ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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日陰で読書
暑いときには読書なんてできないだろう。読書の秋というぐらいだから夏は向かないのかな。と思い
がちだが事実は意外や意外、夏の読書量がおおいことを記録は示している。さすがに炎天下ではでき
ないだろうが。そういえば、木陰などで本を読むの図、などいう絵も見たような気がする。さわやか
な風が吹きぬけるガーデンで籐椅子なんかにすわり読書する。イメージとしては充分わかるのだが、
実際問題としてあるのかな。かえって眠くなって午睡をむさぼってしまうのではと考えてしまう。だ
がまてよ、中学のときだっただろうか、思いだした。校舎の陰で教科書をひらいている女生徒がいた。
大きさからいってあれは音楽だったのではないか。すこし口ずさんでもいるようだった。ぼくはしば
らくながめていたのだが、彼女が急にこちらを見て笑いながら手をふった。どぎまぎして顔もすこし
赤くなった。そんなぼくのすぐそばを、別の女生徒が声をあげ手をふりながら駆けぬけていった。

N8197テトラポッド

「いつも彼らはどこかに」 小川洋子 新潮社 ★★★
雑誌「新潮」に掲載された短篇が八つ。そのなかで「ビーバーの小枝」というのが印象に残った。
『私と青年Jの父親は、二十年近くにわたり、作家と翻訳家という関係にあった。結局、一度も会う
機会はなかったが、翻訳家は常に私の小説を気に掛け、新作が出るたび熱心に読み込み、粘り強く翻
訳を続けてくれた。私たちの間には、二人の名前が表紙に印刷された本が全部で十一冊残された。』
そんな翻訳家がいた地へ小川さんはでかけていく。迎えたのは青年Jとその恋人であった。生前翻訳
家が暮らしていた家で青年Jと恋人は暮らしている。翻訳家とときおり手紙の他にプレゼントを贈り
あった。そんな大げさではない品々だったという。
『中でも最も忘れがたいのは、記念すべき翻訳本が完成したお祝いに彼がプレゼントしてくれた、ビ
ーバーの頭の骨だった。』
日本人の感覚からすれば、動物の骨、しかも頭蓋骨をプレゼントにと思うかもしれない。しかし、筆
者はいい意味で忘れがたいと書いている。わたしも実物を見たわけではないが、いいなあと感じる。
ありふれた出来あいの品物ではなく、彼の住居近く自然のなかにあったもの。翻訳家は書く。
『二か月ほど前、森を散歩している途中に見つけました。死んで随分時間が経ち、綺麗に白骨化して
います。キツネか何かがくわえて来たのでしょう。頭以外の部分は見当たらず、ただこの頭蓋骨だけ
が朝もやの漂う森の奥で、ひっそりと落ち葉の中に埋もれていました。野生動物の骨を見つけるのは
さほど珍しいことではありませんが、ちょうどその日の早朝、あなたの小説を翻訳し終えたところだ
ったという偶然から、つい手に取り、家へ持って帰ってしまったのです。』
もちろん、きちんと骨は専用の薬品で消毒されている。だが、こういうものを気持ち悪いと思う方も
おられる。しかし、考えてみればすべての生物は死ぬ。その姿が神々しいと感じることもある。どう
感じるかはその人の人生観を映すのだと思う。こういう姿勢の小川さんだから、いろんなすばらしい
小説が書けるのだとも考えるのである。

「原爆投下 黙殺された極秘情報」 松木秀文 夜久恭裕 NHK出版 ★★★
ウランの核分裂反応が爆弾に利用できることは当時、ドイツ、イギリス、アメリカ、そして日本でも
知られ検討されていた。アメリカはドイツに開発されることをなんとしても避けたいと巨額の資金を
つぎこんだ。有名なマンハッタン計画で、二〇億ドルといわれている。日本は大きく見積もって五〇
〇万ドル程度だった。わずかアメリカの〇・二五パーセントである。当時この研究を仁科博士のもと
に従事していた木越さんは「原爆開発に成功するなら世界一の工業力を誇るアメリカしかないだろう」
と思っていたという。そしてアメリカは実験に成功する。実験だだけではなく実戦でどのように使う
かが、原爆使用に関する暫定委員会で決定される。その内容は以下のようなものだ。
『「原子爆弾は、できるだけ速やかに日本に対して使用されるべきであり、それは労働者の住宅に囲
まれた軍需工場に対して使用されるべきである。その際、原子爆弾についてなんらの警告も行っては
ならない」』
ドイツ、イタリアではなく日本でなければならない、というところが哀しい。コーカソイドとモンゴ
ロイドのちがいはおおきいのである。ではどこに、という問題がある。
『五月一〇日に開かれた目標選定委員会では、京都、広島、横浜、小倉が原爆の攻撃目標としてリス
トアップされた。なかでも京都と広島は、特に“有望”な目標とされた。その基準は、大きな都市で
あり、これまでの空襲によって被害を受けていないというもので、人類が初めて実戦で使用する原子
爆弾がもたらす破壊の効果を正確に把握することを目的としていた。』
だから逆に、これらの候補地はそれまで意図的に空襲を受けていないということだ。京都ではなく広
島だったというのは歴史の偶然である。
『さらに広島では、空襲に備えて「建物疎開」が始められた。建物疎開とは、空襲を受けた際に延焼
を防ぐために市内の構造物を撤去して防火地帯を設ける作業のことである。この作業に動員されたの
は、広島市内の、いまでいう中学生以上の生徒たちだった。広島市側は、空襲の可能性があるのに生
徒を危険にさらして建物疎開の作業を行わせることはできないと訴えたが、結局、空襲への備えを急
ぐ陸軍の意向で市内二万人近い生徒が動員されたといわれている。そして、八月六日のあの瞬間も、
多くの生徒たちが炎天下、建物疎開の作業をしていた。それが結果として、原爆の被害をより一層大
きなものとしてしまうのである。』
そして広島が謎の爆撃機によって空襲を受けるのではないかという情報は察知されていた。だが、軍
上部にまではなぜかそれが伝わっていなかったのだ。

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島を旅するときが楽しいですね。
遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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