ムッシュの読書紀行
人生は旅のようだと言いますが、旅が人生かも知れません。 ぼくは活字中毒気味でもあり、旅はまだまだ続くでしょう。
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早春紀行(四十五)四十五億年の時空間
「ぼくはなあ、他人にお説教じみた話をされるのが大嫌いなんや。
そやのに、自分が説教じみた話をしていたりすることがあるんやな。
それも話してる途中で気がついて、ものすごい嫌悪感を味わうことが多々あるんや。
これってどういうことなんかなあ、なんて考えてしまうんや」
「会話って、ときに相手とじゃなくて自分との対話をしているようなことがないですか。
自分の声なんだけど、自分じゃないような気がするときってなかったですか。
話す自分と、聞く自分がいて、いつか相手のことも忘れて、自分ふたりになっている。
自分ふたりだから話が早くって、どんどんと対話が進む、そんな経験ないですか。
わたしはそういうことって、わりとあるんですよ。
自分だけかなといままで思ってたけど、ムッシュの話を聞いてて、
そういうことじゃないのかなって、ふと思ったんですけど」
「なるほど、自分で自分に説教たれてるわけか。
おまけに、自分で自分に説教たれながら、反論のチャンスもうかがってるわけやな。
この馬鹿野郎なんて突っこみいれながら、ひたすら説教をするぼくってなんだろうな」
「それって、生真面目の裏返しかもしれないですよね。
ねじれた心情というのかな。きっとそう、だってDNAは螺旋状なんですもの。
すこし褒めすぎたきらいがなきにしもあらず、ですけど」
「ほんとうはな、真鍋島にきてそんなことを忘れて自然を感じていたかったんや。
でも、なかなかそうはいかへんのやな。
自然というても、ヒトも自然のうちやないか、と思うてな。
そやから、そんなことではなく人との対話に活路を求めようかな、と方向転換や。
いろんな人の話を聞くこともおなじことなんやな。いろんな声が聞えてくる。
そう思うと、おもしろいように話しかけられたりして、つぎつぎと知りあいができる。
お年寄りから、Hさんのような若い人や、こどもにいたるまでやな。
人の思いっておなじことのようやな、と同時にまったくちがった方向をむいていたり。
でもそれがすべてふくめて、なんというのかな、世のなかつまり世界なんやと思う」
「そうかもしれないですね。わたしももっと謙虚にならないといけないですね」
「それに他人って自分を映す鏡なんやなあとつくづく思うた。
ぼくが嫌な奴やなあと思うと、相手も嫌な顔してるようにみえてくるし。
素直な気持でちかづいていくと、どうしたんですかと優しく接してくれる。
気持ちが知らず知らずに表情にでてるんやな。
また、ヒトってそれがなんかしらん直観的にわかるようなんや。
それに犬なんかでも、犬好きな人と嫌いな人を嗅ぎわけるようなことがあるやろ。
そんな簡単なことがようわからんようになってた、ということや。
というても、いつしか忘れてたりするんやろな。
『人間は忘れる動物である』と誰かがいうてなかったかな、たしか」
「人を好きになれない人が自分だけは好かれたい、は変ですよね。
人を好きになる、っか…。
考えこむようなことじゃないんだけど、むずかしいですね」
「『ほんとうに人を好きになると、ああ生きてるんだという実感がわくんだ。
そうしたら、なんでもやれる、どんなことでも乗り越えられるという気になるんだ。
そんな気持が自然と満ちてきて、まわりの人たちにも優しく接していたりする。
昨日まではあんなに悩みがいっぱいあったのにって、嘘みたいなんだ。
こんなことでくよくよしていたのか、なんてまるで別人になったみたい』
というようなことを聞くんやけど、はたたして自分はどうなのかな、とは思うな」
「またあ、他人が言ったようなことにして、ほんとうは自分のことなんでしょ」
 どうしてこう先読みができるのだろう。
「そういうことはなきにしもあらず、とも言えないこともないかな。
なんて言うたら、訳わからんようになるな。
さっき言うた人を映す鏡の話やけど、世のなか歪んだ鏡も多いから難儀やな。
ぼくの鏡も微妙に歪んでいるのかな、なんて自信がなくなってくるんや」
「そんなことはないですよ。
どちらかというと、ムッシュの鏡は曇っているのと違いますか。
はっはっは、おかしい。怒っちゃ嫌ですよお。気楽にいきましょうよ」
「しょうがない奴やなあ。しかし、案外いい線をついてるかもしれん…」

F0036佐柳島

 気がついたときには、ぼくたちは海原に漕ぎだしてしまっていたのだ。
水棲生物なるぼくたちではあるが、泳ぐ本能を備えてはいなかった。
ゆれる小舟の縁につかまって、どこまでも続く青い海を眺めながら溜め息をついた。
帰ることなど考えもしなかったが、なにかしら不安が胸をしめつける。
頭上高くを舞う海鳥たちを、憧れと羨望に燃えたつ瞳で見あげていた。
 はるかなる空をおおいつくす黒雲は、きっと風と雨をもたらすのだろう。
風に乗ってくる予兆が、さわさわと小声でぼくたちに話しかけてくる。
 スコールがぼくたちの上からどうと降り注いできた。
一瞬で、一面を暗がりが覆う。横殴りの風が、高頬をうった。
それもつかのまに通りすぎて、また暖かな陽がさしてくる。
明と暗、希望と絶望、いくども繰りかえしながらぼくたちは進む。
海面をわたる風紋が南へとはしっていく。
減衰することはない単振動だ。
 水平線のかなたにときおり閃く光がある。
四十五億年の時空をくぐりぬけてきた光子なのだろうか。
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遠くに眺めるのも好きです。
楽園なんてないんですけどね。

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