ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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「初めての真鍋島紀行」(六)
 島のおじいさんに、話を聞いたこともあった。
あるとき、いつもながらに店先で二三人して関東煮を食べていると彼はやってきた。
「何処から来たんじゃ、暇ならわしの家に来んか」
どこからか、ぼくたちを見ていたようだった。
思わず顔を見合わせて、すぐに言った。
「はい、よろしければお邪魔します」
狭い道を入ったところにおじいさんの家はあった。人の気配はなかった。
「おじいさん、お一人ですか」
「そうじゃ」
「寂しくないですか」
「寂しくなんかはない。ビールでも飲まんか」
「はい、いただきます」
おじいさんはビールの小瓶をだしてくれた。
みなでビールを注ぎあって、一口飲んだ。
おじいさんひとり暮らしにしては、部屋はこぢんまりと片づいていた。
そう思っていると、突然に話しだした。
「わしは、大阪で勤めていたんじゃ。若いときはそうも思わんかったけど、歳とると変わるな。
やっぱり生まれたこの島に帰りとうなったんじゃ。不思議なもんじゃな。
こんな田舎のそれも離れ小島に、未練はない。大阪に就職したときには、そう思っとった。
ほんまに、わからんもんじゃな」
「そんなもんですかね。ぼくらには、まだ分からないですね」
「まあ、年とったら、自然と分かるじゃろう」
「奥さんはどうなさったんですか」
「ばあさんは、少し前に死によった」
「お子さんたちはどうしてるんですか」
「息子と、娘が大阪におる。たまに、孫を連れてこの島に来よる」
と言って、少し嬉しそうな顔をした。
「島では、なにか楽しみはないんですか」
「そうじゃなあ、年寄りが集まって博打をするのが楽しみじゃなあ」
「ええっ、そんなことしてていいんですか」
「駐在もそんなことを言いよったな。
でもわしらはな、小さなビンに入った一円玉を持って集まるんじゃ。
それで、たかだか負けても何十円なんじゃ。わしは、駐在に言うたった。
年寄りのささやかな楽しみを取り上げるちゅうんか。なんなら捕まえてくれ。
博打で百円稼いだ罪によって捕まえる、ゆうてな。
ちゅうたら、駐在困った顔して、あんまり目だたんようにしてくれ言うて、
それでお仕舞いじゃった」
そう言って、おじいさんはさも愉快そうに笑った。

ぺけ

 島には、狭い畑にニンニクが植えられているのであろう、
軒先にぶら下げられているのをよく見た。
花はパンジーがそこかしこに咲いていた。
 三虎YHのおじさんも、一番行きたいところはどこと聞くと、佐柳島と答えていた。
意外な思いもしたが、でもなんとなくおじさんの気持ちが分かるような気がした。

 大きな石を敷き詰めた、急な階段を登っていくと「大天狗さん」と呼ばれているところに至る。
登っていく途中で振り返ると、霞んだような海と空が見えた。
石段に腰を下ろして、しばし汗のひくのを待つ。こんなとき、人はなにを思うのだろう。
 社務所のような建物の土間に、大きな天狗の面がかけてある。呼び名の由来であろう。
そこを通過して山径を歩いていくと、以前は建物があったであろう跡にでる。
ここまで来ると、人の気配はもうまったくない。草いきれの中では、息をするのさえ苦しくなってくる。
人はどんなところにでも住みつくものだなあ。だから、地球上はこんなに人間でいっぱいなんだ。
 生きるものがいれば、死ぬものがいる。
この島は、民俗学的に珍しい習慣を残しているという。
人が死ぬと埋葬するのだが、この島では、それとは別にお参りのためだけの墓がある。
両墓制というらしい。埋墓と参り墓、があると云うのだ。
それは船が着く港とは島の反対側の、長崎鼻という場所の先にあった。
海沿いの小石がごろごろしている、風が強く吹きつける墓地だった。
そこここに、木で作って彩色のほどこしてある人形が挿してある。雨と風で色があせていた。
対照的に、お参りに来た人が挿していった金盞花のオレンジが鮮やかだった。
 ここはもう塩飽諸島の北端、四国の香川県である。
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島を旅するときが楽しいですね。
遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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