ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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早春紀行(四十一)ヴィヨン詩集
 岩波文庫にはさんであった一枚の栞があった。
そこにはヴィヨン詩集を紹介する内容が記されていた。
ギロチンにかけられた人のイラストが描かれた、ちょっと小粋な栞だった。
 その小娘はその栞をめざとく見つけ欲しいとねだった。
たしかまだ高校生になるかならないかの年齢だと思うが、生意気な口の利きようだった。
勿論、ヴィヨンの誰であるかを知っているわけでもないだろが、雰囲気は察知していた。
そんな態度がなぜか小憎らしく思えて、そっけなく断った。
幾度もねだっていたが、そのうちあきらめてしまった。
そうなるとかわいそうにも思えたが、いまさらやるとも言えずそのことは立ち消えた。
 生意気さのあらわれようがぼくに似ているように思えて、ときに苦笑することもあった。
生半可な知識をひけらかすやつを見ると、いかにも馬鹿にしたように鼻で笑う。
Hさんのそんなところを見たとき、他人の見るぼくはこんなふうなんだろうなと思った。
 大学生、社会人の連中を相手に時事批評のようなことを話す。
いったん、相手の手のうちが貧しいことを知ると、徹底的にみくだしたような態度をとる。
反論を加えようにも、なかなかの論陣を張るので反対にやりこめられてしまう。
すごすごと引きさがる者を眼のすみにしながら、こちらを見てにやりとする。
どうです、へーんだ、といった勝ち誇った態度は生意気を通りこしてかわいくもあった。
 小柄ではあるが、長い黒髪、切れ長な涼しい眼をしていた。
頬はふっくらと少女の健康さをしめし、色白のうりざね顔である。
そんな外見だけで判断して、くみしやすいと話しかけてくる男連中は多かった。
中高生をこども扱いにして人生論などぶつのはいいのだが、反応がちがう。
近寄っていっては、こっぴどくやっつけられる羽目に陥るのだ。
 彼女自身は身長の低いのが唯一不満だが、まあしかたがないかといったふうだった。
そんなだからか、自分と同年齢の連中が頼りなく思えてしかたがない。
年上の連中のなかにも馬鹿さ加減が垣間見えて、どうにも不満である。
世のなか、どうしてこう馬鹿な奴、自信過剰な男、自立しない女ばかりなのだろう。
興味といえば、異性のこととファッションのことばかり、もしくは食べることでしかない。
まさに、生物としては王道を行っているわね、と変に感心するしかない。
それじゃあヒトとして生れてきた意味がないじゃないのよ、と舌打ちしたくなるようだ。

5184川の流れ

「ねえねえ、ムッシュは何かしたいことがないの。
したいことというのか、野望のようなものよね。男なんですもの、あるわよね」
そう言いながら、きょろきょろとまわりを見回していた。
「そうだなあ、別にないけどなあ。ぼくは野望をいだくほどには人間を信じていないからね」
 と答えると、急にこちらをみて眼を輝かせた。
「野望をいだくほど人間を信じていないって、どういうこと。面白そうね。
聞かせてほしいなあ、ムッシュの屁理屈。えへっ」
「屁理屈といわれて話す馬鹿もないけど、まあいいか」
 と言うと、やっと少女らしくにっこり笑ってこちらに向きなおった。
「これから話すのはね、ぼくの人生観なんやで。そう思って聞いとかなあかんで。
つまり、ぼくの願望とか希望とか期待とかもろもろが練りこめられているということやな。
つまらんかったら、聞き流していたらいいわ。ぼくにもどう話が展開するかわからんから」
「ふーん、そういうものなのかな。でも、いいですよ。
わかってますって、おとなしく聞きますから、早く話して」
「よしよし、そういうふうに素直にしてればいいんや。
そうしてりゃあ、結構かわいい娘やのになあ。
ひねくれた物言いばかりして、困った娘や」
「わたしのことは、いいの。それより話を早くはじめて」
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遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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