ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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尾道友愛山荘ものがたり(37)
 <第八話>風神雷神 その二

「なにしてるの、ムッシュ」
「水滴が落ちていくのを見ているだけや」
「よく降っているわね」
「台風やからな、しかたがないわ」
「どこにも行けないわね」
「どこか行きたいところあるんか」
「べつに、ないけど」

「ヒロミちゃんなあ、毎日楽しいかあ」
「急にどうしたのよ」
「なんかなあ、嫌になってきた」
「なにが?」
「なにもかもや」
「そうなの、わたしも楽しくばかりはないわね」
「つらいこと、あるんかあ」
「そうじゃないけど、でもねえ、ときおりどこかへ行きたくなるのよ」
「女のひとでもそういうことがあるんか…」
「そうよ、放浪って男だけのものじゃないわよ」
「でも、どこかへ行ったらそれですむ、というものでもないやろ」
「そこよねえ、またべつの寂しさもあるものね」
「だったら、どこへ行っても解決せえへんちゅうことや。
そやけど、それやったらどこにも行かんでええ、ということにはならへんねんなあ」
「そうよ、なにもしないでムッシュのように考えてばかりいては駄目」
と笑いながら軽くまばたきをした。
なんとなくすこし気が楽になったような気がした。

N6292雨だれ

「この世のなかには、男と女がいるやろ」
「そりゃあ、あたりまえのことよね」
「それがなあ、なんというのか面倒臭いんやというか、嫌になる元凶やな」
「えっ、なに、また失恋でもしたの」
「ハッハッハ、またはないやろ」
「だって、ムッシュをみてたらすぐわかるわ。単純なんだもの、あきれるぐらい」
「そうかなあ、これでポーカーフェイスだと思っていたんやけど」
「いいじゃないの、正直なんだから、フッフッフ」
「あのなあ、失恋はまだしてません」
「いつするの?」
「いつって、だれが期限を決めて失恋するんや」
「冗談よ、でもムッシュといいサンペイちゃんといい、ほんとこりないわねえ」
「こりるとは、どいうこと?」
「いつもおんなじパターンで失恋してない?」
「う~ん、確かにサンペイはそういうところあるなあ」
「灯台もと暗し、よね」
「隣の芝生は青い、とか」
「それって、ちがうんじゃない」
「じゃあ、隣の客はよく柿食う客だ」
「まあ、もう元気になってきた。立ち直りが早いわね」
「それだけが取り柄です」
「で、また恋してふられるのね」
「ほっといてくれ、そういうヒロミちゃんはどうなんやねん」
「わたしは、…」
急にことばにつまったりして、どうしたんだろう。

「ごめん、訊いたりして悪かった…」
「ちょっとお芝居してみただけなのに、ほんとに純情ねえ」
「これやから女は嫌や」
「そうじゃないでしょ、もっと文脈を読まなくちゃ」
「どういうことかわからん」
「もう、いいわ。わたしはすごくもてるから心配いらないわよ」
「もてるって、そうなんか」
「知りたい?」
「いやあ、べつに知りたいわけじゃないけど…」
「ないけど、なによ、はっきり言いなさいよ」
「そんな怒らんでもええやないか」
「怒ってなんかいないじゃないの」
「はい、そうですね。知りたいです、拝聴したいです」
「最初からそう素直に言えばいいのよ」
「なんで、こんなことで怒られなあかんねん…」
「なにぶつぶつ言ってるの」
「すんません、ふー」

 そこからヒロミちゃんはこんな話をするのだった。
晴れ着の友人と連れだってどこかの神社へ初詣に行ったときのことだそうだ。
アメリカかどこか白人の外国人が写真を撮らせてくれというのだ。
わたしによお、だから着物姿の友人をすすめるんだけど、わたしが撮りたいんだって。
着物姿を撮りたいのではなく、わたしそのものを撮りたいってことでしょ。
これって、もてているっていっていいんじゃない、というのだ。
そういわれて、彼女をしげしげとながめてみる。

「ふーん、なるほど」
「なにがなるほどなのよ」
「ヒロミちゃんて、日本人離れしている」
「そうかなあ、そういわれると悪い気はしないわね」
「えっ、どういうこと」
「ほめてくれているんでしょ」
「ほめるというか、ただたんに印象を言うてるだけやけど」
「それがほめているってことなんじゃないの」
「日本人離れって、ほめことばになるのかなあ。
それやったら、日本人だということがマイナス評価になってる。自虐的的やなあ」
「そういわれればそうだけど、日本人離れはほめことばなのよ」
「ヒロミちゃんの場合はそうかもしれない」
「でしょ」
「なんだかギリシャ彫刻をみてるみたいな感じ、色も白いしね」
「ちょっとほめすぎなんじゃない、なんか魂胆あるかんじよね。
でも、やっぱりミロのビーナスってことよね。」
「というよりは、アグリッパかな」
「それってだれよ」
「ギリシャの勇猛な武将やんか、知らへんの」
「男じゃない、わたしが男勝りっていいたいの」
「そんなことないな、女らしいよな」
「もう遅い、ムッシュっていつもそうよね、失礼なひと」
「ではなくて、正直なひとではありませんか」
「そうよね、バカ正直で無神経の唐変木よ」

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遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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