ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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居酒屋で読書
いまでもそうだが、いつも一冊は本を持っている。時間が空けばいつでも読書できる体制になってい
る。案外ほんのすこしの時間のほうが読めるものなのだ。逆に時間がありすぎると読めなかったりす
るのだ、わたしの場合は。ガールフレンドといっぱいやっているときに彼女が洗面所にでもいけば、
文庫本などひらいて読んだりする。もどってきて、「なにを読んでいるの」とたいてい聞く。「いや
ねえ、こんなところで本なんか読んで」とは言わない。言うような彼女だと長続きしない。というか
そんなに何十人ともつきあった経験はない(笑)。で、なんの本かだ。「オリバー・サックス」とい
うと、「わたしはハロルド・クローアンズが好き」「ところで、きみは?」「いまは茨木のり子よ」
「おれは石垣りんのほうが好きだ」「そんな感じがする、あなたは」と言って、ふたりで笑ったりす
る。そんな彼女がいれば理想的なんだが、理想だからいまだに実現も経験もしていないのである。

N8355実りの秋

「インフォームド・コンセント 消えた同意書」 ハロルド・L・クローアンズ
                          鴻巣友幸子訳 白揚社 ★★★

ハロルド・L・クローアンズはシカゴの大学で神経学・薬学教授をつとめる神経内科医である。そん
な彼がミステリ仕立ての小説を書く。これで二冊目になるということだが、すでにベストセラー作家
の地位を築いている。書名にあるインフォームド・コンセントだが、アメリカで生まれた考え方で、
「十分な説明を受けた上での同意」と言われている。医師と患者の関係のなかで、医師は治療法や薬
の内容について、患者に十分な説明を施し患者の同意を得たうえでそれを実行するという考え方だ。
もちろん、これはアメリカでの医療訴訟が非常に多いということがあるからだ。患者に十分な説明を
せずに治療なり手術をおこない結果が悪かった場合、訴訟に持ち込まれ敗訴することが多かった。そ
うした事態を避けるため、アメリカでは医師が患者にしつこいほど治療内容や薬について説明を施し、
同意を得るというのが一般化するようになった。こういう背景があっての本書だが、近年は日本でも
そういうことに注意がそそがれている。それを主題にしたミステリを現役の神経内科医が書くという
のはどういう意味があるのだろうか。彼は神経内科医の診療技術はいかにして学びとられるかという
ことを書きたかったと語っている。しかしそれでもこのようなユーモアも文中にこめている。
『「ひとまず、アーテンの投与をはじめるというのはどうでしょう」
「なぜ、アーテンを?」
「効くからですよ」
「それはそうだろうが、どうして効くとわかる?」
 どちらもその答えは出せなかったので、ポールはふたりにあとで調べるようにといって、論文をふ
たつほど紹介してやった。ひとつは、ロンドンのディヴィッド・マーズデンによる論文。もうひとつ
は、タナー、ゲッツ、およびクローアンズによるもの。両方とも、≪ニューロロジー≫誌に発表され
たものだった。前者のほうが優れていたが、ポールは後者のほうが論旨がきれいにまとまっていると
考えていた。』
ハロルド・L・クローアンズはなかなかちゃめっけのある人物であるらしい。でも小説より臨床記録
的読み物のほうが、わたしは好きである。

「人間って何ですか?」 夢枕獏 他 集英社新書 ★★★★
作家の夢枕獏氏が各界最先端の方々との対談集。その分野は、本書によれば脳研究者、宇宙物理学者、
考古学者、生物学者、宗教学者、海洋生物学者、幹細胞生物学者、そして芸人であり映画監督の方。
まずは池谷裕二さんの発言をみてみよう。
『クリエイティビティとかイマジネーションの力は、記憶力と比較的反比例するとよく言われていま
す。なぜかと言うと、記憶力がむちゃくちゃいい人は想像する必要がないからです。』
これ教育者の方はよく憶えていて、アドバイスにつかってください(笑)。さて、私とは。
『私は、生物学者として精神と物質の不可分性を謳う一元論の立場をとる必要がありますから、それ
に従ってお答えしたいと思いますが、一方で、“私”というのは物なのかと言われると微妙です。例
えば、車のスピードというのは物なのかという質問と似ていると思います。車が動いている状態に付
随してくる状態がスピードですよね。“私”とは、おそらく「速さ」に似た概念だと思います。車を
分解していってもスピードという概念はどこにも出てこない。それと同じことで、脳が神経活動して
いる状態のことを“私”、あるいは心だと言えるのではないでしょうか。』
ことばにすると実体があるような気になるものだ。池谷氏がいうように脳が神経活動している状態の
ことが「私」だとすると、来世に生まれ変わるというのはかなりの確率でむずかしくなるかな、と思
ったりする。そして宇宙について、エントロピーが増大、つまり無秩序へ向かっているというが。
『無秩序な世の中に向かうには、渦という秩序を部分的に作った方が全体としては速いですよと。
 そこで生命とは何かという問いに戻りましょう」。答えは、多分それなんですよ。生命は渦です。
宇宙はビッグバン以降、全体のエントロピーがどんどん増大しているのだけれども、もっと速く無
秩序にするには、局所的に生命のような秩序を作っておいた方が、宇宙が速く老化するんです。』
『私たち生命は宇宙を効果的に老化させるために存在している。』
これには夢枕さんも大興奮であったが、池谷氏の話はいつもおもしろい。もうひとつ最後にビートた
けし氏の禅宗の坊さんのような発言でおしまいにしましょう。そうだよな、と私も思います。
『基本的には、人は生まれてきて死ぬだけなのだと思うんですが、身体があるからそういうわけにも
いきません。酒を飲めばうまいし、快楽だってある。生きている間にはいろんなことがあって、それ
なら無理やり欲望を追いかける必要もないけど、無理に避ける必要もないだろうと思いました。どう
したって歳はとるし、どうせくたばることには間違いないから。』

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遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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