ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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早春紀行(三)上井駅
 ひと気のない余部駅でプラットホームの柵にもたれて海を見ていた。
どんよりとした天候で肌寒い風が吹いている。
今日はどこへ行こうかと考えるでもなくぼんやりとしていると、がたがたと列車がはいってきた。
デッキ横から列車内に入ると鳥取方面へ行商にでかけるらしいおばさんたちがいた。
脇をすり抜けて四人掛けの窓際にすぎゆく後方をみる位置に座った。
どうしてだろう、いつも気がつくと後方を向いて座っている。
どちらを向いて座るかでその人の性格が推察されたりするだろうか。
ばかばかしいと思ってみても、外向的性格、内向的性格といったことを考えている。
 以前見た子供たちは前方を向いて、ときには窓から体を乗りださんばかりにしていた。
ぐんぐんと自分に迫ってくる物たちに対して歓声をあげていた。
山陰線の列車にゆられながらぼんやりと考えていた。
 昨日のUさんとの邂逅は、ぼくの人生に何かを示唆しているのだろうか。
不思議といえばそれだけだが、単なる偶然ではないと考えることもある。
このようなとき、科学的ではない思考が浮かぶことはよくあることだ。
そこに人生の不思議を感じたとすれば、ぼくがすでにそのような思考を自身のうちにもっていたのだ。
出会いはその思考が意識に昇ってくるきっかけになったにすぎない。
だとしても、なぜそのことが契機となりえるのかという説明にはならない。
 窓の外のまだ春をも予感させない風景はどんどんぼくの後方へ去っていく。
つよい潮のにおいが人間臭く感じられた。
大きく胸いっぱいに潮風を吸いこんで、ふーっと一息ついたら少し落ち着いた。
こんなときは眠るのがいい。なにか夢を見たようだが、思いだせなかった。

2124動輪

 いつしか列車は上井駅に着いた。ふいに倉吉の町を歩いてみようかと思った。
山陰では落ち着いた雰囲気をもった、史跡などもある町だ。
以前設計会社に勤めていたころ、出張できたことがある。
駅の周辺はなんの変哲もない。どこの田舎にでもあるような駅だ。
 急ぐ旅でもなし、知らない町をぶらぶら歩くのもいいだろう。
バスに乗るのはけっこう面倒なので二つや三つの停留所ぐらいならいつも歩いてしまう。
歩きながら、前後左右をながめつつすすむ。
とても気分がいいし、歩いているから寒さも気にならない。別に方向を間違ったってかまわない。

 少し疲れてあたりを見まわすと現代風な喫茶店があったのでドアを開けた。
なかにはコーヒーの香りが強く漂っていた。
「ホットコーヒー」と頼んで、店内を見わたした。
むき出しの木肌が雰囲気をだしている。音楽もボリューム低く、感じがいい。
ジャズらしいが、よくは分からない。でも静かで落ち着ける。こんなことは珍しい。
たいていは音楽が騒々しいか客がガサガサしてるかどっちかだ。
なかなか洒落た店なんだなあと感心していると、ママさんらしい人が問いかけてきた。
「学生さんですか。それも関西の方ですか」
「ええ、そうですけど、どうして分かるんですか」
「いえ、別にそういうわけじゃないんですけども。お見かけしたところ、ご旅行のようですし。
この時期は学生さんが多いですし、関東の方というのは滅多にいらっしゃいませんからね。
うちの息子が大阪の大学に行ってるんですよ。なかなか帰ってきませんけれどね」
「今はどこの大学も学園紛争で大変です。勉強という雰囲気やないですしね。
ぼくはそれが嫌でこうして旅行してるんです」

 ほんとうに学園紛争にはうんざりさせられる。
もう少しお互いに建設的になれればいいのだが。しかし、それは無理というものだ。
相手の言うことなど端から聴く気持ちをもっていない。
今まで対話なぞというものに無縁できたのに、急に対話集会といったってできるはずがない。
対話集会とは名ばかりで、実際は弾劾裁判とでもいえる代物であり雰囲気なのだ。
政治の世界を見ればこのことがよく分かる。何が現状では最善か、という視点はない。
社会党や日本共産党と同じで、硬直化した教条を繰り返えすばかりだ。
あなた方は面子にこだわっているだけだと言いつつ、自らが面子にこだわっている。
とにかく反対なんでも反対でフォークソングにかっこうの素材を提供している始末だ。
子どもが親の性格や行動様式から完全に抜けられないのと同様なのだ。
批判者も批判しながら同じような弊に陥ってしまっている。

「これも勉強のうちなんでしょうかねえ」
「そうかもしれません。でも、困ったものです」
と言いつつ、別にぼくは困ってなどいないのだ。
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島を旅するときが楽しいですね。
遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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