ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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駅で読書
いそいで駆けてきたが間にあわなかった。改札口からのりだして列車の赤い尾灯をじっと見送る。荒
くなった息がしずまるまでベンチに腰かけてまつ。改札口上の時刻表を見る。次の列車まで二時間あ
る。しかたがないと諦めた。予定変更をせざるを得ない。ザックから新書本をとりだした。しおり代
わりにしてある名刺でページをひらく。この名刺は旅先でであった人からもらったものだ。読んでい
ると、こんなことが書いてあった。世のなかには真実と事実があり、混同することも多い。また、客
観と主観などというが、はなはだ誤用を多くみかける。絶対的客観なるものなどはない。あるとして
も脳髄のなかにでもあるとしかいいようがない、とあった。これらの意味を考えていると、いつのま
にか列車の時間がちかづいていた。そろそろホームへ行かなきゃなあと思う。しおりを挟もうとして
名刺の表がみえた。おやっと思ってよく見ると、その名前には真理とあった。

9068智頭線

「不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か」 米原万里 徳間書店 ★★★★
つねづね翻訳者の方々には頭が下がる思いでいる。しかし、なかにはこれって日本語なのというよう
な文章に訳される方がいることも事実である。原文(英語であれ仏語、独語、露語であろうとも)は
知らないけれども、こんな日本語はないだろうと思う。話せるのと翻訳・通訳ができるというのとは
ちがう、と思っている。そんな思いを補強(笑)してくれるのが米原さんである。いまさらながらに
ご冥福をお祈りしたい。
『師の徳永晴美氏はこんなことも言っている。
「いいかね、通訳者というものは、売春婦みたいなものなんだ。要る時は、どうしても要る。下手で
も、顔がまずくても、とにかく欲しい、必要なんだ。どんなに金を積んでも惜しくないと思えるほど、
必要とされる。ところが、用が済んだら、顔も見たくない、消えてほしい、金なんか払えるか、てな
気持ちになるものなんだよ」
 男の生理はなんとなく理解しかねるところがあったが、師が最後に言い足した。
「だから、売春婦に倣って、通訳料金は前払いにしておいたほうが無難だよ。少なくとも、値段は事
前に決めておきべきだね」』
売春婦は人類最古の職業でもある。職業に貴賤はない。だが、職業とは日本では認められていない。
まあ、公にはということだ。従軍慰安婦の問題もなかなか解決しないのはこういう認識のズレがある
ことも一因だろう。なにかで読んだが、将校も足元におよばない高給取りであったとか。むずかしい。
されはさておき、こういう訳を読んだり聞いたりすると、すなおにすごいなと思う。では以下に。
『「来年度の日本のGNP成長率は、四%前後になります」
 という発言に対して、
「Oh,it's too optimistic!」
 という反応があった場合、田中さんは決してこれを、
「それは、あまりにも楽観的すぎます」
 なんてこなれない日本語に置き換えたりせずに、
「読みが甘すぎやしませんか」
 と訳してくれるのだから、舌を巻く。』
日本では英語熱(?)が高いが、よくよく注意も必要だと思う。
『私どもにとっての母語、つまり生まれてこのかた最初に身につけた言語、心情を吐露しモノを考え
るときに意識的無意識的に駆使する、支配的で基本的な言語というのは日本語である。第二言語すな
わち最初に身につけた言語の次に身につける言語、多くの場合外国語は、この第一言語よりも、決し
て上手くはならない。単刀直入に申すならば、日本語が下手な人は、外国語を身につけられるけれど
も、その日本語の下手さ加減よりもさらに下手にしか身につかない。コトバを駆使する能力というの
は、何語であれ、根本のところで同じなのだろう。』
英語がしゃべれるよりも、なにを語れるかが大切なんですがねえ。

「ファイアーウォール」 上 下 ヘニング・マンケル 柳沢由実子訳 創元推理文庫 ★★★★
刑事クルト・ヴァランダーのシリーズ八作目。舞台はスウェーデンの小さな田舎町で中世の街並みが
残る港町イースタ。今回の事件は、少女たちがタクシー運転手をハンマーとナイフで襲い瀕死の重傷
を負わせて逮捕されるところからはじまる。十九歳と十四歳、おまけに少女だ。犯行の動機を金ほし
さと言っているが、盗んだお金はわずかに六百クローネ(約七千円)だ。二人ともいままでに警察の
世話になったこともない。どうにも不可解だといわざるをえない。そのころATMの前で死体が発見
される。自然死なのか殺人か。検視の結果は、心臓疾患による突然死との報告。その後、警察署から
脱走した少女の一人が変電所で焼死体となって発見される。こうして事件は思いもよらない方向へと
展開していくのである。ATM前で死んでいた男はITコンサルタントで、オフィスにはパソコン一
台だけが据えられていた。その後彼の死体が盗まれ、ふたたびATM前に放置されるということが起
こった。さらに死体の右手の人差し指と左手の中指が切りとられていた。これはどういうことなのだ。
事実はいろいろとあるが、それらがどうにもつながらない。鑑識のニーベリとヴァランダーはこれら
のことについて話すのだ。
『おれはよく、警察の仕事はイーゼルの前に立つ絵描きのやることに似ていると思う。何本か線を引
いて色を塗り、一歩下がって全体を見る。それからまた前に出て同じ行為を繰り返す。そのような動
きを何度も繰り返すのだ。この、後ろに下がるというのがいちばん大切なのではないかとおれは思う。
そのとき、目の前にあるものがなんなのかが本当に見えるのではないか』
いまやコンピュータを駆使して捜査をする時代になっている。しかしヴァランダーはそれになじめな
いところから孤立感におそわれたりする。五十をすぎて気がつけばパートナーもなく友人もいない。
そんなときパートナーを探す具体的な行動をはじめた。そこに一人の女性が現れる。彼にしあわせは
訪れるのだろうか。事件の行方とは別に、ヴァランダーの人生も気になるところだ。
全世界で2000万部を超える売り上げがあるというヴァランダー・シリーズ。スウェーデンとイギ
リスではテレビドラマ化もされている。そんな人気作家のヘニング・マンケルだが、残念なことに癌
により2015年10月5日、67歳で生涯をおえている。謹んで哀悼をささげたい。

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島を旅するときが楽しいですね。
遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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