ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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下流嗜好
世の中は自分が考えているよりも早くひそやかにものごとが進んでいくものだ。
戦前の世代などほとんど信じられないだろうが、立身出世など望まないという若者が多い。
それはそれで昔からそういう若者はいたが、彼らはちがう高みを目指していたからだ。
経済的に豊かになることと、幸福に暮らすこととは相関がないのだ、と信じていた。
だが、現代の若者はそうではなくて、別に食べていければそれで満足なのである。
デモクリトスのように生きる、ともちがっているが、あくせくするのは嫌だという。
そういいながらも社会的な庇護は拒まないという寛容さももちあわせていたりする。
つまりは、困っている人を助けるのは嫌だが、助けられることにこだわりはない。
矜持がないと言われれば、まさにその矜持をもつことじたい意味がないというだろうか。

5419ふたり

「現代日本人の意識構造[第七版]」 NHK放送研究所 日本放送出版協会 ★★★
この「日本人の意識」調査は、一九七三年(昭和四八年)から始まっている。
それ以降五年ごとに、全国の一六歳以上の国民を対象に調査が実施されている。
質問項目は「生活目標」や「人間関係」、「家族」や「仕事」、さらに「政治」や「国際化」など。
この調査の特徴的なことは、毎回同じ方法で、基本的に同じ質問を続けてきたこと。
こうした点を曖昧にしたおなじような調査もあるが、そうしたものに信頼性ととぼしい。
長く続けることによって、見えてくることはどういうことかということが本書を読めばわかる。
もちろん、変化していないことも同様にわかるということはいうまでもない。
時代の変化もあるが、同じ年代層が時間の経過とともにどう意識が変化するのか。
あるいは変化しないのか、というったことが実に興味深く感じられるのである。

「ソウル・コレクター」 ジェフリー・ディーヴァー 文藝春秋 ★★★★
車椅子の犯罪捜査コンサルタント(元鑑識官)、リンカーン・ライムのシリーズ八作目。
もうそんなになるのか、という感じだが今回はコンピュータで制御される社会というテーマ。
初登場のいとこ、アーサー・ライムが殺人容疑で逮捕されるところから事件が始まる。
本人に覚えがないが、あるゆる証拠が犯人は彼だと指し示している。
そろいすぎた証拠になぜか釈然としないライムは事件の解明にのりだしてゆく。
現代の社会はコンピュータのデータがすべて、という一面をついたものだ。
では知らないあいだにそのデータが悪意で書き換えられていたらどうなるのか。
抗弁しようにも、データがそうではないといい、人々はデータのほうを信じるのである。
ジョージ・オーウェルの「一九八四年」を思いだす読者は多いのではなかろうか。
そんな不気味さにつつまれながら読むストーリーの展開はさすがである。
データに振りまわされる人々が、なぜか検査数値を見ながら診察する医者を思いださせた。
さて現実の社会のほうはこのミステリのようになってゆくのだろうか。

「ララピポ」 奥田英朗 幻冬舎 ★★★
奥田氏得意のそれぞれ関係なさそうな登場人物がやがてつながってゆく。
三十二歳のフリーライター杉山博、暮らすのは家賃十万円の1LDKのアパートである。
その真上の階に引っ越してきたのが、二十三歳のスカウトマン栗野健治だ。
栗野がマネージャーを兼務する四十三歳の主婦、佐藤良枝の家はゴミ屋敷になっている。
フリーターで二十六歳のカラオケボックス店員、青柳光一は気が弱くていつも貧乏くじをひく。
そのカラオケ店へ女子高生とともにやってくるのは五十二歳の官能作家、西郷寺敬次郎だ。
彼は作品を口述テープに吹きこみ、二十八歳のテープリライター玉木小百合が原稿にする。
そして小百合はちょくちょく行く図書館で、杉山に声をかけられた。
こうして小市民たちはどこかで関係し合い、かなしくもあるそれぞれの生活を送っているのだ。
この書名のララピポにはこのような意味がある。小百合が白人とぶつかったときのこと。
『レディファーストの国の男性らしく、「ソーリー」と謝罪された。
「こちらこそ」と小百合も会釈を返す。
「ララピポ」白人が肩をすくめて、ハミングするように言った。
「ララピポ?」
「トウキョウ、人ガタクサン」たどたどしい日本語で言い直した。
ああそうか、「a lot of people」と言ったのか。早口なのでララピポと聞こえた。』
日本には人が多すぎてこうして生きていくしかない、という暗示の作品か。
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遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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