ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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屋台で読書
残業で遅くなったときにときおり行く屋台があった。常連ということではないが、おやじさんはぼく
のことを憶えてくれているようだった。いつもおでんを三品、大根、じゃがいもとタマゴが定番だ。
熱いのをフウフウいいながら食べているぼくをあたたかく見守っていてくれる感じだ。お酒は熱燗を
一杯だけと決めていた。飲みすぎると帰りの電車で乗り過ごしてしまうからだ。長椅子の隅で、他の
酔客の話をなんとなく聞いているのが好きだった。あるときどうしても続きが読みたい本があった。
すこし読んでいてもいいですかと聞いた。「ああ」と軽く頷くだけだ。無愛想というのでもないが、
口数はすくない。ときおり風のぐあいで電車の音がきこえてくることがある。そんなとき、おやじさ
んは空をあおぐようにしてなにかを懐かしむような顔になる。若いときは旅などしていたのかな。そ
う思って見ていたら眼があった。黙ってごぼう天をぼくの皿にごろんと入れて、にやりと笑った。

N8664メジロとモミジ

「日本の大問題」 養老孟司・藻谷浩介 中央公論新社 ★★★★
対談集ですが、付箋を貼るのは養老先生の発言ばかりだと後で気がつく。いろいろと気づかない観点
を理系の立場から話していただけるのがありがたいです。いつもすごいと思う。
『いまは何でも言葉ではっきりさせないといけない世の中です。子どもにも、自分の意見をはっきり
言いなさい、と教えますが、言葉は意識の氷山の一角にすぎません。脳科学者なら誰でも「意識され
ているのは、脳で処理される情報のごく一部だ」と知っています。これは客観的な事実です。
 いまの世の中に蔓延している、何でも言葉にしなければいけない、どんなことでも言葉になるはず
だという思い込みは間違っています。特にメディア関係の人は情報化、つまり言語化、映像化しなけ
れば商売になりませんから、何でも情報化できるということを暗黙の前提にしています。そうして作
られた「情報」が、フィクションでしかないことに気づき、疲れているメディア関係者もかなりいる
はずです。
 その意味するところが言葉にならない「修行」は、いまや死語になりました。現代では、座禅をし
ている人を見ても「何をやっているのだろう?」と思うだけではないでしょうか。しかし、他人の感
想などどうでもいいことであって、大切なのは本人の思いです。どういう意味があるかわからないこ
とでも、一つだけ確かなことがあります。その意味のわからない行為が、それをしている当人を育て
ているということです。大切なことは、「何の役に立つかはわからないけれども、とにかくやり続け
てみる」ということです。(養老)』
なにかの役に立つという研究から新発見があらわれたことはない。ふとした偶然の産物であったとこ
れまでの歴史が教えてくれる。ことばを操る能力だけで子どもを評価していないか。むずかしい問題
である。世のなかはそういう能力でランク付けしていることは周知の事実だ。あとは運動能力でしょ
うか。ほかにもいろいろあるんじゃないかと思いますけどね。最近アレルギーの子どもが多いですが、
こんなことを知っていましたか。
『最近、アレルギーが増えてきた理由は、腸内細菌を含めて人間を構成している細菌叢が変化したた
めということになっています。細菌叢は実にいろいろな影響を人体に及ぼします。多くの人は、薬は
直接人体に作用すると考えていますが、たとえば、痩せ薬の効果は人によってまったく違います。そ
れは、薬が腸内細菌叢を変化させることで人体に影響を与えるからです。腸内細菌叢の構成や状態は
人によって千差万別なのです。
 腸内細菌叢も一つの生態系ですから、壊れるというよりは、変化していると言ったほうがいい。歴
史的・伝統的に続いてきた、細菌叢の「落ち着き」があったのですが、いろいろな要因で違うものに
変わっていった。その原因の一つが抗生物質です。(養老)』
抗生物質の問題はこれだけではない。実に深刻な問題が隠されているんです。
『もう一つやっかいな問題があって、抗生物質を家畜にも使っているのをご存知ですか。家畜の飼料
に抗生物質を入れていますが、それは家畜が病気にならないようにするためでなく、抗生物質を与え
ると、家畜が二〇パーセントくらい太るからなのです。つまり、ある種の栄養剤として使っています。
このことで、家畜の細菌叢を変えてしまっています。弱い細菌はどんどんやられてしまいますから。
(養老)』
ヒトはヒトだけで生きているんじゃない。生物多様性とかいわれるけど、どこまでわかっていってい
るのかはなはだ疑問です。といいつつヒトはなかなか環境順応性にも優れているので、これが吉とで
るか凶とでるか。放射能とおなじで時間との相関関係もあるのでむずかしい。しかし、知ることは重
要です。知った上でのことか。知らされずになっているのか。そこがジャーナリズムの責務なんだと
は思いますが、どうも日本はそこが頼りないようです。

「脳神経学者の語る40の死後のものがたり」
         デイビッド・イーグルマン 竹内薫+竹内さなみ訳 筑摩書房 ★★★

『最近の英米の科学書では、科学的な事実の紹介の前に短いフィクションを載せるのが流行っている。
ショートショートみたいな雰囲気で読者の(科学に対する)苦手意識や恐怖心を取り去って、それか
ら本番の話に入るのだ。いわば「つかみ」である。だが、本書のように「つかみ」だけのものは見た
ことがない。』
信頼する竹内薫さんのおっしゃることだから間違いないとは思うのだが、少し不安である。だがユー
モアがあるというのは救いである。神様は死後の世界で、すべての人々を善人であろうが悪人であろ
うが、全員残らず天国に収容するということに決めたのだ。これで神様はほっと一息ついた。だが。
『まず、共産主義者たち。あの人たちったら、完璧に平等な社会を目指してきたくせに、いざ達成さ
れると、喜ぶどころか、途方に暮れちゃったんだ。なにしろ、共産主義者にとっては『神さま』なん
て存在すら完全に否定してる相手でしょ。その『神さま』の力で理想郷が実現されちゃったんだもん、
ガックリよね。
 それから権力者たち。あの人たちのプライドもズタズタ。なにしろ、他人を蹴落としても上に這い
上がるんだっていうヤル気を刺激するものがなんにもない「真の平等」システムなんだから。しかも、
左翼の連中と一緒に永久に閉じこめられちゃうなんて、そりゃ、ムカつくわな。
 ほかには、保守派の人たち。ふつうにムクれちゃうでしょ。さんざん蔑んできた貧乏人がいないな
んてねぇ。
 リベラルな人たちだってシラケちゃったわよ。自分たちが鼓舞して救い出してやるはずの、虐げら
れ耐え忍んでいる人がいなくなっちゃったんだもの。
 最後に神さま。カノジョは毎晩、自室のベッドの端に腰を下ろして、シクシク泣いているのよ。
 だって、てんでバラバラな人間たちの、たった一つ一致した意見が、これだもの――。
「平等な世界なんかクソくらえ! こんなの天国じゃねえ、地獄だ!」』
まあ、皮肉屋の神経科学者の言いそうなことだこと。読んでのちに思うことは、事実は小説よりおも
しろい。ということは、フィクションはしばしば事実よりもおもしろくない。

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島を旅するときが楽しいですね。
遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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