ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
09 | 2017/10 | 11
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

本で昼寝
夏休みはアルバイトをしてなにがしかのお金を得ると夜行列車に飛び乗るのさ、と彼は話した。
当時は、九州へ向けて深夜の線路を走るふつうの急行列車が幾本か運行されているころだった。
ザックひとつの身軽さで、都会の喧騒をのがれデッキでしばらく生あたたかい風に吹かれた。
四人掛けのボックス席にひとり、眠れるかなあ、などとつぶやきつつぼんやり窓の外をながめている。
眼前をおおう暗闇のなかから、ときおり通過する駅の明かりがいきなり飛びこんでくる。
ウヰスキーのポケットビンをとりだし、蓋についたプラスチックのちいさな猪口でぐびっとのむ。
なんどか咽もとを熱い流れがくだっては消えてゆくうちに、いつしかビンは空っぽになっちまった。
眠れぬままに眠りつつ、夢みるままにいつしか海峡をこえ時をこえて九州へとたっしていた。
列車を降りたってふと足をむけた府内城公園に、本を顔にかぶせて木陰に寝そべる男ありける。

2741木陰

「酔いどれ列車、モスクワ発ペトシュキ行」 ヴェネディクト・エロフェーエフ 国書刊行会 ★★★★
共産主義時代のソ連で、地下出版のころから文壇で評判になった作品だということだ。
酔いどれヴェーニャの旅のありさまが描かれるのだが、これはどんな意味があるのだろうか。
共産主義の治下、政治批判をすることはある意味死を覚悟しなければならなかった。
『ああ、それからまだ、ヘーゲルがいたんだ。これは、よく憶えている。ヘーゲルはこう言った。
「異なる程度と差異の欠如との間には、程度の差以外に、差異というものは存在しない」
つまり、これを分かりやすく言葉に翻訳すれば、「いまどき、飲まない奴がいるか?」ということだ。
何か飲むものはないか、ピョートル?』
こうしてウォトカを飲みつつ列車のなかの乗客と議論しながら旅は続いてゆく。
なぜ人は飲むのだろうか、というよりロシアでは飲まずにはいられないのかという主題がある。
厳しい冬の寒さもあるだろうが、体制への不満、人民の間に蔓延する賄賂や汚職の現実等々。
それらを忘れさせてくれるのがウォトカというわけだが、はたしてそれでいいのだろうか。
ロシア文学といえば、ゴーゴリの「外套」をわたしなどすぐに思いうかべるのだ。
市井に暮らす貧しい人々のあいだであろうとも、生きるという事実は変わることがない。

「リンカーン弁護士」(上)(下) マイクル・コナリー 講談社文庫 ★★★★
今回はハリー・ボッシュのシリーズではなく、刑事弁護士を主人公にしたリーガル・サスペンスである。
事務所を持たずに、高級車リンカーン・タウンカーの後部座席をオフィースとしている。
こうすれば経費削減、こまわりもきくという中年の「リンカーン弁護士」ミッキー・ハラーの物語り。
アメリカの弁護士は日本とはちがって数も多ければ、その仕事もかなり細分化されている。
(だから当然ながら、日本ほど社会的地位は高いとはいないし、尊敬もされていなのだろうか?)
そのなかでハラーは刑事事件専門でろくでもない男たちを顧客として日々奮闘しているのである。
ある日、彼のところに暴行容疑で逮捕された男の弁護依頼がとびこんでくる。
容疑者は金持ち相手の不動産会社の女社長が溺愛しているひとり息子だった。
彼は無実なのかということではなく、無実と陪審に思わせることが必要なのだ。
だが、この裁判はハラーが思いもしなかった方向へと進んでいくのである。
『父の言ったことは正しかった。無実の人間ほど恐ろしい依頼人はない。
そして無実の人間ほどこちらに傷あとを残していく依頼人はいない。』
刑事弁護士という職業はどこに軸足をおくべきなのかを考えると、なかなかにむずかしいものだ。

「午後6時の経済学」 竹内宏 朝日新聞出版 ★★★
初めて竹内さんの「路地裏の経済学」を読んだときのことをいまでも覚えている。
経済学は机上の空論でしかない(現実を後付けでしか説明できない)と感じていた。
ものの見方次第では、こういったことから経済現象を説明できるのではないですかという。
そのあたりまえの感覚が逆に新鮮な驚きを与えてくれたのを忘れることはできない。
『小泉さんが総理大臣になった頃には、特別会計の中に郵便貯金特別会計や簡易生命保険及
郵便年金特別会計があり、そこから道路公団や本四架橋公団などの特殊法人に巨額な資金が
投融資された。77の特殊法人の下には子会社を中心として3000の関連会社がぶら下がり、
巨大な天下りシステムが形成されていた。』
天下りシステムもお金の裏付けなくしては成立しないし、恒久的に維持できない。
『小泉さんは官僚機構と真正面から戦うと敗れることを知っていた。彼は資金源を締めれば
特殊法人が干上がって、官僚機構の基礎が崩れると考えた。それは郵政の民営化だった。』
つまり、郵政民営化とは巨額な郵便貯金を官僚のいいように自由に勝手に使わせないということ。
こう理解できると、問題がすっきりとわかってくるのではないか。
郵政民営化の問題からは、郵便貯金をめぐる利権獲得戦、否、資金源争いの様相がみえる。
そしてそのつけは、すべて国民(税金)にまわりまわってくるという仕組みになっている。
スポンサーサイト

テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
→http://moucheokuno.blog26.fc2.com/tb.php/869-4313d0f4
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

ムッシュ

Author:ムッシュ
島を旅するときが楽しいですね。
遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

カテゴリー