ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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早春紀行(二十六)グルーミング不足
 ぼくは席替えゲームをはじめます、と高らかに宣言した。
ゲームのルールは簡単である。各人に任意の記号、あるいは符牒を割りふっていく。
たとえば、果物、野菜、魚などの名前である。それにグループ名も加えれば、変化に富む。
果物かご、野菜サラダ、大漁網とかである。名前を呼ばれたら席を移動するのである。
ぼくの口からなにがしかの名前が叫ばれるたびに、若者たちはがやがやと移動を開始する。
一目散に移動する者、まわりの動きに翻弄される者、きょろきょろと落ち着かない者もいる。
なんどかの席替えで要領もわかってくる。人模様がすこしずつ変化をみせはじめた。
ひとところに留まれない人々は鰯の群れのように右往左往した。
ぐるぐると動き回って、やっと安住の地をみいだして落ちついてきた。
上気した若者の頬は健康そうにかがやいている。
からだを適度に動かしたことで、気持ちもにリラックスしてきた。
「足のしびれもとれたようですし、これからミーティングの神髄にふれてみましょう」
 すこし不安げな顔も見てとれる。これからなにが始まるのだろうといった顔だ。
ぼくの見知った顔は、にやにやと笑っている。なにをいうのか知ってるぞと。
「それはですね、スキンシップなんです。これがいかに重要なのかを話したいと思います。
いろんな疾患がありますが、なかにホスピタル症候群というのが知られています。
簡単にいうと、孤児院などで育てられた子供は栄養状態、衛生面に問題がなくても、
発育に異状があったり、ひどいときは死に至ったりすることがあるんです。
原因を調べてみると、それは乳児のときに母親、この場合は世話をしてくれる女性ですね、
との肌のふれあいや、声をかけてもらうことが極端に少なかったということがわかったのです。
また猿の人工飼育でも、小猿はいつもやわらかなタオルにしがみついていたといいます。
針金でできた哺乳瓶の母ザルと、タオルで巻かれた母ザルをふたつ並べます。
ミルクを飲むときは哺乳瓶のサルのところにいますが、飲み終わるやいなや、
それこそ一目散にタオルの母ザルのところに戻ってしがみついていたというのです。
動物園などで猿山にいくと、いつもといっていいほどサルの毛繕い行動がみられます。
俗にいうところのノミ取りです。霊長類学ではグルーミングというんですけど。
これにも同じような意味合いがあるんでしょうね。
互いに触れあうっていうことが精神発達や安定におおきな意味をもつということがわかってきています。
でぼくの解釈ですが、大人になってもそういうことは必要ではないかと思うんです。
それにこういう事実を知らなくっても、自分の日常経験からある程度はわかりますよね。
たとえばひとりでいるときなど、知らぬまに手を自分の太腿の間に挟んでいたりしますね。
これって気持ちいいですよね。変な意味じゃなく、ほんとうに。
でも、どうしてかなって思います。こうしていると、なにかしら落ち着くものなんですね。
これはつまり、自分で自分とスキンシップしているのではないかと思うんです」

5226毛づくろい

 熱心に聞いていた女性が、さも感心したようにうなずきながらぽつりと言った。
「そういわれれば、そうですね。私も思いあたります。なるほどねえ」
これは予想外の反応である。ぼくの期待した反応を完全に裏切っている。
「あのう、あまり感心しないでくださいね。これは学校の講義じゃないんですから。
それにこの後の説明が苦しくなってきますから、あまり生真面目に受けとらないように」
すると、驚いたように。
「ええっ、じゃあ、全部ウソなんですか」
ウソとか、ほんとうとかっていうことじゃないんだけど…。
「そういうことじゃないんですよ。全部、ほんとうのことなんですよ。
ほんとうかウソかというのは、ちょっと語弊があるけどね。
ぼくなりの自己流、こじつけ解釈ではあるかもしれませんが…。
でも、なんとなく大切だなあってわかってもらえたんじゃないかと思ってます。
しかし、法律の許す範囲でやりましょう。満員電車のなかでの実践はまずいでしょう」
みんなは、笑った。
「逮捕されてから、これはスキンシップだ、といっても通りませんからね。
これからするゲームはそこのところの衝動を発散するようにできています」
男はつらいのである。とくに若者は悩む。
「これは合法的です。安心してください。でも、なんだか無駄話がおおいですね」
ぼくを励ますように声をかけてくれる人もいる。
「いいえ、面白いです。でも、ほんとうと冗談の境目がわからないですね。
ウソっていうのとはちょっと違うんですね、けどそのあたりのバランスが絶妙です。
屁理屈っぽいけど、聞かせますよね。ついつい引きこまれて聴いてしまいます。
わたし、ユースのミーティングでこういうのって初めてです。ほんと珍しいですね」
 これは褒められてるのか、けなされているのか彼女も絶妙だ。
もうかれこれ30分以上も経つのだが、席替えゲームしかしていない。
これがぼくのマイペースなのだろうか。なにがしかの説明をしなければ先へすすめない。
まさしく日本人である。こんな笑い話のような例えもある。うろ覚えではあるが。
イギリス人は歩きながら考える。ドイツ人は考えてから歩く。フランス人は歩いてから考える。
イタリア人は喋りながら歩く。そして、日本人は言い訳をしてから歩く。
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遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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