ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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尾道友愛山荘ものがたり(44)
 <最終話>旅の終わり その四

 突然の雨に誘われて這いだしてきたのだろうか。
アスファルトの上をくねくねと進んでいる蚯蚓がいた。
だが、はやくも黒くアスファルトを濡らしていた雨は乾きはじめている。
土のなかにもどろうとしても、堅固なアスファルトに阻まれてしまう。
どんどん気温は上昇するばかりだ。
いつのまにか、のたうちまわるようになった蚯蚓の体内から水分はうばわれていく。
体をくねらせることしかできないで、身もだえを続けていた。
それもやがて動かなくなってしまった。
あっというまに水分はうばわれ干からびていくのだろう。
自然はそれでも活動をやめることはない。
いつしか蟻たちが集まってきていた。
こうしてやがてなにごともなかったかのような日常にもどる。

 だが、それもわたしがそう思っているだけかもしれない。
世界は、宇宙はなにも変わりはしない。
いや、そういうことではないな。
こうしてすこしづつ変化していくのだ。
わたしたちが知ろうと知るまいと、まったく無関係に進行していく。

 そんなことを考えながらぼんやりしていた。
キラキラとした反射を感じて見あげると赤トンボが飛んでいた。
編隊を組んでスイスイと空高く飛んでいる。
はやくも季節はつぎなるステージへと移行している。
死ぬものと生きるものがいる世界、なぜだか知らないが切なくなった。
これから始まるであろうことを暗示しているように感じたからか。

F0073西郷寺(時宗)

「赤トンボが飛んでいるなあ」
「そうね、もう秋が近くなってるのよ」
「これでやっと暑さからのがれられますね」
「秋かあ、どうするかな」
「どうするって?」
「夏休みはもうお終いってことやな」
「そうね、終わるのよね」
「なにごとも終わりはあります」
「そう、それは始まりの合図でもある」
「なにがはじまるのかしら」
「さあ、なんですかね」

 それでもまだまだ強い陽射しがぼくたちに降りそそいでいる。
光はどこからやってくるのだろうか。
太陽からだということは知っているのだが、なぜ太陽は輝いて燃焼し続けているのか。
科学はなぜに答えられないというが、人はなぜと考えてしまう動物である。
なぜが成り立つこともあるが、なりたたないこともある。
なぜ、なぜと考えるのだろうか。小学生のような気分になった。
きっと学生のときの思考習慣が抜けきらないのだろう。
テストにはかならず答えがあった。
答えを探す、知る、記憶しておくことがテストされるということだと思った。
でも生きているなかで、答えのないことがあると知るようになる。
はて、答えとはなんだろうか、といつか考えるようになった。

「ほんとうに、これからどうするのがいいのかなあ」
「答えはいろいろとあるんじゃないの」
「たとえば、どんな」
「まっとうな職業に就くとか、仕事にありつけそうな資格をとるとか」
「なんかちがう気がするんですが…」
「そうか、どんな生き方がいいとかってこと」
「近いけど、しっくりこない」
「でもね、仙人じゃないんだから霞を食って生きてはいけない」
「そこですよね。食うために生きるのか、生きるために食うのか」
「そうやな、そこが悩みどころやなあ」
「まあ、高尚なお話で」
「ヒロミちゃんはそんなこと考えないの」
「それはまあ、人並みには考えますけど」
「けど、の後にはなにがくるんですか」
「人はパンのみにて生きるにはあらず、だから」
「パンばかりだと飽きるから、たまにはケーキも食べたいし」
「そうですよね。うどんとか蕎麦、ラーメンもありますね」
「そう茶化してばかりいると天罰がおちるから」
「ごめん、ごめん。そいう意味やないんやけどなあ」
「じゃあ、どういう意味なのよ」
「パンのみには云々、ということは物質的なものだけではなくもっと精神のこともということやろ」
「そうよ」
「しかし、食生活をないがしろにしては正しい生活はおくれない」
「ふーん、それで」
「物質と精神、唯物論と唯心論の統合されたものを考えねばならない」
「わかった、あまり考えてないということね」
「畏れいりました。ヒロミちゃん鋭いなあ」
「まあ、慣れですね。同じようなことばかり聞いているとね」
「でもねえ、二分法の考えは動脈硬化をうながすな」
「つまり、気温でいえば暑い寒いかというのは、これは相対的なものやな」
「人によっては25℃が暑いと感じたり、いや寒いと言ったり」
「それはそうよ」
「だから、25℃という物差しをつくったわけやな」
「暑いか寒いか、という二分法ではないものをね」
「でも、ちょうどいい気温でいうのがあるんじゃないの」
「えっ、そやなあ、困った」
「めずらしいですね、ムッシュがやりこめられて。すこし愉快です」
「よろこんでもらえて、うれしいわ」
「なんだか話が逸れてない」
「そうや、なにが言いたかったんやろ」
「これからどうやって生きるのがいいのか、でしょ」
「もうある程度落ちこぼれているわけやからな」
「そうですね、官僚は無理でしょうね」
「そやけど、司法試験は学歴不問やで」
「検事とか弁護士っていやだなあ」
「おれも、人を裁くってのが性にあわんな」
「わたしは芸能人やモデルって柄じゃないし」
「みんな好き勝手なこと言ってる」
「言うだけやったら自由ですから」

 三人で笑ってみたけれど、なんだか盛り上がらない。
だけど、これまで生きてきてみんなに会えたということは素敵なことだ。
そう考えたら、なんとかやっていけそうな気もするのだった。

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遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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