ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
09 | 2017/10 | 11
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

早春紀行(十一)広島の街
 朝になったら外はまぶしいくらいに明るかった。
瀬戸内側は気分までもがちがってくる。
山陰、山陽の呼び方でそう思えるのだろうか。
そういった面もあるだろうが、陰と陽の比喩に影響されているだけではない。
ユースの建物を出てうねるなだらかな坂を下っていく。
静かな住宅地を抜けると、広い道路に突きあたった。
今日は天気もいいし、平和公園に行ってみよう。数年前にも訪れたことがある。
広島は日本人にとっては、ただ通り過ぎることのできる街ではない。
ぶらりぶらりと気ままに道路沿いを歩いていった。
途中で、道を広島城の方向へと変えた。
 城跡の公園は木陰もあり人もまばらでこころ落ちつけた。
屋敷跡の礎石らしきものが点在する場所にいきついた。
平らな大きな石に腰をかけた。ひんやりした石の冷気が伝わってくる。
耳には小鳥のさえずりが聞こえている。
繁華な場所や名所よりこんな場所がぼくは好きなんだな、といまさらながらに思う。
生きている実感はこんなとき感じられる。ぼくがぼくである、と強く感じられる。
 この狭い公園にはぼく自身も知ることのできない生物が、生命が満ちあふれている。
ほんの一握りの土くれの中には、数億いや数十億以上の生物が生きているはずだ。
そう考えると、人は自分も気づかぬうちに傲慢になってしまったと気づかずにはいられない。
一本の草にも多くの虫たちが命の糧を求めている。
人はこうしたことを知っている。それでもなおヒトの命は地球よりも重いという。
この言葉はどう理解すればいいのだろうか。
ぼくにはわからない、わかることができない。
地球はヒトだけが生きている惑星ではない。
地球上の生物はヒトのために生きているのではないはずだ。
「種の保存」といってみたって、いまのぼくには無意味に響く。
「種の保存」とはぼくにとってどういう意味があるのだろう。
 ぼくは意味なく生きてはいない、といえるのかと反問してみる。
では、ぼくはなんのために生きているのか。
ぼくは何をなそうとしているのか。
ぼくはいったい誰のために生きているのか。
誰かのために生きることができるのか。
ぼくが誰かのため生きたいと思うようになるとは、正直信じられない。
そんな自分がなぜか悲しくも哀れにもみえてくる。
 視線を足元に落とし、しばらくじっとしていた。
風はこんなにも気持ちいいのに…。考えは同じ道を生きつ戻りつするばかりだった。
めまいすら覚えそうだった。答えを性急に求めても得られることはないのだろう。
そのことは、漠然とはわかる。少しでも近づくためにはどうしていけばいいのか。
いつまでも考え続けるしかない。答えが得られるかどうかもわからない。
けれど決して忘れて生きられることではない。
 考えるだけでとどまってもいられない。
生きているということは時間軸に沿うことだからだ。
常になにか行動を起していかなくてはならない。言説だけで生きられるわけもない。
ああだこうだで人生が終わってもつまらない。
日常の生活のなかに思想はあらわれる。
あらわれなければ、なんの思想の意味を見いだせるだろうか。考えは尽きることがなかった。

 思いあまってふと顔を上げれば、かすむ陽光のなか前方に原爆ドームが見えた。
立ち上がってザックを肩にして歩きはじめた。行き交う車の音も低く聞えるだけだ。
いつのまにか平和公園の近くまで歩いてきていた。
欄干にもたれて、市電が通る橋の上から真下に流れる川を見下ろす。
公園の横をいまもかわらずに川は流れている。
 原爆投下の時からもう30年近くが過ぎている。ぼくはいま二十三才だ。
この川には多くの人のこころが沈んでいったんだ。
人の思いって水底に沈むのか、空の上に昇るのかどちらなのだろう。

F0068太田川
スポンサーサイト

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
→http://moucheokuno.blog26.fc2.com/tb.php/929-d6bbdcf8
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

ムッシュ

Author:ムッシュ
島を旅するときが楽しいですね。
遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

カテゴリー