ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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本棚のほこり③
そのころはみんな金がなかった。それでも本は読みたい。読んだ本は手元におきたい。高価な本は買
えない。だから本といえば、文庫や新書のことだった。文庫なら岩波、角川、新潮ぐらいしかなかっ
たと思う。新書は岩波、中公新書、講談社現代新書だったかなあ。岩波の科学ものはレベルが高い。
有名な学者の講演会の記録とか、書き下ろしなんかもあって読んで興奮した(変な意味じゃなく)。
いまでも憶えているのは、「人間はどこまで動物か」アドルフ・ポルトマン著。理系の学生なら必読
書だったと思う。もちろん文系であろうとも。彼のいう「生理的早産説」は衝撃的だった。あかんぼ
うのいろんな能力を考えると、ヒトは一年はやく産まれてしまっているというのだ。馬や鹿はうまれ
てすぐ自力で歩きまわれるのに、人間のあかんぼうはまったく無防備の状態で産まれてくる。では、
なぜそうなっていると考えられるのか。というような論の展開にわくわくさせられたものだった。

N5242富士山2014

「男は邪魔!「性差」をめぐる探究」 高橋秀実 光文社新書 ★★★★
世のなかには基本的に男と女しかいない。この性差をもういちど考えてみたのが本書である。しかし、
高橋氏の著作にはいつも笑わせてもらい、最後にはほんのちょっぴり哀しさも感じるのである。男と
女、この永遠のテーマ(だって男と女しかいない)にどうメスを入れるのか。だけど、ひさびさにこ
ころの底から笑わせていただきました。高橋氏おそるべき、というべきか。
『早い話、男はひとりよがりなのだ。ひとりよがりがひとりよがりを競るように社会をつくってきた
からいつまでも問題が解決しない。
 だから日本は埒が明かないのだ。
 全部、男が悪いのだ。
 そうだよね、と妻に話しかけると、彼女がこう言った。
「それって、いつも私が言ってることじゃないの」
 私は思わず「えっ?」と驚いた。
「自分の考えだと思っていたの?」
 ――あれっ、そうだっけ?
 私は首を傾げ、しばらく宙を仰ぎみた。言われてみれば確かにそんな気がする。常日頃、妻は「あ
なたは……」と怒り始め、途中で「大体、男っていうのは……」と主語が切り替わる。前半部分はう
なずきながら聞き流しているが、後半部分が知らずのうちに刷り込まれてしまったのだろうか。後半
部分は寝てしまうこともしばしばあるので、寝ているうちに睡眠学習していたということか。
「前々からずーっと言ってる。あなたは私の話を聞いていないのよ」
 ――いや、それは違う。
 私は反論した。彼女の言うことが正しいとするなら、私は聞いているはずである。聞いているから
こそ自分の考えのように思えたりするのだ。
「そうやってなんでも遠回りする。単純なことをわざわざ複雑にして言う。複雑化して問題化するの
よ、男は」』
いきなりこうきたか、いつも言われているようで頭がいたい、ような気がする(笑)。男と女といえ
ば、高橋氏はボーヴォワールの勘違いという節でこんなインタビューを書いている。
『――「男なんだから、○○しなさい」とか言ったりしませんでした?
 私はあらためて岸本さんにたずねた。バカといえども、バカはバカなりのジェンダー教育というも
のがあるだろうと思ったのである。
「言いましたね。そうそう、言う」
 彼女が微笑む。
 ――例えば?
「男の子は泣くもんじゃない、男の子はそんなことで泣かないの、とか」
 ――男は泣くべきではないということですね。
 これはフェミニズムでよくいわれる「男らしさ」のひとつだ。
「いや、そうじゃないんです。ただ泣きやませるためについ言っちゃうだけなんです」
 ――女の子だったら?
「『いつまでも泣いていちゃダメ』ですね。女の子なんだから泣くなとは言いませんね」
 男女に対して別の言い方をするので、ジェンダーといえばジェンダーである。しかし考えてみれば、
男の子には泣きやむ理由が与えられるが、女の子はただ泣くなと強要される。彼女たちは「なんで?」
と訊きたくなるだろうが、それをじっと噛みしめなくてはいけないのだ。つまり、泣いてはいけない
のが「男らしさ」で、泣くことが許されるのが「女らしさ」などではなく、行為について内省を迫ら
れるのが女の子で、責任を性別に転嫁できるのが男の子ということなのではないだろうか。』
さすがするどい高橋氏である。女同士のあいだでももちろん対立はあるのである。
『――へりくだる女?
「『自分は何もできませんから』とか言う女。自信なさげに振舞う女。あるいは萎縮した態度を見せ
る女。控えめがいいと思っているのかもしれないけれど、開き直っているのと同じでしょ。そういう
女に限って、こっちがアドバイスすると『そうじゃない』とか言ったりする。本当の狙いは別の所に
あるわけ。実は強欲なのよ。でもひとりじゃできないから、人に依存する」
 カエルもへりくだっているようでいきなりジャンプしたりする。「へりくだる」の語源は「縁へ下
る」ともいわれるくらいで、カエルは縁にへばりついており、どこに向かってジャンプするのか読め
ない気味悪さがある。
 ――かしずく女はいいわけ?
 念のために確認すると、彼女は即答した。
「『かしずく』というのは、もともと頭を下げるっていう意味でしょ。それは敬意を払うということ。
感謝の気持ちの表れなんだと思う」
 ――しかし、かしずく女は家父長制の象徴ではないかと……。
 私が言いかけると彼女は遮った。
「家父長制は表向きの話でしょ。いってみれば机上の空論だから」
 いわゆる「家父長制」や「男女平等」などは理念であって生理的ではないようである。いずれにし
ても、生理的に嫌いなのはほとんど女性のようなのだ。
「そういう女がテリトリーを侵すのよ」
 ――テリトリー?
「ウイルスみたいに蔓延している。顔に泥を塗られる感じ」
 縄張り争いということか。女の敵は女ということか。
 ――それで、男は……。
 私が言いかけると彼女は鼻で笑った。
「もともと男は蚊帳の外。はっきり言ってどうでもいいのよ」
 男は圏外ということか。生理的には、男はどうでもいい存在のようなのである。』
男は問題外なのである。そして結論(?)。
『男に足りないのは妄想と共感。
 昔から男は共感できないバカなのである。妄想して共感する。共感するために妄想する。女性たち
は共感するためにフェミニズムという妄想を生み出したのかもしれず、私はそこに論理的なねじれで
はなく、「哀れ」を感じ取るべきだった。』
是非ご一読を、というしかありません。

「五番目の女」 上 下 ヘニング・マンケル 柳沢由実子訳 創元社文庫 ★★★★
スウェーデンを代表するミステリ作家、ヘニング・マンケルのヴァランダー・シリーズの第六作。彼
はこのシリーズでスウェーデン社会がかかえる問題を題材にしている。小さな港町イースタで花屋に
不審者が侵入したがなにも盗まれていないという事件がおこった。その花屋の主人は行方がつかめな
い。続いて、元自動車販売業者の裕福な老人が、竹槍が仕掛けられた濠で刺殺されているのが発見さ
れた。この二件は別件かと思われたが、やがて事件に共通の特徴が見つかった。事件は連続殺人の様
相をおびてくるのだった。どういう犯人なのだろうか、ヴァランダーは考える。
『ホルゲ・エリクソンが串刺しにされた竹槍の仕掛け罠を思い出した。ユスタ・ルーンフェルトがく
くりつけられていた木。そこで首を絞められて死んでいたのだ。そしてこんどは、生きたまま袋に詰
められて湖に投げ捨てられ、溺れ死んだ男だ。
 動機は復讐にちがいない。ほかの動機はあり得ない。だが、犯行は完全に常軌を逸している。犯人
はなにに復讐しようとしているのか? なにが背景にあるのか? ただ殺すだけでは済まず、殺され
る者たちにこれから起きようとしていることを認識させる執拗さ。』
この事件とは別に、地域の人々にあいだで地域自警団決起のニュースが伝えられる。彼らが勝手に動
きだせば、社会の秩序はどうなってしまうのか、という問題でも頭を悩ませることになる。殺人事件
といえども地域社会の動きとはまったく無関係ということはないのである。スウェーデンだけでなく
デンマーク、ドイツやイタリアでもたびたび問題になってもいるのだ。でこの「五番目の女」とはだ
れのことなのか。なにを意味するのか。それは本書を読めばおいおいわかってくるのである。

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遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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