ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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早春紀行(二十一)若さゆえに
「どうやら食事の用意ができたようですよ」
K君の声でわれに返った。いつのまにか大勢の若者が集まってきていた。
やっと食事の準備ができたらしい。
「大海原」には若さと熱気が充満していた。
ぼくはきょろきょろと見回すのだが、その人を見つけることはできなかった。
まあ、いいさ。ミーティングの時にはまた会えるだろう。
すこしがっかりしたら、急にお腹がすいてきた。
さあ、めしだめしだ。久しぶりの「メルルーサのフライ」はうまかった。
カレイの煮付もなかなかいい。腹が減っては戦さができん、というではないか。
ミーティングも腹ぺこじゃ、らちかんぜ。
 喧噪のうちに若者たちの夕食がはじまった。
大きな釜がつぎからつぎへとからになる。あらためてミーティングのことを考えた。
司会役がめぐってきたことは、幸か不幸か。
ぼくが目だつことはできるが、彼女のそばの席にすわることは不可能である。
そう考えるとなんだがどきどきしてきた。
焦るんじゃない落ち着け、と自分に言いきかす。
こんなとき、ぼくはからっきし意気地がない。
他人のことなら大胆な意見もいえるのに、どうしたことだ。
それを悟られまいと、きわめて平静を装いながらメシを何杯もおかわりした。
見知った顔が幾人もいた。みんな元気そうに明るく笑っている。
 食事が終って、後片づけの慌ただしさのなかを時間だけがながれていく。
食器を片づけながらも、視線はあたりをさまよっていた。
なにかしら落ち着かない気分だ。ミーティングの時間は刻一刻と迫ってくる。
壁の時計の音がやけおおきく聞える。
ひとり階段に腰かけて頬杖をついていた。胸騒ぎのおさまらない時間だった。

0115三虎丸

 ふりかえってみると自分でも不思議なのだが、ぼくには司会役などつとまらないといつも思っていた。
中学生のときに、生徒会役員の選挙に推薦されることがあっても、頑なに固辞した。
しかし逆に応援演説はそんな後ろめたさもあってか簡単にひきうけた。
壇上で友人の応援演説をするのは気楽さもあって気分がよかった。
晴れ晴れとして大胆な気持ちになれた。
ぼくは候補者をふつうに褒めるなんてことはしなかった。まず、彼を否定した。
彼はそんな役のこなせるような人物ではない、と断言した。
そこで、では彼以外に適任の人物がいるのかと問うた。しかし、いないではないか。
彼を否定したぼくが間違っていたのだ、とあっさりと謝罪した。
彼は適任とはいえないが、誠実で努力家で熱意がある。
最善ではなくても次善をとることができるのではないか、と訴えた。
しかし彼は落選した。ぼくは、落胆した。ぼくこそ適任ではなかったのだ。
そんな過去の経緯から、そういった役はやらないと心に決めていた。
 それがある時、ひょんなことから子供会の世話役をひきうけることになった。
それで急に野外活動の指導者育成講座に参加することが決まった。
六甲山の中腹、摩耶山にその宿泊施設はあった。
当時ぼくはまだ二十歳になったばかりの頃で、会社に有給休暇を申請して認められた。
二泊三日の研修会、参加者は短大生のグループとぼくより年上の社会人たちだった。
歌唱指導、ゲームのやり方、オリエンテーリング、簡単なロープの結び方などを教わった。
野外でのアーチェリーの実射や、テント張りの実習もあった。
小さい頃に、ボースカウトの制服をみてその姿に憧れもあった。
そんなことを思い出したりして、あたかもボーイスカウトに入ったような嬉しさもあじわった。
宿舎はお決まりの二段ベッドの八人部屋だった。
眠れないままに夜遅くまで話をした。
ウィスキーの小瓶を持ってる人がいたりして、彼がそっと見せると小さな喚声がわく。
キャップの蓋で、ほんの少しずつ回し飲むウィスキーがからだもこころも熱くした。
最後の夜にはキャンプファイヤーがあり、薪がぱちぱちと燃えさかっていた。
炎を見つめていると、子供の頃に戻ったかのように感動が体内から湧きあがってきた。
素直な気持ちになって、こどもたちにもこんな感動をあじわってほしいと思った。
 そんななかで、歌を歌ったり、ゲームをすることの意味を肌で感じた。
この体験は引っ込み思案なぼくのこころを、柔らかくほぐしてくれた。
実践する機会もあまりなかったがそれでもいい経験にはなった。
こうしたことが、ぼくがぼくなりのミーティング感をもつようになった遠因なのだろう。
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遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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