ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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雨に濡れた本
窓の近くに本棚をそなえていた。暑いときなど開けはなしたままにしていた。出かけている間に雨が
降ることもあった。帰ってくると本棚が濡れている。しまった、と思っても後の祭りである。くっつ
いてしまったページを一枚一枚ひろげて乾かす。しかし雨にいちど濡れた紙はもうもと通りにはなっ
てくれない。よれよれとなって、変に分厚くなってしまっている。なんだか情けなくなって後悔しき
りだった。だからといって捨てるのはしのびない。そのまま本棚の隅っこに引越しをすることにした。
なにかの拍子にその本たちが目にはいる。後悔の念がまたわきあがる。だから見ないようにしようと
するのだが、それが反対に意識する結果となる。いまではそれらの本たちもどこかに散逸してしまっ
た。ときどき思いだすことがあるのだが、なぜか書名は記憶にない。なにか抑圧があって、無意識下
に押しこめられてしまったのだろうか。雨が降ると思いだすことがある。

N6558窓辺

「バカの壁をぶち壊せ! 正しい頭の使い方」 日下公人 養老孟司 ビジネス社 ★★★★
日本のジャーナリズムについて養老先生はこういいます。
『七〇年安保のころ、学生運動の騒動の真ん中にいて、朝日新聞が記事を書くたびに状況が悪くなり
ました。ジャーナリズムは事件の当事者なんですが、書いている記者自身に、自分が当事者だという
意識がない。それが大問題。自分たちが書くことで、情勢が影響を受けるということが分かっていな
い。それ以来、僕は朝日新聞を購読しなくなりました。
 今では新聞は積極的に影響を与えようとしている。末期的な症状です。読売新聞なんかはその典型
でしょう。僕は「朝日新聞も読売新聞も世論誘導をするな」と、ある新聞に書いたんです。イラク戦
争のときも、始まる前に朝日新聞が、「七割五分の人が戦争に反対している」という調査結果を出し
て、始まったら今度は読売新聞が「七割五分の人が戦争に賛成だ」という結果を出した。それだけを
見たら、日本人はいったいどうなっているだと思います。これは答えを誘導しているに違いないと誰
だって思いつきます。誘導できると思っているところが傲慢なんです。日本人はそんなバカじゃあり
ません。』(養老)
記者の方々は客観的立場で書いているというのだろう。しかし、客観性について考えたことがあるの
だろうかという疑問はいつもある。個性をのばそうとかいう教育の問題でもそうだ。
『客観性というのは、「共通了解性」にすぎません。共通了解性というのは、文字通り、共通に了解
できること。論理は通っているから、どこの国の人でも分かる。その論理が実体と対応しているかど
うかは別の話です。
 この共通了解性に立てば、数学みたいなものは極端に言えば、誰でも分かる。わからない人は前提
を理解していないだけです。「2A-A=」という数式があったとして、「2A-A=2」だと誰か
が言い張ったら、それで終わりです。2AからAを取ったら、残るのは2だというのは国語としては
正しいとしか言いようがない(笑)。共通了解事項ですから、私の言ったことも日下さんに伝えられ
ないと意味がありません。人間の脳は共通了解性を追求していった部分で決まっていきます。
 そうすると、「個性」というのは何なのかという話になります。これは現代教育の根本に関わって
くる問題です。数学には必ず正解があるのと同じで、全員が共通の了解に達するはずです。感情も同
じで、私がおかしいと思うことは、他の人もおかしいと思う。私が悲しいことは、他の人も悲しいは
ずだというのが理想の社会です。理想の社会を追求しているにもかかわらず、個性尊重が叫ばれてい
ます。
 現実に、みんながおかしいと笑っているときに、悲しくて泣いていたり、みんなが悲しくて泣いて
いるときに、おかしくて笑っていたりする人は、強烈な「個性」の持ち主です。でも、行きすぎれば
精神病院に送られてしまいます。それでも「個性」を発揮しろというのでしょうか。混んだ銭湯で、
個性を発揮されても、他人は困るだけです(笑)。』(養老)
もうすこしなんとかならないのか日本の新聞は、などと思うのである。いつも自己弁護に汲々として
いるようでは、つらいことこのうえないのでは、と同情することもある。

「脳の中の身体地図」 サンドラ・ブレイクスリー マシュー・ブレイクスリー
                      小松淳子訳 インターシフト ★★★★

感覚というのは不思議なもので、ときに伸縮するようなのだ。車の運転をしているときにはたぶんだ
れもが感じているのではないだろうか。でもあれってどういうことなんだろう。そんな疑問に答えて
くれるのが本書である。
『立ち上がり、指先までピンと張って、両腕を前に伸ばそう。上下、左右に振ってみる。頭の上から
大きく回して脇に下ろす。片足ずつ、できるだけ遠くまで蹴り出して、つま先で地面に半円を描く、
ヘディングするか、唇や舌で何かに触れる感じで首をいっぱいに伸ばし、頭を回して前後左右に倒し
てみる。身体を取り巻く、腕が届く範囲のこの目に見えない空間体積を、神経科学者たちはペリパー
ソナル・スペース(身体近接空間)と呼んでいるが、これはあなたの一部である。
 あなたの一部というのは、メタファーではなく、最近発見された生理学的事実だ。脳は特殊なマッ
ピング手法によって、この空間をすっぽりと身にまとうのである。物理的な身体をコードするボディ
・マップ(身体地図)は、この空間内のあらゆるポイントのマップと直接、即座に、自ら結びつくば
かりでなく、この空間内での行為遂行能力も緻密に計画する。自己は肉体の境界で完結するのではな
く、他の生物をも含めた周囲の世界へとあふれ出し、融合する。つまり、自信満々で巧みに馬を乗り
こなしているとき、あなたのボディ・マップは馬のそれと、共有する空間内で溶け合っているわけだ。
愛を交わすとき、あなたのボディ・マップは愛する人のボディ・マップとお互いの情熱の中で渾然一
体となっている。』
なるほど、そういうことか。もうひとつ、アフォーダンス理論というのも気になった。以前からこと
ばとしては知っていたがもうひとつ理解できずにいた。それはこういうことだ。
『アフォーダンス理論は身体の曼荼羅の特徴と深く結びついているので、ぜひとも少し詳しく見てお
きたい。これは一九六〇年に、コーネル大学のジェームズ・ギブソンという型破りな心理学者が打ち
出した理論である。一九七九年に没したギブソンは、動物や人間は環境を、客観的に定義された形状
と量ではなく、行動の可能性という観点から見ていると主張した。言い換えれば、あなたは物を目に
するととっさに、自分がそれとどのような形で相互に作用しあえるかという面からとらえる。あなた
が見ているのはアフォーダンス(訳注:与える、利用可能にするという意味の英単語アフォード=a
ffordからギブソンが作った造語)だ。アフォーダンスは特定の動作を可能にして促す。つまり、
ハンドルは握ることをアフォードする。階段は上り下りすることをアフォードする。ノブは回すこと
をアフォードする。ドアは通り抜けることをアフォードする。ハンマーは木っ端みじんに砕くことを
アフォードする。』
具体的な例でいうと、日髙敏隆さんもよくいっていたことなんだが。
『イグサに縁取られ、睡蓮の葉がぷつりぽつりと浮かんでいる。静かな湖畔の入り江を思い浮かべて
みよう。この光景が、たとえばカエルやカバ、スズメなど、さまざまな種類の動物にとって、どれほ
ど違って見えることか。どの動物もこの光景を一瞬にして、数々のアフォーダンスとして受け止める。
カエルとカバはこれを、泳いだり、潜ったりできるものとしてとらえる。しかし、泳げる、潜れると
いったアフォーダンスは、スズメにとっては思いも寄らないものだ。カエルとスズメは睡蓮の葉をプ
ラットホームになりそうなもの、つまり留まることをアフォードするものとして見るが、カバは飲み
込めるものとして見るだけで、睡蓮の葉に留まれるという考えは一〇億分の一秒も頭をよぎらない。』
考えてみればあたりまえのことを言っているようでもある。だがここからは客観的事実てどういうこ
となんだろう、という疑問が導かれる。そんなこと考えない人はそれはそれでいい。
『あなたもアフォーダンスの自動フィルタを通して世界を知覚している。あなたが知覚したある光景
は、形状、空間的関係、光、影および色の単なる総和ではない。知覚したものは目、鼻、皮膚を通っ
て流れるだけではなく、身体の曼荼羅によって自動的に処理される。それにより、知覚したものがそ
れぞれのアフォーダンスとして表出されるのである。これは、手と腕と細かい作業のマッピングが実
に豊かに発達した身体の曼荼羅を持つ霊長類全般に言えることであるから、人間という動物であるあ
なたの場合はなおさらだ。』
ときにいろんなこと考えてみるのは楽しい、と思ってみるのである。

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島を旅するときが楽しいですね。
遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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