ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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早春紀行(六)城福寺ユースホステル
 今日は仁摩にある「城福寺ユースホステル」に泊まる予定だ。
以前旅行中に知り合った人に噂を聞いて行ってみようかと思った。
常連と呼ばれる人たちがいるらしいから、ある感性の人々には居心地がいいのだろう。
ぼくにとってどうかは知れないのだが、なにかしらの魅力があるのだろう。
なにもない片田舎の地にその寺はある。
 出雲市を過ぎ大田市をへて仁万駅にたどり着いた。
駅前にはなにもない。さてどうしたものかとハンドブックを開いて道筋を確かめる。
バスよりは歩いたほうが早いだろう。
徒歩で15分くらいのものだ、おおよその方向を見定めて歩き始めた。
 アスファルトの道路を越えて田圃沿いのややのぼり加減の道を歩いていくと、
木陰の向こうに寺の屋根が見えた。門を通って玄関で声をかけた。
あたりはひっそりと静まり返っていた。奥さんらしき人が出てきて招じ入れてくれた。
庭に面した廊下を通って部屋へと案内された。

 部屋に荷物を置いて、ぼくはごろっと仰向けに寝ころがった。
高い天井に張られた板目が眼にはいる。
うねる波模様を描いているかのようにぼくには見えた。
いつか遠い昔にこんな光景があったなあと、そんな思いが湧きだしてきた。
 ぼくが幼かった頃のことだ。寒い冬のことだ。手に霜焼けをつくっていた。
小学生の頃に感じた心細さがじんわりと胸の内に広がってゆく。
布団のなかから顔だけ出して見つめる天井の木目は、
いつも細くなったり太くなったり揺れるように変化してぼくの心を不安にさせた。
間隔が細くなっていくと、それはなにかよくないことが起こる兆候だ。
なぜかは知らないが、かたくそう信じていた。
胸が締めつけられて苦しくなるような気持ちのうちに、広くなって欲しいと強く念じる。
そうすると、間隔は徐々に広くなっていく。念じる力を弱めるといつ狭くなるかもしれない。
そう思うと、緊張もした。やっと落ち着いて眠れると思っても次なる不安が湧いてくる。
今度は夢にまた現われるのでは、という不安にたちまち襲われる。
思わず頭の上に布団を引っ張りあげて、目をつぶる。
すると、隙間の空いた足元から冷たい空気が入りこんでくる。
それを足の先で布団をつかみ押し下げて隙間を閉じて防ごうとする。
そんなふうにごそごそしていると、いつもうるさいと叱られた。
ぶつぶつ言いながらいつしか寝入って気がついたときはいつも朝だった。
そして木目のことも忘れていた。
 そんなことがあったなあとぼんやりと天井を見ながら考えていた。

 夕食の知らせがきて食事をする部屋にいった。
今夜の宿泊者は数人しかいないとのことである。
食事の後、風呂に入り、ストーブのついた部屋で世間話をして過ごした。
移動距離が長かったせいか疲れたので先に休ませてもらった。
ゆっくりお休みください、と声をかけられた。
 畳敷きの部屋で落ち着いて眠れた。
不思議に安らかな気分で、布団のなかで伸びをすると気持ちがよくなった。

2134レンガ塀

註:城福寺ユースホステルはいまではYHをやめてユースハウスとなっているようだ。
そのサイト内の旅人たちの思い出の中に、「坂上さんのアルバム」というのがあった。
もしやと思って見ると、やっぱりぼくの知ってる坂上氏にまちがいはなかった。
ちょっと斜にかまえたシャイな笑顔がなつかしい。
彼からこの城福寺YHのことを聞いたのだったろうか、いまでは確かめることもできない。

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遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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