ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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ハチ公前で読書
渋谷で待ち合わせするならどこがわかる、という。なんとなくハチ公前、と答えた。それぐらいしか
知らなかった。やってくると思いのほか人が多い。これで捜せるかなあと不安だった。時計を見たら、
まだ三〇分もあった。しかたなく、立ったまま本を読んでいた。すれちがう人たちがぶつかりそうで
まともに読めない。あきらめて、ぼんやりしてた。そろそろ夕暮れで、空が色をかえはじめていた。
東京でも夕焼けがあるんだ。そりゃあそうだよな。なんだか可笑しくてひとり笑っていた。ふと気づ
くと、こちらに近づくヒールの音が聞こえた。顔をあげると、すこし離れたところで立ちどまってこ
ちらを見ている。なぜ止まるんだ。わからないのだろうか。ここだよというように手をあげた。まだ、
じっと見つめている。「ムッシュよね」ゆっくりと近づいてきながら微笑んだ。「ひさしぶり、東京
で会うと別人みたいね」おたがいにもうあのころには決して戻れないとわかる瞬間だった。

N8613ルミナリエの夜

「スキン・コレクター」 ジェフリー・ディーヴァー 池田真紀子訳 文藝春秋 ★★★★
事故で脊髄を損傷して車椅子生活になった科学捜査官リンカーン・ライム・シリーズ11作目になる。
ライムは天才的犯罪者であるウォッチメイカーが獄中で死亡したとの知らせを受ける。ほんとうにウ
ォッチメイカーは死んだのか。ときを同じくして腹部になぞの文字が彫られた女性の死体が発見され
る。犯人は刺青に墨のかわりに毒物を注入して殺害するという異様なものだった。強姦された形跡は
ない。しかし皮膚をなでた形跡がある。現場で発見されたわずかな証拠物件のなかに書籍の紙片と思
われるものがあった。捜査の結果、ニューヨークで起きライムが解決した「ボーン・コレクター」事
件に関する本の切れ端であることが判明する。犯人は模倣犯なのだろうか。骨の代わりに皮膚に執着
する「スキン・コレクター」なのだろうか。そうこうするうちに第二の殺人事件が起こる。またも腹
部に文字のタトゥが刻まれていた。つぎつぎと被害者に彫られるタトゥの文字はなにを意味している
のか。さらに被害者は増えていく。
『ボーン・コレクターを手本にしているようだが、もし本当にそうだとするなら、復讐に関するメッ
セージである可能性がもっとも高いだろう。だが、何の復讐だ? “the second”、“forty”、そし
て今回の“14th”。それらは犯人が報復したいと考えている不当な行為の何を物語っているのか。』
事件現場に共通するのは地下ということ。しかし、ニューヨークにはこんなに地下道が縦横に張りめ
ぐらされているとは知らなかった。終盤になってなんどもあらわれるどんでん返しがディーヴァーの
真骨頂である。もちろんそこに至るまでにさまざまな伏線が張られているのだ。なにげなく読んでい
ると見過ごしてしまいそうなことが後で重要だったのだと気づく。二重三重に擬装されていた衝撃の
真相におどろくことまちがいなしである。さすがというほかない。しかし、読みすすんでいるとなぜ
か「マクスウェルの悪魔」がうかんでくるのはなぜだろうか。

「漢字と日本語」 高島俊男 講談社現代新書 ★★★★
だれでも知っているが漢字はもともと中国から来た文字である。だから発音も中国式であり、それが
音(呉音、漢音、唐音などありますが)といわれるもの。その文字の意味に日本語の読みをあてたの
が訓ということになっている。しかし最近では外来語が日本語のなかに占める割合もおおくなってき
ている。ではどこまでが外来語かというと、案外あいまいだと高島さんはおっしゃる。
『たとえばリモコンは外来語か。リモートコントロールはまちがいなく外来語である。けれども「リ
モコン」はそれを日本人がチョン切ってつないで作ったもので、外から来た語ではない。日本製であ
る。』
うーん、チョン切っただけのものも多いです。テレビとかネガとかアニメとかいろいろあります。
『つまり外来語とは、その形で外から来た語、ではない。素材や部品が外から来ていれば外来語であ
る。ジャムパンは、ジャムが英語、パンがポルトガル語だが、外来語である。テーマソングは、テー
マがドイツ語、ソングが英語だが、外来語である。部品はどこのでもいいのだ。』
ますます判断がむずかしくなってきた。じゃあ、日本語の範疇にはいるのは、ということだ。
『「それは外来語ではなく日本語です」といった言い方があるが、それは本来おかしい。外来語は日
本語の一部分なのだから――。しかし言いたいことはわかる。まあ外来語は、言ってみれば日本語と
いうクラスのなかの転校生、といったところかな。』
外来語かどうかわかりづらいのもけっこうある。カタカナ書き必ずしも外来語ではない。
『たとえば、インチキ、ルンペン、ポンコツなどは通常カタカナ書きの語だが、どうか。皆さんどう
お思いになります?
 はい、ルンペンとテンプラが外来語のようですね。』
おなじ漢字をつかう中国でも外来語はあるし、日本語からのものが多い。ただし、という。
『中国の日本からの外来語は、その肝腎の音を無視する。字(もちろん漢字)と意味だけ取り入れる。
 たとえば積極(的)はポジティブを訳した日本語である。これをそのまま取り入れた。ただしそれ
を日本人がセッキョク(テキ)と言っていることは全く問題にしない。チチと言う。――なお毎度申
すことだが中国語の発音をカタカナで書くことは不可能なので、このチチというのは至極いいかげん
です。チーチーでもジジでもジジーでもけっこう。ともかく「積極」の字を自分たちの音で言う。』
さらにこういうこともあるからますます複雑である。
『たとえば英語シビリゼーションが入ってくると、周易(易経)に「見龍在田、天下文明」とあるの
を取って「文明」と訳した。だから「文明」は、外見は漢字語だが実質は西洋語である。それがのち
に中国に入ると日本から来た新語としてあつかわれて、たとえば洋式の結婚を「文明結婚」、といっ
たふうに使われる。故に、「文明」は日本語、と言えばその通りだし、根は中国語、と言えばそれは
そうにちがいないのである。』
なるほどね。なにごともそう単純ではない、ということです。

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遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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