ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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尾道友愛山荘ものがたり(39)
 <第八話>風神雷神 その四

 手もちぶさたなので、いつものことながら酒でものもうぜ。
「サンペイちゃん、焼酎でも飲まへんか」
「そうですね、すこしあったまるものがいいですよね」
「そうなると、お湯割りだな」
「お湯をわかしてポットもってきます」
「悪いな、つまみかなんかないかなあ」
「夕飯のおかずがすこし残ってますよ」
「おれもザックにスルメがあった気がするわ」

 さてと、準備もできたし、いっぱいやりますか。
というところにヒロミちゃんも風呂からあがってきた。
髪をふきながら、すこしすっきりとした顔をしているようだった。

「あらっ、わたしも飲みたい」
「いいけど、体調はだいじょうぶかいな」
「うーん、なんだか治ったみたい、ふふっ」
「なにがおかしいんや」
「だって、お酒の用意ができているのをみてそう言うのって調子よすぎるかなって思ったの」
「いいじゃないですか、人数がおおいほど楽しいですよ」
「そうそう、男同士よりも女性がいるほうが場がもりあがる、ちゅうもんや」
「あらっ、わたしも女のうちに入れてもらえるんでしょうか」
「そう皮肉ばかりいわんでもええやないか」
「そうね、お酒はたのしく、でしたわね」

「では、乾杯しようか」
「なにに乾杯するんですか、ムッシュ」
「そうよ、なにかいいこと言ってね」
「では、僭越ながら吾輩が乾杯の音頭をとらせていただきます。
ひとの世には女と男しかおりません。
たがいにいがみあうようなフェミニズムではなく、なかよく生きれるフェミニズムに乾杯!」
「そうよ、人間社会は女が中心なんだということを忘れないようにね」
「母性社会日本、バンザイ!」
「ほんとうにそう思っているの?」
「思ってますよ」
「そう、ではおひとついかが」
「これはこれは、恐縮至極にござりまする」
「ぐいっとまいれ、苦しゅうない」
「ははーありがたきしあわせ」
「なにやってるんですか、まだ飲んでもいないのに」
「こういうふうに人格を変えて、リラックスするんやがな」
「演技しないと飲めないんですか」
「なんか微妙に緊張感があるんやな」
「まさか、わらわがその因ではなかろうな」
「滅相もない、持病のようなものでござりまする」
「ならよいが、ご自愛めされい」
「あー、うっとうしい、ふつうにやりましょうよ」
「わかったわかった」
「そうよね、疲れるわよね」
「そうですよ、やめてください」

「じゃあ、お酒の効用とはなにか、なんてどうや」
「適度な飲酒は血行がよくなる、とかですか」
「そんなのおもしろくないわよ。それよりなにか失敗談があるでしょ、ねえムッシュ」
「そらないこともないというか、失敗の連続やがな」
「それそれ、それでいきましょう」
「サンペイ、おまえもあるやろ」
「うーん、記憶にないんですけどね、ほんとに」
「もしかして若年性アルツハイマー?」
「そんなわけないでしょ。忘れてしまいました、ということです」
「ああ、言いたくないということやな。しゃべればすっきりするのに。
ふるさとでおふくろさんが泣いているぞ、なあサンペイ自白して楽になったらどうだ」
「いつのまに刑事になったんですか、性質悪いです」
「もうなんでもいいわ、お酒にまつわる話なら」
「やっぱりムッシュからしてよ、最初なんだし」

4023玉の岩

「わかった、じゃあ話しましょうか」
「じつは他人から聞いた話なんですが…」
「それってたいてい自分のことですよね」
「それがそうじゃなくて、ミイちゃんから聞いた話です」
「それなら、分かるわ」
「ミイちゃんが知り合いの女性の部屋にお邪魔したときのこと。
たしか東京に住んでいるときの話だったと記憶しております。
友人宅にお邪魔しているとき、その友人に友だちから電話がかかってきた。
長くなりそうだと彼女も思ったらしく、ミイちゃんにこれでも飲んでいてってボトルを渡したんだって。
予想通り長話しになっていたようで、すこし経ってから『もう帰るよ』ってミイちゃんが言うと。
『だから、それを飲んでいてって…』と言いつつふりかえっておどろいた。
『あんた、それ全部飲んじゃったの』
と空になったウィスキーのビンを見て絶句。
ミイちゃんはそれまでウィスキーを飲んだことがなかったらしくて。
ふつうにジュースでも飲む要領で飲んでしまったんだって、まるまる一本。
それも水割りとかじゃなくて、氷をいれただけのロックで。
『帰る前にちょっとお手洗い貸してね』と言ったが。
トイレに行こうと立ちあがろうとすると、腰が抜けたようになっていて立ちあがれなかった。
しかたがないから、這ってトイレまで行ったのよ、とミイちゃんは笑っていた。
しかし、知らないということはおそろしいね。ハッハッハ」
「すごいわねえ、でも酔っぱらわなかったの」
「それが、すこし酔ったかな程度だったらしくて、でも腰が抜けたのには参ったって」
「さすがミイちゃんだよねえ」
「恐れ入谷の鬼子母神、ってね」

「こんどはムッシュの実話お願いね」
「それがねえ、とある友人にあったこんな話があるんだけど、聞く?」
「とある友人ねえ、なんか怪しいけどいいわねサンペイちゃん」
「いいですよ、とある友人の話」

 いつのまにかすこし雨風も弱くなってきたような気がした。
それでも外は闇の世界だし、この部屋だけが浮きあがっているような、隔離されたような。
若いときにはそういうふうに感じることがあって、すこしづつなにかの核心に近づいていくのだ。
そのなにかが分からないもどかしさが、青春期特有のものなのかどうかそれもわからない。

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遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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