ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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二段ベッドで読書
若いころに旅をするといえば、安いユースホステルがよく利用された。そこでベッドといえば二段が
定番である。知らない同士がおなじ部屋で眠る。それが嫌なら旅などできない。そんな時代であった。
どちらかというとベッドで寝るのが初体験という若者が多かった。子ども部屋が一般的ではなかった
から個室気分が味わえてうれしかった。下か上かどちらにとれるかは運次第である。あるいは性格に
よるかもしれない。兄弟なら上が弟で下が兄になるだろう。上座は下か。なんとなく可笑しさを感じ
る。早い時間に到着してチェックイン。さっそく二段ベッドの下段を占拠する。ごろんと大の字にな
って仰向けに寝ころぶ。おおきく伸びをすれば自由な空間が満喫できるのだ。リュックから本を取り
出して読みはじめる。聞こえてくるのは蝉の声ぐらいだ。はるかの世界へと旅立つことができるよう
な本を読んだ。いつしか夢か現かもわからない境地にいたる。世界にはわたしのみが存在するのだ。

9312コルク人形

「猟犬」 ヨルン・リーエル・ホルスト 猪俣和夫訳 早川書房 ★★★★
ノルウェーの首都オスロから南西に100kmほど離れた小さな街ラルヴィクの警察に勤務するヴィリ
アム・ヴィスティング警部は勤続31年のヴェテラン捜査官である。そんなある日、新聞社の記者を
しているヴィスティングの娘のリーネから17年前に解決したと思われていたセシリア事件で証拠の
DNA鑑定で偽造があったという告発がなされ新聞で大々的に報じられるとの予告の電話を受ける。
まさに青天の霹靂である。当時、この事件の捜査責任者であったヴィスティングは即時停職処分を勧
告され警察官の身分を停止されることになってしまう。黙って処分を待つまでもなくヴィスティング
は事件の再調査に乗りだす。ちょうどそのころ、娘のリーネはオスロ湾を挟んで対岸に位置する土地
で起きた殺人事件を取材していた。もしこれが大事件に発展すればすこしは父への風当たりも弱くな
るかもと考えたりもする。だが独自の調査で割り出した被害者宅を訪れた際に家宅侵入犯に遭遇して
しまう。彼が事件の犯人なのかそれともたまたまの偶然なのか。こうしてふたつの事件がヴィスティ
ングとリーネを中心に展開していく。まったく別々の事件と思われたものがいつしか関連性を帯びて
くるのだった。セシリア事件での証拠偽造はどうも警察関係者が関係したしかにあったようなのだ。
ここからヴィスティング警部の調査は警察官の身分をはがされながらも本格化していく。セシリア事
件で有罪となったハーグルンとの対面場面など緊迫感あるストーリーは息づまるものがある。犯罪に
は動機がある。ヴィスティングとリーネは話す。彼女は「動機って何かしら」と問いかける。
『「動機には八つあるといつも思っている」ヴィスティングが答えた。
 「八つ?」
 うなずいて、数えあげていく。「嫉妬、復讐、金目当て、欲望、スリル、追放、狂信だ。嫉妬や復
讐心による殺人は最も簡単に説明がつく。個人的に金銭が絡んだ殺人もそうだ。スリルというのは動
機としてはあまり表には出てこない。出てくるとすれば連続殺人だが、幸いこの国ではそういうのは
多くない」
 ……
「でも、まだ七つにしかならないわよ」リーネが言った。「八つめの動機は何?」
「これはおそらく見抜くのがいちばん難しい」ヴィスティングが返す。「別の犯罪を揉み消すために
犯す殺人だ」』
本作品はかの有名なマルティン・ヴェック賞など北欧の主要な三賞を受賞している。

「地球を「売り物」にする人たち」 マッケンジー・ファンク
                    柴田裕之訳 ダイヤモンド社 ★★★★

地球温暖化といわれて久しい。ほんとうに温暖化しているのかという問題はさておく。本書はそんな
地球の様子を六年の歳月をかけて追った力作である。著者が冷静沈着に書いているのに好感をいだく。
『本書は人類が性懲りもなく温暖化を促して生み出す気でいるように思える世界に対して、私たちが
どう準備を進めているかについての本だ。気候変動がテーマではあるが、それを科学的に解明するた
めのものでもなければ、気候変動をめぐる政治についてのものでもないし、どうすれば私たちが気候
変動を止められるか、あるいはなぜ止めるべきなのかを直接取りあげるわけでもない。それでは何の
本かといえば、「人類は気候変動を早急に止めそうにない」というシンプルでシニカルな前提に賭け
た、人間のふるまいについてのものだ。』
どこかのだれかのように反対と叫んでいれば世界が変わるのであればいいのになと思う。だが現実は
そんなことでは一ミリも動かないようだ。
『本書は人々、それもおもに私のような人間、すなわち歴史的に見て、いわゆる温室効果ガス排出国
と呼ばれる、北半球の先進国の、文字どおりの意味で、あるいは比喩的な意味で高い位置を占め、ド
ライな土地に暮らす人についてのものだ。
 私は、気候変動が人間にどのような行動をとれせるかに関心がある――私たちがどのように危機に
立ち向かうかのケーススタディ、それも究極のケーススタディとして。』
そもそも地球レベルでの温暖化というのはどのくらいのスパンで考えるものなのだろうか。たとえば、
一万年単位とか。いやいや地誌レベルだと十万年が一メモリぐらいになるのか。地球はなんども氷河
期を迎えたらしい。氷河期がほんとうに来れば人類は絶滅するかもしれない。それよりいまこの地球
温暖化を考えてみるということだ。地球の平均気温は上昇している。それにつれて北極の氷床が溶け
だしている。氷河は年々小さくなっている。海面の上昇がみられる。このまますすめば確実に水没す
る都市もでてくるだろう。悲観的になるのは見方がせまい。いままで閉ざされていた北極海航路は通
年可能になるかもしれない。グリーンランドもまさにその名のとおり資源あふれる土地に変わるかも
しれない。どこかがマイナスになればどこかでプラスがある。地球温暖化はゼロサムゲームなのか。
著者は世界各地で実見してきたことを本書にしるす。読者はどう判断するのか。ここからなにを読み
とるのかは自由だ。本とは本来そういうものではなければいけないのではないか。書き手とおなじよ
うに読む側も考える力がなければならない。扇動的言辞にはもう飽き飽きしているのだ。その陰で投
資家はなにを考えどう行動しているのだろうか。
『気候変動関連投資家にとって、水は明白な投資対象だった。二酸化炭素の排出は目に見えない。気
温は抽象概念でしかない。だが、氷が解け、貯水池が空になり、波が押し寄せ、豪雨が降り注ぐとい
うのは、具体的ではっきり捉えられる。いわば、気候変動の「顔」だ。水のおかげで気候変動は実感
を伴う。』
単に水そのものだけの問題ではない。農業に水は欠かせない。こういうことを知っているのか。
『小麦を1グラム輸出するのは、水を1リットル輸出するのに相当する』
地球温暖化も投資家にとってはビジネスチャンスにすぎない。

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島を旅するときが楽しいですね。
遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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