ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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旅とミステリ
旅先で時間があまったときなど、ふらりと書店にはいることがあった。そんなにおおきな本屋じゃな
いのでたいした期待をいだいていたわけではない。狭い通路で左右をみながら本をさがす。列車のな
かで読むのだからミステリあたりが手頃かなと思ったりした。背表紙が見つけやすい赤だったので、
よくハヤカワミステリ文庫のものを買った。クリスティのポアロかミス・パープルのシリーズを読ん
だ。かならず書店のカバーをかけてもらった。カバーには地元の書店名が印刷されていた。オリジナ
ルがあったり大手の出版社のものであったりした。ときどきそのカバーをながめると、どこで買った
のかがわかり、そのときのことが思いだされたりする。博多であったり、土佐の中村であったりした。
ただそれだけでのことなのだが、なにかなつかしいような気分になれた。そのカバーもいまでははず
してしまったので、それもわからなくなってしまった。すこし残念な気がする。

N6325レインボー

「無知の壁」 養老孟司、アルボムッレ・スマナサーラ サンガ新書 ★★★★
養老先生はよく仏教のなかにたいていのことは書いてある、とおっしゃっていた。本書は初期仏教・
アルボムッレ・スマナサーラ長老との対話である。といって養老先生のほうが七つ年上なのであるが。
『多くの方が、ごく普通の常識としては、「思う」のが先であり、後から行動すると思っています。
たとえば、「喉がかわいたと思ったから水を飲む」と思っている。しかし、脳を測ってみると、「思
う」のは後です。皆さん方の脳が、まず水を飲むほうにはっきりと動き出し、半秒くらい経ってから
「水を飲みたい」という意識が起こります。これは当たり前のことで、意識というのは脳から出てき
ます。意識のほうが行為よりややこしい働きですから、脳の行為に遅れて意識がでるわけです。根本
的に、それが意識の限界です。
 ですから、多くの方は自分の意図で何かをしていると思っていますが、必ずしもそうではありませ
ん。この水を飲む例でいえば、脳が勝手に、まず水を飲むほうに向かって動き出しているわけですか
ら、我々が意識できることは、たぶん止めることだけなんですね。
 止めることはたぶんできるのです。そう考えるとおもしろいことに、「道徳律」というのは、必ず
「○○してはいけない」という形になっています。』(養老)
古くから科学的な裏付けはなくともわかっていた、ということなのだろうか。
『仏教は、「死という現実は智慧が現れるために欠かせないキーワードである」と考えます。死とい
う現実は、宗教の専売特許になっています。一般的に諸宗教が謳っているのは、「死んでも気にする
なかれ。汝に永遠の命がある」というような話です。喉から手が出るほど欲しいこの永遠の命を手に
するためには、各宗教が推薦するさまざまな行為をしなくていけません。わかりやすく言えば、「死
にたくはない」「死んでも永遠に生き続けたい」と思う人々は、何かの信仰の人質になってしまうの
です。宗教が人を自由にさせるのではなく、誘拐します。』(スマナサーラ)
まあ、お釈迦さんはそんなバカなことはおっしゃっていませんでしたね。死にたくないと同時に幸せ
に生きたいというのもあります。現代ならエネルギー使い放題に生きるというようなことでしょうか。
『私が前から申し上げているのは、いったい人はどれくらいエネルギーがいるんだろうということな
です。しかも日本の場合、経済成長とエネルギー消費の増加はまったく同じですから、「エネルギー
を三%増やせば、経済が三%成長する」というバカみたいな話なんです。それだけのことなんですよ。
それを成長と言ってきたのです。つまり、エネルギーを使えば、皆さん方はいい生活ができて、景気
がよくなるんです。』(養老)
これは原子力をやめて代替エネルギーを使えばいいというようなことではない。それでは同じことを
ちがった(目先を変えて)やり方でやっているだけではないか。というようなことも考えてみなけれ
ばいけないのではないか、と思うだが、まあ無理なんでしょうね。経済成長のために人口を増やせ、
なんていうバカな言説がまかりとおる世の中である。地球は無限大の人間を養える空間なのか。

「タンゴステップ」 上 下 ヘニング・マンケル 柳沢由実子訳 創元推理文庫 ★★★★★
冒頭、ドイツで戦争犯罪者の処刑がおこなわれる。そのためにイギリスから執行人がやってきた。と
どこうりなく処刑は行なわれた。その後、ドイツ側の立会人と短い会話がかわされる。
『「イギリス人戦犯を処刑するためにドイツの絞首刑執行人がイギリスに飛んだかもしれないという
ことだ。ドイツ人捕虜を鞭で打ち殺したイギリスの若い娘を処刑するために。ヒトラーやナチスの形
を取ってドイツ人にのりうつった邪悪が、われわれにのりうつることもあり得たということだよ」
 ダヴェンポートはなにも言わなかった。彼は黙って話の続きを待った。
「邪悪を抱いて生まれてくる人間はいない。今回は、ナチスはドイツ人だった。だが、ここで起き得
たことがイギリスではけっして起きないとは、だれにも言えない。それはフランスだって、アメリカ
だって同じことだ」』
戦争は「勝てば官軍である」。これまでの歴史をみればよくわかる。事件はスウェーデン北部ヘレェ
ダーレンの森のなかで起こった。殺された老人は元警察官だった。ここから七百キロほど南下したと
ころの町ボロースの警察官であるステファン・リンドマン、まだ37歳だ。だが最近舌にがんがみつ
かって病気治療のための休暇にはいることになった。これからどう生きていこうかと思っているとき、
先輩同僚だったモリーンが殺害されたことを新聞記事で知る。彼が定年退職以降のことは知らなかっ
た。だがなぜか気になって、休暇をいいことにヘレェダーレンへ向かった。モリーンは惨殺された。
背中に残る傷は鞭に打たれたもので、皮膚が形をとどめていなかった。死因は疲労だった。鞭が彼の
体から文字どおり命を追い出していた。何時間も苦しんだであろうと推測された。床に流れたおびた
だしい血痕にはまみれた被害者の足跡があった。そこにはパターンがよみとれた。これはタンゴのス
テップだ。それがなにを意味しているのか。猟奇的殺人事件と思われたのだが、続いてすぐ近くで同
年輩の男が殺された。同一犯人なのだろうか。殺人の動機はなにか、事件の捜査にリンドマンは地元
警察に手をかすことになる。以前、モリーンが家を買うとき、不動産屋との手伝いをしたのは、スヴ
ェーグに住む七十代の女性だということがわかった。そして彼女になにかひっかかるものを感じたリ
ンドマンは留守に彼女宅に忍びこんだ。そこで見たものとは。
『エルサ・べリグレンのクローゼットにかかっていたのは、ナチス親衛隊の制服だった。』
モリーンもナチスだったのか。本作は、本国のスウェーデンのみならずヨーロッパ各国はもちろん、
ドイツでもベストセラーのナンバーワンになっている。ナチスというのは単にヒトラーだけが、とい
う問題ではない。ユダヤ人とヨーロッパというのは長い歴史的な問題があるのだ。それは現代にも受
け継がれている。問題作、ということができようし、たちもどってユダヤ人問題を考えるきっかけに
なるかもしれない。長篇だが読み応え、スリルとサスペンスそして人間とはという問題、いろいろと
考えながら読んでいるとあっというまに結末をむかえることになる。

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遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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