ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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早春紀行(七)フロインドリーブのパン
 ゴトゴトと音がしたようで目が覚めた。
枕元の腕時計に手を伸ばして文字盤を見ると11時を過ぎていた。
これはいかんと起き上がり、急いで布団を畳んで押し入れにしまった。
顔を洗って、昨夜食事した部屋にのっそりと入ってゆくと、
「おはようございます」と先に声をかけられてしまった。
「よく眠っていましたね。あまりに気持ちよさそうに寝ているので、起こさなかったんですよ。
さあ、こちらにきて、ちょっぴり遅い朝食にしませんか。おなかが空いたでしょう」
「すみません。よく寝てしまいました。もうお昼ですよね」

部屋のなかには、香ばしいパンの焼けるにおいがしていた。
においがする方を見ると、山食のトーストが皿にのっている。
こんなパンを食べているのかとぼくが不審そうな眼をしていたのだろうか。
「このパンはね、彼が神戸からもってきてくれたのよ。あなたもどうぞ」
と、またしても先をこされた。
「いやあ、おいしそうなにおいですね。ぼくも神戸ですけど、このパン高そうですね」
「そうやな、ちょっと高いな。フロインドリーブで買うてきたんや。
でも、ほんま、おいしいんやで。まあ、遠慮せんと食べたらええわ」
「じゃあ、ひとついただきます」
と言って、ぼくはトーストを一枚とってかじりついた。
かりっと焼けていて、そのくせもちっとした食感もあり、イーストの香りが食欲をくすぐる。
うまい。おなかも空いていたんだ。ペアレントさんが紅茶をいれて、ぼくにだしてくれた。
すこし砂糖を入れて飲むと、口中に渋みがゆるやかにひろがった。
「トーストも、紅茶もおいしいですね。寝坊してよかったみたいです」
ぼくが嬉しそうに言ったのだろうか、みんなが明るく笑い顔で応えてくれる。
ユースのお母さんは、やさしくこうも言ってくれた。
「それはよかったわね。もしなんなら、カレーライスもあるわよ。
若いんだから、食べるわよね」
「そうそう、若者は食べなくちゃいけません」
「ええ、申し訳ないみたいですけど、いただきます。
ほんとは、おなかがぺこぺこなんです」
照れくささをかき消すように、頭をかきながらぼくは言った。
奥へと立ったお母さんの姿が見えなくなると、カレーの香りが静かにただよってきた。
皿一杯に盛ってくれたカレーはうまそうで、思わずお腹がなりそうで困った。
かしこまって皿を受け取り、スプーン一杯にすくって口へほうりこむ。
ほんまにうまいなあ、こんなにうまいカレーを今までに食べたことがない。
初めての経験やなあ、というような顔をしていたのだろうか。
その場のみんなが口々に言った。
「ほんまに美味しそうに食べはるね。見ていて、思わず引きこまれそう」
「そうやなあ、こんなにおいしそうに食べてくれたら、お母さんほんまに嬉しくなりますよね」
「そうね。つくり甲斐があった、というものですなあ。お代わりもあるわよ。
若いんだから、どんどん食べなさい」
なんだか気恥ずかしくなってきたが、思い切ってもう一杯お代わりをした。
なごやかで、穏やかな人たちに囲まれているぼくは幸せだった。

2152窓外の望み

「これからどこ行くのん」
神戸の彼が聞いた。
「今日は津和野に行って萩泊まりの予定なんです。
明日は山口を通ってそのまま山陽方面へ抜けるつもり。
広島のMGユースへも初めてやけど行こうかなと思ってるです。
最終は岡山の真鍋島にある三虎ユースというコースやけど」
「まだ旅は始まったばかりちゅうことやな。けど、けっこう旅してるんだ」
「いえ、そんなことないけど、おもしろそうなところを探して旅行してるんです。
いわゆる観光地みたいなところには、あまり興味ないんです。
それに人が多いのは、どうも苦手ですしね」
「ふーん、いろいろ知ってるんやな。でも、萩は女の子が多いので有名やで。
それにあそこのユースのペアレントは、厳しいので有名やから気をつけや」
「そうなんですか、でもほかにユースがなかったから。
ここは、前に真鍋島で会った人に聞いて来たんですよ。名前は忘れてしまいましたけど。
ハンドブックで見たら、特に観光地でもないところにぽつんとあるし、
なんかおもしろそうやなと思ったんです」
「それで、実際に来てみてどんな印象ですか」
「そうですね。まず、トーストがおいしいです。さらに、カレーが最高」
「それに、紅茶も香り高いで」
とすかさず彼が言って、みんなで大笑いした。
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島を旅するときが楽しいですね。
遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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