ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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灯台で読書
人には好きなものがいろいろとあるようだ。たとえばお寺をめぐるのが趣味だという人がいる。最近
では道の駅もそうかな(笑)。灯台もそんななかにはいる人気のスポットなのではないだろうか。だ
が立地によって印象は劇的に変わる。あれはどこだったのだろうか。両側に海がひろがる狭い道を歩
いて灯台へとむかっていた。下方から吹き上げてくる風につよく潮の香りを感じた。寒くはなかった。
ただ黙々とひとりで歩いていた。着いてあたりを見まわすと、水平線がかすかに円弧を描いているの
がわかる。空には雲もない。うす青がどこまでも続いていた。ときどきカモメらしき白い鳥が舞いつ
つ滑空しながら視界を横切っていく。白い灯台に背をあずけてコンクリートの地面に座りこんだ。だ
れもいない。このすてきな空間にひとりでいる。ザックから本を取りだして読みはじめる。どんどん
と本のなかにはいりこんでいった。そこにも果てしない世界がどこまでもひろがっているのだった。

3851神威岬灯台への径

「天下無敵のメディア人間――喧嘩ジャーナリスト・野依秀市」 佐藤卓己 新潮選書 ★★★★
一読、こんな人物が日本にいたのかとまず驚かされるだろう。そしておもしろいと感じるのだ。まず
冒頭にこう書いてある。日本のメディア史を研究していると、絶えず視野をかすめて出没する人物が
いるという。それが本書の主人公・野依秀市である。一八八五年から一九六八年までを疾風のように
生きたジャーナリストだ。生涯に二〇〇冊以上の著作を出版している。これらの著作が野依氏自身の
言説なのかどうか判然としない、と著者はいう。そして野依氏もそのことを隠さない。堺利彦「売文
集」に野依は次のような序文をよせている。
『「僕は無学不文であるが、僕の意見は是まで大抵人に話して書いて貰つた。先には多く白柳秀湖君
に書いて貰つた。白柳君は実に善く僕の意を尽して呉れた。然るに昨年監獄から出て暫く加藤病院に
居た時、加藤[時次郎]院長の紹介で偶然堺[利彦]君に会つた。其時堺君は売文社を起して居た。
僕は早速堺君に頼んで僕の新渡戸博士攻撃の文を書いて貰つた。すると其文が非常に僕の気に入つた。
天下に僕の心持を十分に書き現はし得る者は、白柳君と堺君との外には無いと思つた。それで其後も
堺君には引続いて種々の論文を書て貰つて居る。」
 これほどはっきり代作を公言し、それを正当化する言論人を私は知らない。しかも驚くべきことに、
この告白文までも、なんと堺の代筆なのである。』
代筆といい、あるいは口述筆記ともいわれる野依氏の著作である。しかし芸能人の場合などとはその
やり方がまったくちがうのだ。野依氏は校正ゲラに大量の加筆、訂正を行うのが常で一文字たりとも
おろそかにしなかったというのだ。ある意味疑い深い性格であり、この性格が彼を学者的と評価され
てもいるのである。では野依秀一とはどんな人物であったのか。
『野依秀一の言論とは、敵本位主義の喧嘩ジャーナリズムである。それは社会悪と見立てた相手を徹
底的に攻撃し、その批判の過程で自己生成する行動主義と呼べるだろう。だから、野依式ジャーナリ
ズムの内部に、守るべき絶対的価値、正義は存在する必要がない。論敵を否定するなかで対抗的に価
値は形成されるのだ。そこに野依式ジャーナリズムの瞠目すべき躍動感が生み出された。左翼からは
「右翼への転向者」、右翼からは「左翼の隠れ蓑」と批判された理由も、この敵本位主義にある。』
左翼だ右翼だとのラベル貼りには無頓着であった。だから、真正の家族主義、国家主義は即ち社会主
義であり、社会主義を危険思想、破壊思想と排撃する不見識には次のように反論しているのだ。
『「あれは危険思想である、破壊思想であると云つて、一も二もなく之に反対するが如きは、余りに
無知であり、余りに臆病であり、余りに不見識である。僕を以て之を見れば、社会主義よりも個人主
義よりも、誤つた国家主義、家族主義の方が、更に一層危険思想であり有害である。」』
戦後、GHQは「日本の民主化促進のため」と、戦前・戦中の「宣伝用刊行物」の没収をおこなった。
この没収図書七一一九点中、野依の著作は第一位の二三冊を数えた。だがこのことは、マスコミによ
ってあまり知らされていないのだ。それは、なぜなのか。
『そもそも戦後のマスコミにはなぜかこの「没収図書」問題を積極的に語ろうとはしなかったのか。
それは自社の出版物が数多く含まれていたからである。出版社別では一四〇点の朝日新聞社を筆頭に、
八三点の大日本雄弁会講談社、八一点の毎日新聞社がトップ3である。戦前に「宣伝用刊行物」を最
も多く刊行した大新聞、大出版社は、敗戦後は「一億総懺悔」の先唱者となり、GHQ占領下では「
日本民主化促進」の担い手となった。戦時体制=占領体制に有効に機能したこの世論抑制システムは、
今日もなお存続している。』
決して聖人君子ではない。またそんなものを目指す気もなかっただろう。悪いものは悪いのだと主張
するのだ。それは戦時中から戦後になっても一貫していた。そんな日本人がいたのである。「清濁併
せ呑む」というような人物であったのだろうか。

「老人の壁」 養老孟司・南伸坊 毎日新聞出版 ★★★★
養老先生の発言はいつもながらに歯切れがいい。しかし、案外と過激でもある。なるほどと聞きなが
らすこし笑ってしまうのは不謹慎でしょうか。まずもってどうすればいいんでしょうかねえ。伸坊氏
が、先生は健康診断に行かないんですよね、と言う。
『行きません。これはもうはっきりしています。健康診断を受けても受けていなくても、平均寿命は
変わりないっていう調査結果はきちんと出ています。行かないものだから、「血圧は?」とか聞かれ
ると、「ありません」って答えているんです。「なんでないんですか?」って聞かれると、「測って
ないんだもの」って(笑)。
 今の人は、検査で自分の寿命がわかると思っているようですが、神様じゃあるまいし、人の寿命が
わかるわけがないでしょう。特に悪いのは、癌の診断のあと、余命を言うでしょう。このままだと、
あと何ヵ月。今、これがだんだん縮んでるって知ってます? 昔は1年って言ったんですよ。でも1
年って言ったのに、10ヵ月で死なれると困るじゃないですか、医者としては。
 (略)
だから今、だんだん短く言うようになったの。
 (略)
放射線科の医者が僕に言ってきたもの。「先生、今に、明日って言うようになります」って(笑)。』
まあ冗談半分だとしても素直には笑えないけど、ほんとうなんでしょうね。こんな発言もありますが、
考えさせられます。ヒトはいつかは死ぬんですけど、なかなか納得できない人は多いようです。
『「75歳以上になったら積極的な治療はやめよう」って言ってる医者がいましてね。それは確かに、
僕もずっと前からそう思っていたから、病院へ行っていないんです。この歳で何か病気が見つかって
も、強いて治療はしない。対症療法はする。だから、癌になんかなったら、手術ぐらいはまあしょう
がないけど、それは治すためじゃなくて、苦しいからやるっていう。年寄りはもう、それでいいんじ
ゃないでしょうかね。』
伸坊氏が、70過ぎて薬飲まない人もいるし、60代で薬ばっかり飲んでる人もいるって発言には。
『薬なんか飲んだら、害があるだけですよ。薬が効くっていうことは、影響を受けるっていうことで
す。どんなものにも良し悪しが必ずあると僕は思っています。裏と表があるんですよ。すすめる人は、
表だけ言っているんですね。
 一番簡単な例が抗生物質ですよね。子どもに抗生物質をやるでしょう。それをやると、細菌叢が変
化するんです。子どもが風邪を引いたりなんかすれば、普通の先生だと必ず抗生物質を飲ませますね。
 お陰で何が起こったかっていうと、自己免疫疾患です。免疫が適当に抑制されるということが起こ
らなくなって、どうなるかというと、花粉症から始まって、喘息でしょう、あとは1型糖尿病。これ
は自分の膵臓の細胞を自分で壊すんですが、若年性の1型糖尿病って増えているんですよ。それから、
もっと極端なのは、自閉症です。あれは僕らの学生の頃はまったくなかったんですよ。』
うーん、むずかしい世のなかになりましたね。養殖の魚は抗生物質を投与してますからね。マグロ、
ブリなんかそうですからね。われわれはともかく、これからの子どもたちには親がちゃんとした知識
をもって注意してあげないとね。いわゆる安い魚、たとえばイワシとかサンマは養殖じゃ割にあわな
いから、逆にそういう点では安心なのかな。魚屋さんも大変だね、こりゃあ。

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島を旅するときが楽しいですね。
遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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