ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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早春紀行(十五)料理のエコロジー
 ぼくが感心もし、すばらしいと思ったことがある。
それはなんでもないことなのだが、料理につかう野菜を無駄に捨てない、ということである。
例えば、キャベツなど表面の傷んだ葉をなにげなくむしって捨てる。
それを戒めているのである。ふつうに千切りとかに使えなくても、スープにはつかえる。
けっして食べ物を無駄には捨てないでおこう、という姿勢にはおおいに共鳴した。
エコロジーの発想が自然に生まれているのである。
 そう思うと、老人の「もったいない」という言葉の含蓄がぼくたちにせまる。
「もったいない」は、大自然に対して発せられていることがわかるのである。
地球上にはヒトのみが生きているのではない。
自然の循環系の一つであるヒトが本分を忘れないようにとの、呪文ともとれるのである。
「もったいない」をけちくさいという奴もいたが、なにをかいわんやである。
そんなことをいう奴に限って、やるべきことをやらないで理屈ばかりこねる。
理屈をこね続けるならまだしも、最後には論理に破綻をきたしてか強弁にはしる。
当然、筋は通らない。理屈もその場限りのものだから整合性がない。
さらに加えて悪いことに、彼自身そのことに対する自覚がない。
だから、同じ誤りを繰りかえす。
そんなだから、周囲は自然と覚めた目で彼を見るようになってくる。
そのとき彼はその原因を周囲のせいにする。
原因を外へと求めるから被害妄想的な意識をもつことになる。
誰のことを言っているのではない。
ぼくがそうならないようにと、自分を制しているのだ。

2359たまねぎ

 静かな山間のユースでは、夜も静かに更けてゆく。
明日は真鍋島に行けるのだと思ったら、うれしくなってきた。
なかなか寝つけない。夜具のなかで反転しながらいろんなことを思いおこしていた。
 善きにつけ悪しきにつけ、いろんな人がいていろんなことが起こる。
いままではそのことの善悪、良否、その人の好悪、賢愚などで判断していた。
否、それが判断基準だと思っていた。もちろん、自分は埒外にいる。
思いあがっていた。世界を知らなさすぎた。澱んだ水になっていた。
苦々しさがこみ上げるなかで、ぼくはいったいこれからどうなるのかという不安もあった。
怜悧な水がぼくに流れこんできている。
冷たさに身を震わせながら朝を待った。
いつしか、まばゆい朝の光のなかで眠っている自分にゆきついた。

 一晩寝たら気持ちもすっきりとした。冷たい水で顔を洗ったら、おもわず身震いがでた。
おはようの言葉が飛び交う食堂で朝食の席について、パンを食べながら考えた。
なにが人の幸せなのだろうか。それは誰にも決められることではない。
幸せって、こうして朝食にありつけることがそうだという人もいるかもしれない。
いろんなささやかな、ひっそりとした、幸せがあるのだろう。
すべての幸せの形を知ることはできない。経験することも叶わない。
知る必要もないのだろう。自分の幸せの形を求めて生きよう。
人を羨むことは、意味のないことだと知らなければならない。

 その人は突然声をかけてきた。
「今日はどちらへ行かれるのですか」
ぼんやりと考えごとをしていたので、驚いてふりむいた。
「あっ、そうですね」
「ごめんなさい。驚かせたかしら」
瞳を見ひらいてこちらを見つめる。ヘルパーさんらしい女性だった。
黒髪を束ねてポニーテールにしていた。化粧気のない顔は明るく輝いてみえた。
けっして美人という容貌ではないが、人を引きつける魅力があった。
エプロンの前ポケットに両手を入れながら小首を傾げていた。
「すこし、びっくりしました。今日は三虎ユースに行くんです。
瀬戸内海の島にあるんですけどね」
「三虎ユースって、この近辺では有名ですものね。たしか真鍋島だったかしら。
花の島なのでしょう。今だとどんな花が咲いているのかな」
「今ならマーガレットぐらいでしょうかね。
でも、誤解があるといけないのでいいます。
島に咲いている花は観光用観賞用に植えているんじゃないんです。
温暖な気候を利用して栽培して、京阪神に出荷するための花なんです」
「そりゃあそうよね。でも色とりどりのきれいな菊が満開の写真を見たことがあるわ」
「そのときはきっと菊の市場相場が暴落して、島の人たちは泣いていたんでしょうね。
相場が下がりすぎると運賃も出ないって言ってましたから、咲かせてしまうんですね。
ふつうは蕾のあいだに出荷して店頭で咲きはじめるということでしょうね」
「そうなんだ」
「観光客は無邪気にきれいだって喜んでいるけど、島の人たちの気持ちは複雑ですよね」
「でも、花の立場だとどうかしら。生まれた島で一生暮せて幸せかも。
切られて、売られていかないで済んだんですものね。フッフッフ」
と、ちょっぴりいたずらっぽく言うのだった。
「そうですよね。今度そんな話を島の人にしてみようかな」
「それは駄目よ。そんなことしたら気を悪くすると思うわ」
「それもそうですよね。反対に怒鳴りつけられるかも知れませんね。
バカヤロウこっちは生活がかかってるんだ、なんてね。ハッハッハ」
自分では気がつかなかったものの見方を知ることはうれしい。
やはり素敵な人はちがった考えかたをするものだ。
そう思って彼女をみると、やはり美しく見えた。
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島を旅するときが楽しいですね。
遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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