ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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立ち飲みで読書
若いころは酒を飲むといっても、ほとんどひとりだった。安くて気楽に飲める立ち飲みがよかった。
その店は間口ばかりが広くて奥行きはない。入るとすぐにカウンターがあった。目の前には、おばさ
ん、いやお姐さんがいて注文をとってくれる。酒も徳利ではなく一合壜の栓を抜いて燗する方式だ。
サラリーマンが帰る時間にはまだ早いから客もまばらだ。すこし前のめり気味に立つ。隣では赤鉛筆
を耳にはさんだおじさんが熱心にスポーツ新聞を読みながらビールを飲んでいる。熱燗とポテトサラ
ダ。あいよ、とお姐さんは元気がいい。おにいさん学生さんなの。はい。こんなところで飲んでいて
いいの。こういうところが好きなんです。そうかい。はいよ、熱燗とポテサラ。こんもりとなったポ
テサラだった。上目遣いに見ると頷いた。文庫本を読みながら、三本ほどで勘定をして縄暖簾をあげ
て表へでる。そのとき背後から、「学生さん、またいらっしゃいね」と明るい声が飛んできたのだ。

N9747水の玉

「ゲノムが語る23の物語」 マット・リドレー 中村桂子・斎藤隆央訳 紀伊國屋書店 ★★★★
ゲノムとはなにか。DNAの上位概念ということになる。ヒトには23対の染色体がある。染色体は
DNAで構成されている。この23対の染色体を総称してヒトのゲノムと呼ぶのだ。DNAはすべて
四つの塩基A(アデニン)、G(グアニン)、C(シトシン)、T(チミン)からなる。この四種類
の組み合わせつまり塩基配列が遺伝情報をもたらしている。ヒトは60兆の細胞で成り立っている。
この細胞ひとつひとつに23対の染色体が存在するのだ。この約三〇億の塩基対のDNAからなって
いるヒトゲノムの配列は2003年にすべて解読された。このことは一般にもよく知られている。し
かしその配列がなにを意味しているか。いまだ研究途上である。すべて知ることができるのか、別の
アルゴリズムが潜んでいるのか。いまでは遺伝子の欠陥や余分にもつことによってある種の症状がひ
き起されることがわかってきている。すると当然のように欠陥のある遺伝子を取り出して正常なもの
と置き換えようとする。遺伝子操作だ。さらに生まれる前に遺伝子の異常がわかれば生まないという
選択は許されるのか。宗教的な倫理的な問題をも含んでくる。優生学が思い起こされる。決してドイ
ツだけのことではなかったということを知っていなければならない。
『アメリカで始まった断種措置は、ほかの国でも採用されていった。スウェーデンでは六万人に断種
手術が施された。カナダやノルウェー、フィンランド、エストニア、アイスランドでも、断種強制法
が制定され、実際に適用された。最も悪名の高いドイツでは、四〇万人が断種され、その多くがのち
に殺されている。第二次世界大戦中の十八か月だけで、すでに断種されていた精神障害者七万人が、
傷病兵のために病院のベッドを空けるというだけの理由でガス室に送られたのだ。』
遺伝子の多くは、糖、脂肪、タンパク質などを分解したり合成したりして、体を組み立てる素材やエ
ネルギーを生産するために働いている酵素のためのものであるとわかってきた。しかし残りの遺伝子
のうちのいくつかがヒトをヒトらしくしているのである。だがそれぞれがそのものだけで存在してい
るわけではない。どう影響しあっているのかわからないことも多い。遺伝子ですべてがわかるわけで
はない。しかし遺伝子のことをわからないでいるよりわかった方が人間の本質を知りことにより近づ
けるのではないかとも思うのがヒトの特徴でもあるのだ。すこしやわらかい話もご紹介しておこう。
どうもヒトは自分とは違う遺伝子をもつ異性に惹かれるらしい。ではどうやってそれを知るのか。詳
しく知りたい方は本書の第9染色体の章を読んでいただきたい。男性も女性も、自分と最もかけ離れ
た遺伝子をもつ異性の体臭に最も強く惹かれるという事実があるのだ。だだし、いいにおいといって
も万能のチャンピオンのにおいというのは残念ながらない。
『「だれもがいいにおいと感じる人間はいない。いいにおいかどうかは、だれがだれのにおいを嗅ぐ
かによるのだ」』
つまり相性があうとは、こういうことでもある。

「私はいったい、何と闘っているのか」 つぶやきシロー 小学館 ★★★
ふとしたときにインターネットで、つぶやきシロー氏が小説を書いていると知った。世間ではお笑い
コンビのひとりが芥川賞をとったりしていた。まあ、餅は餅屋というが、生まれたときから餅屋だと
いう方はいない。小説家もそうだ。とくに問題はない。問題はその小説がおもしろいかだ。いや、お
もしろくなくても特段問題ではない。ただ売れないというだけだ。しかし、売れるとおもしろいは連
動しているかというと一概にそうはならなかったりする。世のなかは理不尽でもある。それらを含め
て考えないといけない。そうしたことには気をつける必要がある。そんなことを気にしない人がいて
もこれも問題なしである。まずは読まないとなにも申しあげられない。図書館の貸し出しだからすぐ
というわけにはいかない。もちろんすぐ読みたいという希望もない。予約本は忘れた頃にやってくる。
これがちょうど塩梅がいい。本作品の主人公であり語り手は伊澤春男、四十五歳。東京近郊スーパー
に勤務し肩書きは主任だ。スーパーはだれもがよく知っているようで知らないことも多い。ましてや
その裏となると、ということになるのだろうか。もちろん人間関係、昇進問題、内部の不祥事などあ
るのは当然である。彼は妻帯者でもある。娘、娘、息子の三人のお父さんでもある。その家庭の事情
も読んでいるうちにわかってくるのだ。ところどころで笑えるのだが、その構造がすこし特殊である。
彼の芸風が文章に滲みでているといえばいいのだろうか。文章というより彼の漫談を聴いているよう
な感じでおかしみを感じるのだ。
『店長になれなかったからといって、慰められるほどのことではない。家族みんなは知っている。私
がスーパーうめや大原店を愛していることを。そうなのだ、私はお店に来てくれるお客さん第一主義
なのだ。自分の事はどうでもいい。店長になりたかったわけではない。そう、店長になりたかったわ
けではない。今のままでいい。何てったって、「春男は、この店の司令塔だもんな」だからだ。店長
なんかになる必要がないのだ。』
勤め人のペーソスがでている。つぶやきシローさんらしい店長のつぶやきである。

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島を旅するときが楽しいですね。
遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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