ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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早春紀行(四十四)アンビバレント
 ヒトはなにかに向かって生きているのだろうか。そうは思えないのだ。
人生にはなにか生物としての目的があるのだろうか。
なければ、いけないことなのだろうか。
もし、目的のない人生だと仮定すれば、どう生きていけばいいのだろうか。
ただ生きる。こころの命ずるままに生きる。日々を最善に過ごす。
 それができないような方向にヒトは脳を進化させたようにも思えてくる。
考えるということは、最後には自己言及に至る。
ぼくはなんのために生れてきたのだろうか。
ぼくとは、いったいなんだろうか。
ぼくの意味、意義、はどこかにあるのだろうか。
自分が自分のことを考える。これはどういうことなのだろうか。
考える自分をまた自分が考える。どこまでいっても、入子構造のようだ。
ヒトは悩める動物になった。

4236海岸の石

「そんなふうに考えていると、なにも確たるものがないように思えてくるんだ。
自分がなにものなのか、そんなこともわからないのに野望もないもんだ。
なんて考えたりして、おまけに野望というような欲望が希薄なのかな、ともね。
だけどヒトは恋をするから、また事態は複雑で混沌としているよな」
「へーえムッシュ、恋する青年になっているんだ。
でも哲学青年なんて、きっともてないですよ。いまどきの時代にはね」
「ぼくはけっして哲学青年じゃないぞ。
さっきもいったように、人は誰でも哲学者なんだ。
哲学を否定する、哲学を放棄する、哲学を嫌悪する哲学者、であってもね」
「でも、現実には恋しているんでしょ。
色にでにけり我が恋は、みたいな顔してますよ。
だから話す内容はシニカルでも、表情は嬉しそうでにやけてます」
「小説なんかで、アンビバレントな感情に引き裂かれるという状景がでてくるけど、
まさしくその事態が、いまのぼくのこの身の上に起こっているのかな。
でも逆に、またとても不安でもあるんだな。
彼女の存在自体がぼくの世界から消えてなくなったらどうしよう、なんて」
「そのときは、またちがう相手を見つければいいじゃないですか。
この世のなかには、男と女しかいないんですから。
もっともそのなかには、赤ん坊や老人も含まれているんですけどね。
でももしかしたら、もっと素晴らしい恋が案外近くにあるのかも知れませんよ」
「メーテルリンクの青い鳥かい。お話のように、そううまくはいかないよ。
そんなことをいってるようじゃ、君は実際にまだ恋をしたことがないね」
「ほっといてくださいよ、わたしのことは。
それよりムッシュ、言葉が変ですよ。関西弁、忘れているんじゃないですか」
「ほんまや、どないしたんやろ。ちょっと、別世界に行ってたみたいやな。
しかしながら、なんですなあ。
人生ちゅうのは、ほんまに不思議なもんやな」
「そんなふうにごまかそうとしても駄目ですよ。
さっきの話の調子と全然感じが違うんだから、変なムッシュ」
「そう不審がることはないんだよ。世のなかは、不可思議に満ちているからなあ」
「最後はそればっかりじゃないですか」
「そうかな、まあええやないか」
「しょうがない人ですねえ、ほんとに。
じゃあ、今回限定ということで許してあげるわ」

 ちっとも為にならない話ながら、話をしているとこころが落ち着いてくる。
なにかを見極めるための議論でもなく、なにかを伝えるための会話でもない。
ただ音韻の響きに心地よさを感じるような、そんな話をしていたかった。
 とめどのない会話を続けながら、ぼくは彼女のことを考えていたろうか。
Hさんは若いというよりは幼さの残る表情ながら、ぐんぐんと話してくれた。
年齢に似あわないその落ち着いた声音は、ぼくに安心感を与えてくれた。
なにを話そうとも理解、許容、そして見通しているように思えてくる瞬間がある。
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遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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