ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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本棚のほこり①
すこしは本の整理をしないといけないなと思い、このところ休みの日には本棚掃除をしている。棚か
ら出して掃除機をかけながら、これはいつ買った本だろうかなどとながめてみる。昔の本は半透明の
薄紙でおおわれていたりする。箱にはいったりしているのだが、その薄紙(グラシン紙というらしい
)が日焼けしたり、ところどころ破れたりしているのではずして捨てる。紙魚のついているのもけっ
こうある。それもふくめて懐かしい気がする。これはたぶん大学生のころに買ったものだと思うが、
奥付を見てみる。「眼と精神」メルロ=ポンティ著、みすず書房刊、1966年11月30日第1刷
発行とある。この本は1973年11月20日第10刷。当時、けっこう高い本というイメージだっ
たなあ。定価をみてみると1800円となっていた。もちろん消費税が導入されるずいぶん前のこと。
ネットで調べてみたら絶版にはなっていなくて、定価5616円(本体5200円)である。

8804眼と精神

「生命と記憶のパラドクス」 福岡伸一 文藝春秋 ★★★
週刊文春に連載されたコラムだそうだが、科学的な考え方ってなんだろうと考えるのである。
『大規模な疫学調査によって隠された関係が発見されることがある。一方、疫学的なデータを解釈す
る際、気をつけなければいけないこともある。それは疫学によって見いだされる関係は、相関関係で
あって因果関係ではないということ。ある事象Aが、もうひとつの事象Bに付随しているのは、あく
までそのようにみえる(=相関関係)だけであって、必ずしも、AがBの引き金になっている(=因
果関係)ということを意味しているのではない、ということである。』
これは、テレビのコマーシャルなんかではいつも感じるし、コメンテーターなどの発言にも多い。
『さらに、AとBが相関関係にあるのは、AがBの引き金になっているのではなく、その逆だからと
いうこともありうる。体重の増減がその後の寿命に影響するのではなく、むしろ病気になったから体
重が減少し(または増加し)、その病気によって亡くなっている可能性もある。』
人間関係のトラブルなどにもこういったことがあるんじゃないか、と思うのだ。狡猾な輩は、そこを
見抜いてうまく順序を入れ替えた説明をしたりするからだまされたりする。こう考えると、科学的な
思考のトレーニングって役に立つのでは、と思わないでもない(笑)。

「説教師」 カミラ・レックバリ 原邦史朗訳 集英社文庫 ★★★★
夏の朝、フィエルバッカの「国王の洞窟」で若い女性の全裸死体がみつかる。そのそばには白骨化し
たさらなる死体がふたつあった。これはどういう事件なのだろうか。作家エリカとターヌムスヘーデ
警察署のマーティン・ヘードストルム刑事のコンビ第二作目になる。事件は二十四年前に起きていた
事件とどうやら関係がありそうだとわかってきた。しかしそう簡単に謎はとけない。そのはがゆさ、
もどかしさがつのる。
『マーティンが見たなにかが、彼の後頭部でもぞもぞしていた。彼は必死に、キャンプ場に行って見
たいくつかの印象を探ってみたが、あいかわらず当惑したままだった。彼が見たなにかは、心に残っ
ていいはずだった。』
理詰めで考えることでわかるとはならないなにかがあるようなのだ。しかし徐々につながりがみえて
くるのだった。
ミステリは謎解きもそうだが、なにげない文章にその地方のあたりまえの文化についての言及があっ
たりして、これもまた興味深いのである。
『スープが運ばれ、一口食べただけでマーティンは、ピーアの「この世のものじゃない」という褒め
ことばに賛同したかった。リンドグレーンが書いた『ロンエバリアのエーミール』を読んでいること
をひたすら願った。「ズーズーすすらねえと、だめだべ。そうでねえと、スープだって分かんねえ…』
誰が言ったのだろうか、スープは音をたてて食べてはいけないと。それにストレスを感じるひとびと
は確実にその地にもいたのだ、ということを知ってなんとなくほっとするのである。

「色のない島へ」 オリヴァー・サックス 大庭紀雄監訳 春日井晶子訳 早川書房 ★★★
地球上には「全色盲」とよばれる遺伝病の患者が多く集まっている地域が二か所ある。「全色盲」と
は、一般的な色盲や色弱こことではなくて、際立った色覚異常と弱視をきたす、一〇万人に一人程度
しかみられない遺伝病である。そのうちのひとつが本書の舞台となったミクロネシアのピンゲラップ
島である。なお、この病気は劣性の遺伝病である。ということは両親の片側だけがこの遺伝子をもっ
ていても病気は発現しない。だから地理的に隔離された離島や文化的に閉鎖された社会では、保因者
同士が結婚する確率が高くなり発病する確率が高くなるということだ。しかし、この病気をもった子
どもたちは頭脳も、行動も活発なのである。島には彼らのことを「マスクン(現地語で“見ない”と
いう意味、全色盲のこと)」という言葉まであるほどだ。だが彼らは不幸なのか。
『暗くなるにつれ、クヌートや島の全四色盲の人々は動き易くなるようだった。マスクンの人たちに
とっては目が暗順応する日没、日の出、そして月明かりの夜のほうが行動しやすいことはこの島では
誰もが知っていて、彼らの多くは夜釣りの漁師として働いている。そして夜釣りにかけては全色盲の
人たちは極めて優れていて、水の中の魚の動きや、魚が跳ねるときにひれに反射するわずかな光まで、
たぶん誰よりもよく見えているようだった。』
色がわからないというか、生まれつき全色盲なら色の意味がわからない。同様にわたしたちも彼らが
見ている無彩色の世界(きっと私たちよりも変化に富む)が理解できないだろう。そういうことなの
だろう。私が感じている色が他の人びととまったく同じかというと、それはわからないというしかな
いのである。色ひとつとってもそうであるから、なかなか世界は理解するのはむずかしい。というし
かないのだろう。
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島を旅するときが楽しいですね。
遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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