ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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なんのための読書
本を読むとなにかいいことがありますか、というような質問をいただくことがある。出版社、書店な
どには確実に利益がもたらされますが、と答えても満足されないでしょう。さあて、なにかの役にた
つということもあれば、かえって害になることもあるんじゃないですか。それはさておき、読書をす
ることでそこからなにを得たいのかという動機によるのではないですか。読書をすることじたいは手
段ですから、読書の行為自体がなにかをもたらすということはない。だからどんな本を読めばいいの
ですか、ということなのかとも思ったりしますがね。これも好みの問題があって、ある人にはおもし
ろくても、別の人にはさっぱりということもある。女性の好みなら、アイドル好き、グラマー好み、
ときに熟女好きという方もおられるようですから。読書必勝法的な本があるかもしれませんが、読ん
で納得かどうかは保証できません。

8661ダリア

「氷姫」 カミラ・レックバリ 原邦史朗訳 集英社文庫 ★★★★
スウェーデンといえば高福祉、だから高負担の国でだというくらいの知識しかなかった。しかし、か
の国のミステリを読めばそう単純ではないということがわかってくる。それはどこの地方であれ国で
あれおなじことなのだが、そうはなかなか思えなかったりする。文化人類学という学問があるが、そ
れは先進国からみた後進国の文化についての認識ようなきらいがある。本来はそういうことではなく、
その地その国の文化のありようの理解を深めるためのものだ。ふだんのありふれた人々が暮らす社会
におこるいろんな事件にそれが垣間見えてくる。
『冬、土が凍って霜が降りてくるときどのように埋葬するのかなど、両親の葬式までは、一度も考え
たことがなかった。今では土が暖められ、掘り起こされるということを知っている。そのようにして、
埋められる棺の数に十分な大きさの区画が掘り起こされるのだ。』
日本人なら人が死ねば火葬場へというのが常識だが、日本でもつい先ごろまでは土葬が主だった。そ
んなことを忘れて生きているのが人というものかもしれない、とミステリを読みながら思う。さて、
トーレの娘エリカの子ども時代の仲良しだったアレクス・ヴィークネルの死体発見から物語りはじま
る。浴槽に氷のつつまれるようにして、唇は鮮やかな紫色に染まっているように死んでいた。事件は
もちろん意外な方向へと移りゆきながらいろんな人々の生活を浮きあがらせながらすすんでいく。ス
ウェーデンのミステリ界の実力を実感できる佳作であると思う。

「女のからだ フェミニズム以後」 荻野美穂 岩波新書 ★★★
ひとつの時代を席巻したフェミニズム運動もいろんな面がもちろんあったのである。
『今日、私たちの多く――とくに若い世代は、女が男と対等に高等教育を受けてキャリアに進出した
り、結婚を前提にしなくても男と性的関係を持ったり、子どもを産むか産まないか、産むとしたらい
つ産むかを自分で決めたりすることは当然だと考えていて、女が個人として自分が望むように生きた
いと願うことに対してさほど違和感を覚えない。それはフェミニズムの時代がもたらした変化の産物
であって、私たちはそのことを意識するしないにかかわらず、フェミニズムによる意識変革の恩恵を
受けているのだと言える。』
ある時代においては、子どもを産むか産まないかは女が決めるのだと声高にさけばれもした。そう叫
ばずにはおられない社会の状況でもあったのだが、それだけで問題は解決するはずもない。社会問題
はその社会によるのだから、時代が変われば問題も様相も変わってくるのは当然である。
『不妊となる原因にはさまざまなものがあるが、年齢とともに卵子の変化によって女性の妊娠能力が
低下することもその一つとされている。個人差はあるが、一般的には三〇代半ば以降、妊娠率は低下
してゆき、妊娠した場合でも流産率が上昇する。四〇代で自然妊娠する人もいる一方で、ある研究に
よれば四五歳では八七%の人が不妊だとされている。月経があること=いつでも生殖が可能、ではな
いのである。』
さてこの問題について現代のフェミニストはどう考えるどう答えるのか、なかなか悩ましい。

「木綿口伝」 福井貞子 法政大学出版会 ★★★★
『古くから、山陰地方の産物は「木綿と鉄」と言われてきた。』
こんなこともいまでは、そんなこともあったのかというような認識になっている。
『木綿絣は、江戸時代末期から明治にかけて全盛をきわめ、その作品は世界に類を見ない高度の秀作
を生んだが、それらの作者は貧しい庶民の女性たちであった。』
いまでは化繊全盛の時代になってしまっているが、ほんのすこし前までは普段着のものといえば木綿
が主流だったのだが、それではどのような経路で日本に木綿がひろまっていったのだろうか。
『木綿が普及し始めた江戸時代中期の庶民の願いは、「早くモンメンが着せたい」ということだった。
木綿を「モンメン」「晴着」と呼称して珍重した。西日本一帯の温暖な地方は綿作に適していたが、
海岸の丘陵地は栽培が不可能だった。したがって、遅くまで麻や紙布を着用し、木綿は外出着でもあ
った。』
その木綿だが、いろいろとときの政府による規制もあったようだ。
『江戸時代の士農工商の身分差別は、庶民の衣服の色に至るまで幕府は干渉し、質素を第一とした。
材質は麻や木綿に限定し、華美な染色を禁じ、紺一色に規制していた。それは下着から上着、蒲団に
至るまですべて藍染めであった。したがって、木綿と藍との関係は深く、相互に生かされて、藍は木
綿の発展と共に庶民の染料作物として進展した。』
木綿と紺(藍)の関係は深いようだ。
『濃紺に白い絣紋様は、藍と木綿の相互補完関係であり、すばらしい知恵を持っていたのだと思う。
特に小麦色の日本人の顔と紺色とは補色関係であり、一段と引き立たせ、知的に見せる。』
木綿絣にまつわる女工の哀しい話も多いのだが、当時の生活のようすがしのばれるのである。
本書の巻末には、昭和五九年一二月一日初版第一刷とある。
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遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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