ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
04 | 2017/05 | 06
S M T W T F S
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

尾道友愛山荘ものがたり(38)
 <第八話>風神雷神 その三

 なにを騒いでいるの、とサンペイがやってきた。
できましたよ「お好み焼き」が、と皿をさしだした。

「なに、これ?」
「なにって、お好み焼きですよ」
「えっ、ホットケーキかと思った」
「そうかなあ、粉多すぎたのかな…」
「なんだか、ずっしりしてる」
「いいじゃないの、おいしいかもしれないわ」
「そうやな、味だもんな」
「ちょっと、自信ないかもしれません」
「じゃあ食べようぜ」

 これがとてつもなく、粉っぽいのだ。
軽快なふわふわ感などはないし、じつに食べづらい。
だが、それを言ってはおしまいだから知らずしらずに顔がひきつってくる。

「どう、おいしい?」
「まあまあやな、はっはっは」
「やっぱり、おいしくないよね」
「そやなあ、粉いれすぎとちゃうか」
「全然分量がわからなくて…」
「ええやないか、これもまた経験ちゅうことで」
「そうよサンペイちゃん、頑張ったんだから」
「あまいなあヒロミちゃんは」
「どうしてよ、いけないの」
「そうやって甘やかすから成長せえへんのや」
「じゃあ、どうすればいいの」
「悪かった点を指摘しなきゃ、今後どうしたらいいかわからへんやろ」
「それなら、ムッシュがいえばいいじゃない」
「えっ、おれ。いやあ、困ったなあ」
「それみなさい、自分ばっかりいい子になろうという魂胆なんだから」

 そうかもしれない。いつも中途半端なんだおれって、と反省した。
食べてしまえばおなじじゃないかと言おうとしたが、やはり無理があると思いなおした。
もうすこしお腹がすいていれば食べられるかもしれん、などと思うが…。
そういった空気を察したのか。

「おれっちが全部食べるからいいよ」
「だめよ、サンペイちゃん。ムッシュも食べなさい」
「はいはい、食べますよ」
「もっと、おいしそうに食べなきゃだめよ」
「そうだよね、ヒロミちゃんが作ったと思って食べればいいんだよな」
「それてどういう意味なの?わたしが怖いってことかしら」
「いやあ、そういうことじゃないんやけど」
「失敗は成功のもと、っていうじゃない」
「つまりはまずいと認めているわけやな」
「いちいち人のあげ足とって、嫌な性格よね」
「まあまあ、おふたりさんとも喧嘩しないで、仲よく食べましょう」
「だから、おいしくないんだよ」
「おなかにはいれば、なんでもおなじですよ」
「って、サンペイが言うなよな」

6624お好み焼き

 そのあいだも外では激しく雨がふり、風がゴウゴウと渦巻いているようだった。

「なんだか寒いんだけど」
「雨に濡れたせいかなあ」
「おれはどうってことないけどな」
「ムッシュは関係ないでしょ」
「わたし、なんだかぞくぞくしてきちゃった」
「お風呂沸かしますよ、ちょっと待ってて」
「ごめんね、サンペイちゃん」
「やさしいなあサンペイは、だれに対しても」
「ひとこと余計です、いつものことだけど」
「ただあなたのやさしさがこわかった♪、なんてね」
「はいはい、わかりました」

 ヒロミちゃんはなんだか急速に元気がなくなっていった。
雨にぬれたりしたから風邪をひいてしまったのだろうか。
すこし不安になったのでおでこにそっと手をあてたら、とても熱かった。

 体温があがるというのは免疫反応だからとくに心配することではないという。
細菌やウイルスはおおむね熱に弱いからだ。
だから体温をあげてやっつけてしまおうというのである。
ということは無理に熱をさげるてはいけない、ということになるのだろうか。
とはいえ、苦しそうな表情をだまってみていられるはずもない。
そんなこんなで頭のなかは右往左往するばかりであった。

「風呂が沸いたよ、ヒロミちゃん入ったら」
「ありがとう、温まったらすこしはよくなるかもね」
「そうやなあ、ゆっくり入っといで」
「じゃあ、お先に」
「部屋に布団もしいておくからね」
「サンペイちゃん、ほんとにありがとう」
「ええ場面やなあ」
「ムッシュ、ちゃかさないでください」
「おう、悪かった」

 けだるそうにしながらもヒロミちゃんはそっと席をたった。
彼女がいなくなると、なんだかそこだけぽっかりと空間ができたように感じた。
ひとりでは、盛りあがるもなにもない。ふたりだと、なんだか気づまりのこともある。
三人だと三すくみということもあるが、鼎は三本でしっかりと地につくのだ。
と述べてみたところで雰囲気はかわらず、男どうし顔を見あわせて、なんとなく溜め息をつくのだった。
空気の成分が急激に変化したようで、妙に息苦しくも感じられた。
外ではあいかわらず強く雨が降るのだが、部屋のなかは逆に静かになっていった。

スポンサーサイト

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
→http://moucheokuno.blog26.fc2.com/tb.php/1427-59b56059
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

ムッシュ

Author:ムッシュ
島を旅するときが楽しいですね。
遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カレンダー

04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

カテゴリー