景のなかにうもれかけていた。
ときは夏であり若者たちが多くいれば、凝集された人生模様が織りなされる。

4868向島を望む

 夜空に映しだされる星座をながめるともなく、コンクリートの壁にもたれていた。
そこかしこで鳴く虫たちの声が急にきこえなくなった。
だれがきたのだろうと思ってふりむくと、そこにメグが立っていた。
すこしうなずくと、横にきておなじように空をみあげながら座りこんだ。
「なんだか、むなしい気分なんです」
「どうしたんや、深刻な顔して」
「こんなに楽しい時間をすごしているのに、つい帰るときのことばかり考えてしまって…」
「それでちょっとセンチメンタルになってるのか」
「会わなかったら、よかったのかなあ」
「そしたら、別れもないって思っているのかな」
「うん」
「でも、会わなかったら楽しい時間もないわけや」
「そうですよね、別れのない出会いってないんですかね」
「会うは別れの始めなりけり、では嫌なんや」
「だって、つらいじゃないですか」
「つらいけど、しかたがないのかなあ」
「ムッシュも経験あります?」
「あるなあ、別れというより、ふられた結果という感じかな」
「うそばっかり言って」
「そうやないんや、ぼくでもふる立場にあったこともある。
でもなあ、そんなとき相手のこと、なにも考えてえへんかった。
というより考えたからってどうしたらいい。つきあい続けるか、それこそひどくないか。」
「でも、つきあい続けているうちに気が変わるってこともあるでしょ」
「それは可能性としてはあるわな。でも自分の性格からいってそれはない、と思う。
都合のいいように相手をあしらってしまうんじゃないか、そう考えてしまうわな」
「そうなんですか。なんだかかわいそう」
「そう、よく言われるわ。欠陥人間みたいやな」
「そうじゃないですけど」
「いやいや、いろいろと考えたらそうかもしれんと自分でも納得してるで。
でもそれを嘆いてもしかたがない、ぐらいはわかっているつもりや」
「そうですよね、嘆く自分をみて、自分自身を慰め、自己満足してる図がみえますもの」
「おっメグ、なかなかええこというやないか」
「あたしだって、無駄には生きてないですよ」
「そうそう、その調子や」
「ムッシュと話していて、さっきまでの自分がこどもっぽかったと思えてきました」
「そうやろ、対話って不思議なもんやで。
ひとりのときは悩んでいたのに、話しているとつぎつぎに考えがうかんでくる。
そうだったなと思ったり、そうじゃないだろうと批判したり、考える楽しさに気づくもんなんや」
「そうですよね、話す楽しさを忘れてました」
「ただな、そのことについては考えてますよ、ってよくいうやろ。
けどなあ、たいていは考えてるんじゃない悩んでいるだけや、って指摘もあるから。
考えるとはどういうことかを考えていないとあかんなあ」
「人間ですもの、悩むときもありますよね」
「それはそうや人生は短いようで長い。悩んで悩んで考えたらええんや」

 外灯のあかりにぼんやりと照らされた木立では、いつまでも蝉が鳴いている。
白夜に生きるものたちのように眠ることも忘れてしまったかのようだった。
ウォーンウォーンと近づいてくるような遠ざかるような音が耳のなかでしばらく渦まいていた。
スポンサーサイト

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
→http://moucheokuno.blog26.fc2.com/tb.php/1370-f49a962e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

ムッシュ

Author:ムッシュ
島を旅するときが楽しいですね。
遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カレンダー

04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

カテゴリー